古志金沢ズーム句会(2020年11月15日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
大空に裸の赤や冬の薔薇 稲垣雄二
人思ふは月さへ淋し桃青忌 松川まさみ
冬の月触るれば指の切れるかな 趙栄順
大いなる白山といふ紅葉かな 山本桃潤
ひだる神こよひは熊を月の友 篠原隆子
垂れこめる雲のこゑなり大白鳥 松川まさみ
白菊に大輪といふ孤独あり 稲垣雄二
きらきらとま白な詩よ霜柱 山本桃潤
【入選】
口重く炭うつくしくつぎしよな 篠原隆子
蝶ひとつ迷い込みたり落葉かな 玉置陽子
朝な夕な箒の音に紅葉散る 花井淳
初冬の午前六時の言葉たち 山本桃潤
御軸に治部煮供ふる梅室忌 酒井きよみ
あやとりの舟から星へ夕焼雲 中野徹
冴ゆる夜の母へ歌はん子守唄 玉置陽子
木枯の彷徨うてゐる茶杓かな 玉置陽子
秋晴や重たき魚籠をしたたらす 安藤久美
枯草が終の栖かいぼむしり 佐々木まき
万物は仏を宿すおでんかな 土谷眞理子
仙人掌の肉ふくふくと冬に入る 玉置陽子
埋火や炎えて無となるものぞよき 長谷川櫂
冷まじき鎖登ればとんび岩 梅田恵美子
帰り花三千世界のはるかより 泉早苗
余生にも華やぎの刻冬紅葉 氷室茉胡
風にのるこゑ突き刺さる冬初め 宮田勝
まろび来る木の実のごとき子どもかな 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】
七五三大きな帯の歩くかな 近藤沙羅
雪吊の縄目華やか加賀の空 佐々木まき
冴ゆる夜や母に歌はん子守唄 玉置陽子
法要の終れば句会梅室忌 酒井きよみ
秋晴や重たき魚籠をしたたらす 安藤久美
水刃物日に日に厨冷やかに 趙栄順
ひだる神こよひは熊を月の友 篠原隆子
浮寝鳥つぎつぎ目覚めゆく朝 近藤沙羅
左右から風邪の子のぞく絵本かな 齋藤嘉子
よろこびの一日もありぬ古暦 安藤久美
揺るるほど甘くなるとや吊し柿 清水薫
帰り花三千世界はるかより 泉早苗
きらきらとま白な詩よ霜柱 山本桃潤
はなやかな傘ゆくや梅室忌 酒井きよみ
【入選】
はつ冬やまだ緑なるばった跳ぶ 近藤沙羅
一本のましろき冬木胸中に 高橋慧
坊守の箒で拾ふ銀杏の実 清水薫
裸木や白山からの青き空 花井淳
毛筆の句ペン書きの詩襖かな 宮田勝
初冬や午前六時の言葉たち 山本桃潤
御軸に治部煮供ふる梅室忌 酒井きよみ
千振の花のしじまや医王山 梅田恵美子
あやとりは舟から星へ夕焼雲 中野徹
冬菊や宙を飛び交ふニュートリノ 花井淳
こも掛けの藁に秋日の柔らかし 中野徹
児が蹴ればママもじいじも落葉道 氷室茉胡
木枯の彷徨うてゐる茶杓かな 玉置陽子
耳当てて木の命聴け今朝の冬 稲垣雄二
天地を余すことなく芋茎干す 齋藤嘉子
友禅のやはらかさうなマスクして 花井淳
冬の月触るれば指の切れさうな 趙栄順
胡麻がらで囲つてありし冬の菊 近藤沙羅
冷まじや音たてて孫乳を吸ふ 稲垣雄二
北国や蟹茹であがる初しぐれ 鬼川こまち
白山にふれんばかりや星流る 泉早苗
初時雨かくして夢に逢へるとは 篠原隆子
斑点のそれが目らしき菜虫かな 齋藤嘉子
手折りたるぽんぽん菊の軽さかな 中野徹
まろび来る木の実のごとき子どもかな 趙栄順
若かりし頃もあつたよ大根干す 土谷眞理子
第二句座
席題 「鴨」、「凍蝶」
・鬼川こまち選
【特選】
晩鐘はさざなみとなる鴨の水 安藤久美
凍蝶を見つけて嬉し光かな 高橋慧
小流れに鴨来て会話増えにけり 密田妖子
空中庭園死に場所と決め凍し蝶 中野徹
冬の蝶冬の光に後れつつ 安藤久美
凍蝶や野末の灯瞬けり 玉置陽子
凍蝶の聞いてゐるらし日矢の音 松川まさみ
【入選】
楽しげに鴨のゆきかふ濠の中 近藤沙羅
渡月橋浮き寝の鴨も川の音 山本桃潤
鴨鍋の葱のみどりも忘るまじ 長谷川櫂
凍蝶や草のちらばる水の上 宮田勝
鴨来る千里の果の犀川に 清水薫
触るることゆるさぬ冬の蝶なりし 安藤久美
鴨獲りの網は三角夕なづむ 花井淳
鴨鍋や主が打ちし鴨入れて 梅田恵美子
鴨の陣ぶつかり合はぬ不思議かな 氷室茉胡
蝶凍てて透きとほりたり蝶の魂 梅田恵美子
・長谷川櫂選
【特選】
鴨治部や湯気のなかにぞ加賀の冬 鬼川こまち
見つけて嬉し凍蝶の光かな 高橋慧
冬蝶の氷の羽根のきらきらと 稲垣雄二
存分にこの世舞ひしか冬の蝶 松川まさみ
凍蝶に風のやさしき日なりけり 佐々木まき
触るることゆるさぬ冬の蝶なりき 安藤久美
鴨鍋や主が撃ちし鴨入れて 梅田恵美子
一陣の鴨くつろぐや大堰川 佐々木まき
凍蝶にそつとさはってみたきかな 近藤沙羅
【入選】
楽しげに鴨のゆきかふ濠の中 近藤沙羅
凍蝶は哀しからずや美しき 高橋慧
冬の蝶冬の光に後れつつ 安藤久美
凍蝶や草のちらばる水の上 宮田勝
鴨来る千里の果の犀川に 清水薫
地に伏して凍蝶じっとしてをりぬ 近藤沙羅
鴨獲りの網は三角夕なづむ 花井淳
鴨来る空もやがては鉛色 中野徹
投げ網や息をひそめて鴨を待つ 清水薫
凍蝶に経蔵開く日和かな 花井淳