古志仙台ズーム句会(2020年10月25日)
・第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
猪撃たれ泪目のまま吊られをり 上 俊一
落ち鮎の鋭き眼ひるみけり 石原夏生
石の間身を細うして鮭抜けぬ 宮本みさ子
その山のどことは云はず茸籠 石川桃瑪
ましら酒一夜限りと酔うてみる 佐伯律子
【入選】
男の手もみぢ一枝を山苞に 佐藤和子
昭和史の枷まだ解けず衣被 鈴木伊豆山
塔婆立つうしろ被曝の芒原 宮本みさ子
招待状来ない今年の運動会 那珂侑子
紅葉見やあの世に続く道ならむ 佐伯律子
秋潮や開けてはならぬ玉手箱 武藤主明
行く秋の波郷の声や深大寺 那珂侑子
自転車のスポーク冷えて秋日和 服部尚子
手づかみで食はねば秋の鮎ならず 石原夏生
のけぞりぬはらこ掻くとき鮭の母 宮本みさ子
長谷川櫂選
【特選】
一人づつ子の顔浮かぶ衣被 辻奈央子
秋の蚊にのぞきこまれし心かな 辻奈央子
龍太百歳山々の柿奉れ 長谷川冬虹
読まぬ本捨ててすつきり一遍忌 石原夏生
秋晴や戦車のごとくコンバイン 武藤主明
【入選】
塔婆立つうしろ被曝の芒原 宮本みさ子
紅葉山ゴンドラ揺れてすれ違ふ 武藤主明
草の実を払ふ肩胸肘背中 伊藤 寛
遠く住む息子元気か新酒酌む 那珂侑子
狼の護符貼る土蔵夜長かな 服部尚子
落ち鮎の鋭き眼ひるみけり 石原夏生
芋煮るや再現できぬ母の味 森 凛柚
山に向くベンチに一人秋澄めり 及川由美子
遠吠えもひと工夫せよ犬の秋 青沼尾燈子
その山のどことは云はず茸籠 石川桃瑪
散り果てて骨太々と大銀杏 上 俊一
手づかみで食はねば秋の鮎ならず 石原夏生
嶽々の眠らんとして聳へ立つ 青沼尾燈子
度し難き人の心やいわし雲 川辺酸模
のけぞりぬはらこ掻くとき鮭の母 宮本みさ子
マスクして余計なことを言はざりき 森 凛柚
口閉づることも忘れて月見かな 辻奈央子
山粧ふひと夜で変はる山の彩 阿部けいこ
秋暑し二進も三進も汚染水 武藤主明
・第二句座(席題=茸、熊、霜)
長谷川冬虹選
【特選】
顔中に草の実つけて熊走る 伊藤 寛
あの時の父に逢はんと茸山 武藤主明
二月堂三月堂へ霜の道 長谷川櫂
祖母つひに茸のしろを明かさずに 上 俊一
毒きのこ身ぬちに一つ許しをり 石川桃瑪
【入選】
山の柿たらふく喰らへ熊の子よ 上 俊一
松茸の被曝も告げて回覧板 宮本みさ子
椎茸やふてぶてしくも育ちたる 青沼尾燈子
七曲り抜けて行きしや茸山 佐伯律子
舞茸や花のやうなる一抱へ 長谷川櫂
子ウサギの道の標や月夜茸 川辺酸模
われひとり霜降る夜の無人駅 佐藤和子
またぎ等の眼差し親し熊の山 及川由美子
長谷川櫂選
【特選】
一つの死しづかに囲む熊の猟 石川桃瑪
頂いてその名も知らぬ茸かな 石原夏生
子ウサギの道の標や月夜茸 川辺酸模
祖母つひに茸のしろを明かさずに 上 俊一
母熊の太く鋭き爪光る 長谷川冬虹
【入選】
月光を浴びて羆は眠りをり 辻奈央子
月山をひとり抜けくる熊の鈴 宮本みさ子
松茸の被曝を告げて回覧板 宮本みさ子
毒茸抜かずに二日眺めたり 那珂侑子
除染袋粗塩のごと霜を置く 甲田雅子
熊騒動犬の散歩も儘ならず 阿部けいこ
顔中に草の実つけて熊走る 伊藤 寛
産直の茸盛られて香放つ 阿部けいこ
初霜や一番乗りのごみ置き場 石原夏生
猿らの寝息聞こえる霜夜かな 川辺酸模
おほかたは毒ある大き茸かな 及川由美子
舞茸の今年も届く少しかな 阿部けいこ
山刀伐の翁の道や霜柱 長谷川冬虹
毒きのこ身ぬちに一つ許しをり 石川桃瑪
狭庭にも一本立つや毒キノコ 那珂侑子