古志金沢ズーム句会(2020年10月17日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
永遠にポケットから出る木の実かな 中野徹
犀川を流れ流れてゆく秋ぞ 趙栄順
乾鮭やふるさとの風やがて雪 齋藤嘉子
風神のけさの一吹き富士に雪 長谷川櫂
露の世の露を抄ひし茶杓かな 松川まさみ
秋さびし白雲小さくちぎれ飛ぶ 近藤沙羅
ゐまちつき浅酌両吟ゆめみたる 泉早苗
白山の風吹き入れよ松手入 篠原隆子
大空の腹も鳴らさん秋刀魚焼く 稲垣雄二
落ちてゆく眠りの中に鉦叩 酒井きよみ
無花果の熟れてマチスの女かな 玉置陽子
瞑想の四角をあふれ水澄めり 篠原隆子
一斉にこぶし挙げたる石蕗の陣 密田妖子
【入選】
白山はあの雲のなか秋あざみ 梅田恵美子
若狭井の奈良へ澄みゆく秋の水 宮田勝
生くるには身軽が宜し捨案山子 土谷眞理子
虫めずる姫となるらん花野径 泉早苗
夕顔の畑や羅漢のおはすかに 齋藤嘉子
破れ障子ふえゆく空き家秋日燦 密田妖子
水の秋小瓶に詰めて水飴に 稲垣雄二
四角の窓四角に映し月今宵 高橋慧
白山の初冠雪や金木犀 宮田勝
梨売りのひとつ加へて包みをり 清水薫
軽き世に加賀丸芋のねばりかな 篠原隆子
鰯雲くづれて空のゆるびけり 梅田恵美子
白山の秋を干したり稲架襖 長谷川櫂
菩提寺の坊守包めよ月あかり 中野徹
紫に水は澄みけり金時草 齋藤嘉子
真緑のかぼすをぎゆつと秋搾る 山本桃潤
大津絵の鬼かたはらに鴨の鍋 泉早苗
ささささと風にかぜ乗る竹の春 宮田勝
台風や海の底をもくつがへし 齋藤嘉子
居籠りにあらず栗の実剥いてをり 佐々木まき
骨となる果は同じや秋刀魚焼く 土谷眞理子
しらやまへ参道長し橡の餅 花井淳
陽は燦々石蕗に化けたる黄蝶かな 密田妖子
白鳥来る瓢湖の空をほしいまま 高橋慧
鉦叩闇の深さを計るかに 佐々木まき
こだまして犀川の月流れけり 玉置陽子
白山のまどろむ頃か山眠る 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】
白山はあの雲のなか秋あざみ 梅田恵美子
乾鮭やふるさとの風やがて雪 齋藤嘉子
縦横の雨おもしろや玩亭忌 玉置陽子
吾が心深く耕せ温め酒 土谷眞理子
干鯊の知る人ぞ知る出汁の味 酒井きよみ
白山の参道長し橡の餅 花井淳
無花果の熟れてマチスの女かな 玉置陽子
【入選】
杖の音名残が原の花野行く 梅田恵美子
犀川を流れ流れてゆく秋ぞ 趙栄順
虫めずる姫となりたし花野径 泉早苗
稲架一竿明恵上人生誕地 玉置陽子
疫の世へ小鳥が咥へきたる枝 篠原隆子
大空も腹を鳴らさん秋刀魚焼く 稲垣雄二
大津絵の鬼かたはらに鴨の鍋 泉早苗
白山もまどろむ頃か山眠る 趙栄順
瞑想の四角をあふれ水澄めり 篠原隆子
古墳より顔出してゐる野菊かな 近藤沙羅
第二句座(席題=秋の草、梅室忌)
*梅室忌は旧暦嘉永5年10月1日、新暦1852年11月12日。
・鬼川こまち選
【特選】
俳諧の刀研ぐべし梅室忌 長谷川櫂
結びゆくものみな透けて秋の草 玉置陽子
東京をぐるりと囲む秋の草 稲垣雄二
白山の初雪のころ梅室忌 長谷川櫂
もてなしの柚味噌練らん梅室忌 酒井きよみ
あかあかと刻まれし句碑梅室忌 花井淳
【入選】
犀川に鮭のぼるころ梅室忌 泉早苗
梅室忌発句は己が道標 山本桃潤
ざざぶりの過ぎたる日ざし秋の草 松川まさみ
朝市に秋の七草ひとならべ 佐々木まき
梅室忌てんこう碑へも柿一つ 泉早苗
捨てきれぬ詩の一行や秋の草 中野徹
オフィ-リア千草を胸に冠に 齋藤嘉子
人知れず生きて飄々梅室忌 山本桃潤
陶狸の親子寄り添ひ秋の草 氷室茉胡
紅葉してわれに千草の小径あり 篠原隆子
南朝の武士はみな千草かな 篠原隆子
群がりていよいよさみし秋の草 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】
犀川に鮭のぼるころ梅室忌 泉早苗
梅室忌展宏碑へも柿一つ 泉早苗
卯辰山落葉かぐはし梅室忌 梅田恵美子
障子張る梅室忌には日のあれど 酒井きよみ
秋草のおもひおもひを時雨籠 安藤久美
紅葉してわれに千草の小径あり 篠原隆子
南朝の武士はみな千草かな 篠原隆子
もてなしの柚味噌練らん梅室忌 酒井きよみ
手炙に火の入れてある梅室忌 酒井きよみ
【入選】
加賀の空澄み渡るころ梅室忌 趙栄順
阿蘇は今千草に牛の遊ぶころ 齋藤嘉子
梅室忌昔をいまに鐘楼門 鬼川こまち
京の人迎へて修す梅室忌 花井淳
秋草の中に小さき道標 玉置陽子
干柿の甘さ増すころ梅室忌 佐々木まき
繕はぬこころで座る梅室忌 松川まさみ
額に手をやるこの頃や梅室忌 宮田勝
女紋ゆづりて軽し秋の草 安藤久美
群がりていよいよさみし秋の草 趙栄順
雨の日の姿寂しき秋の草 中野徹