「軽井沢高原文庫通信」第101号(6月30日刊行)にエッセイ「軽井沢の桜」を書きました。
「軽井沢高原文庫」友の会の年会費は3000円、学生は1500円です。「通信」定価200円。
「軽井沢高原文庫通信」第101号(6月30日刊行)にエッセイ「軽井沢の桜」を書きました。
「軽井沢高原文庫」友の会の年会費は3000円、学生は1500円です。「通信」定価200円。
長谷川櫂をめぐる「ズームの集い 俳句の可能性」がこのサイトではじまります。テキストを読んできていただければ、古志会員以外の方も参加できます。参加無料。
第1回のテキストは「俳句」7月号掲載の長谷川櫂「白い山」50句です。感想、質問なんでもどうぞ。日時は7月15日(土)1時30分から3時まで。司会は古志同人の木下洋子さんです。随時開催の予定です。
参加申し込みは右サイドの「第1回「ズームの集い」申し込み」から。先着50名で締め切ります。
*感想、質問、お茶とお菓子(酒と肴?)などご用意ください。
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
青空へ橡の花鉾たちそろふ 長谷川櫂
人間をやめて涼しくゐたりけり 三玉一郎
父の日やその生い立ちは言はぬまま 臼杵政治
青空を一掬ひせし捕虫網 平尾 福
大切にされてさみしき金魚かな 三玉一郎
【入選】
赤ん坊の手足よろこぶ浮いて来い 佐藤和子
我が庭の覇権ねらふか大蚯蚓 石川桃瑪
取つて置きの父の日の酒江戸切子 佐藤和子
泡盛の甕に熟れゆく緑夜かな 川辺酸模
摘み来たる実の芬々と梅仕事 石川桃瑪
子の話尽きて閑かや夕端居 川辺酸模
梅雨の蝶翅をこれほど痛めゐて 宮本みさ子
あごひもをきりりと少女麦藁帽 上 俊一
ゐなければ涼しき父の言葉かな 三玉一郎
花掲げ泰山木は月の中 齋藤嘉子
・長谷川櫂選
【特選】
泰山木咲く花びらをきしませて 齋藤嘉子
飛天舞ふごとく花咲き泰山木 齋藤嘉子
天上は泰山木の花盛り 平尾 福
【入選】
老いらくの歌ごゑ軽ろし蟇 上村幸三
十薬や裏庭の母我を呼ぶ 及川由美子
赤ん坊の手足よろこぶ浮いて来い 佐藤和子
夏炉うれし霧流れ入る山の小屋 服部尚子
夏に入り森の香りの化粧水 甲田雅子
父の日や見へざる父に酒を注ぐ 上村幸三
指す駒の音の涼しや棋聖戦 武藤主明
降り立てば風の旅人サングラス 川辺酸模
摘み来たる実の芬々と梅仕事 石川桃瑪
花掲げ泰山木は月の中 齋藤嘉子
われ継ぎし父の瓢よ天の川 上村幸三
花茣蓙や按摩を待ちて母の座す 服部尚子
潮焼けの頬赤黒く麦藁帽 上 俊一
第二句座(席題:甘酒、蝦蛄、夏椿)
・長谷川冬虹選
【特選】
餓鬼のごと蝦蛄食ひ散らす旨さかな 川辺酸模
茹でながら商ふ小屋よ蝦蛄漁師 齋藤嘉子
甘酒や笑ひ上戸の妻であり 平尾 福
奉納句詠みて直会一夜酒 佐藤和子
【入選】
甘酒の旗ひるがへる六合目 及川由美子
剥きつ捨てつ蝦蛄の鎧をばりばりと 石川桃瑪
甘酒やまだ喉おくに残りをり 甲田雅子
沙羅咲かせ隣家の嫗達者なり 佐藤和子
小走りで駆け込む女夏椿 上 俊一
たつぷりの生姜をきかせ一夜酒 谷村和華子
尾の扇開きて蝦蛄の自己主張 石川桃瑪
蝦蛄食らひ無造作に口拭ひけり 上村幸三
・長谷川櫂選
【特選】
蝦蛄として生まれて人に食はれけり 平尾 福
蝦蛄食うてなまぐさき夜を雑居寝かな 齋藤嘉子
茹でながら商ふ小屋よ蝦蛄漁師 齋藤嘉子
母の棺出すに沙羅の花降らす 甲田雅子
咲くも白散るも真白し沙羅の花 甲田雅子
【入選】
甘酒の旗ひるがへる六合目 及川由美子
剥きつ捨てつ蝦蛄の鎧をばりばりと 石川桃瑪
餓鬼のごと蝦蛄食ひ散らす旨さかな 川辺酸模
甘酒や母はため息ふうとつき 臼杵政治
甘酒の缶の残りを子が覗く 宮本みさ子
奥の奥まで仄暗き甘酒屋 谷村和華子
父の日や蝦蛄の握りを締めとする 長谷川冬虹
たつぷりの生姜をきかせ一夜酒 谷村和華子
第一句座
・矢野京子選
【特選】
惜命の夏の真白きマスクかな 長谷川櫂
夕焼けの病室ナット・キング・コール 瑞木綾乃
父母の墓のほとりにゐて涼し 高橋真樹子
ひともとの竹でありしが竹婦人 菅谷和子
ガジュマルを灯す蛍よ沖縄忌 大場梅子
【入選】
故郷を思へばからす瓜の花 林弘美
誰よりも紫陽花が好きシーボルト 大平佳余子
人は皆愛されてをり燕の巣 駒木幹正
鳰どりや過ぐれば閉づる菱のみち 米山瑠衣
戦争が咽につかへし麦の飯 城山邦紀
鳥黐搗く兄が来てをる夢の中 ももたなおよ
消灯の窓辺あかるき水中花 菅谷和子
紫陽花の海となりたる鎌倉よ 神戸秀子
赤ん坊くるみしごとく袋掛 斉藤真知子
曾良いまも夏野をいそぐ笠一つ 長谷川櫂
雲の峰限りなく命限りあり 伊藤靖子
アルプスの大きな水を抱く代田 金田伸一
・長谷川櫂選
【特選】
鳰どりや過ぐれば閉づる菱のみち 米山瑠衣
戦争が咽につかへし麦の飯 城山邦紀
鳥黐搗く兄が来てをる夢の中 ももたなおよ
ひともとの竹でありしが竹婦人 菅谷和子
百歳の夢に螢のふぶきけり 石塚純子
よく見ればわれこそお岩立版古 大場梅子
父編みし籠にことしの蛍かな 矢田民也
【入選】
この辺りめだかをりしが梅雨出水 米山瑠衣
早起きの小鳥らの声夏の森 伊藤靖子
しづかなる水に眠りて未草 斉藤真知子
トラックの音や夜明けの花むくげ 夏井通江
紫陽花の海となりたる鎌倉よ 神戸秀子
黴といふミクロ世界の静寂かな 駒木幹正
八重山や杏子の詠みし白上布 大平佳余子
尺蠖を真似て廊下でストレッチ ももたなおよ
第二句座(席題:汗、竹婦人)
・矢野京子選
【特選】
海みえてたちまち汗のひく峠 神戸秀子
人間の細部省略竹婦人 長谷川櫂
汗かかぬ機械に汗し町工場 矢田民也
【入選】
未だ捨てられぬぼろぼろの竹婦人 斉藤真知子
読経してたうとき汗を流されし 菅谷和子
初めからくびれなかりし竹婦人 斉藤真知子
汗の香の君をやさしく抱きにけり 安藤文
子の汗はをとこの匂ひとなりにけり ストーン睦美
・長谷川櫂選
【特選】
共に見るいくたびの夢竹婦人 矢野京子
フィールドの華となりたる汗みづく 高橋真樹子
つつがなき齢重ねて竹婦人 矢野京子
初めからくびれなかりし竹婦人 斉藤真知子
竹夫人形見にもらつていいものか 岡村美沙子
【入選】
竹婦人今宵は風もかぐはしく 菅谷和子
編みたての青竹にほふ竹婦人 菅谷和子
鳩尾を流れて汗の行きどころ 原京子
去年より強き吾の身や汗つたふ 瑞木綾乃
幾夜経て抱籠肌になじみけん 大場梅子
けふの汗けふの給料風呂浴びる 安藤文
新しきよりは古きが竹婦人 矢田民也
わが嘆き聞いて幾年竹夫人 石塚純子
竹夫人座敷にひとつ放られて 夏井通江
第一句座(当季雑詠)
・鬼川こまち選
【特選】
生涯は涼しきマザーテレサかな 山本桃潤
新緑や百億人の野菜ジュース 川上あきこ
掠めゆく水の惑星つばくらめ 安藤久美
街道の悲喜もむかしや大夏野 酒井きよみ
一煎はいろなきほどの初摘み茶 泉早苗
ばら苑を残して詩人逝きにけり 清水薫
柿の花こぼしてゐるはさみしさか 安藤久美
田を植ゑて土佐一国のしづけさよ 橋詰育子
大夕焼明日あるごとく沈みゆく 趙栄順
麦秋の人隠すときそよぐかな 趙栄順
【入選】
汗ばみて森のにほひの駿馬かな 泉早苗
海はるか山またはるかサングラス 趙栄順
潮の香や火の香や鰹食ひにけり 趙栄順
月曜の若葉に押され一年生 川上あきこ
遠郭公母の生家の家仕舞ひ 酒井きよみ
麦熟るる燃へ出しさうな大地かな 藤倉桂
病む母もショートカットや更衣 藤倉桂
日傘とじ入る三和土の安らかさ 越智淳子
一つ年のびし思ひや新茶のむ 橋詰育子
この家の水にも慣れて金魚かな 飛岡光枝
新茶一煎美しき日なりけり 松川まさみ
夏めくや世界を憂ふ理髪店 田村史生
願掛けて投ぐかはらけや若葉光 田中紫春
土俵際せはしく掃くや五月場所 近藤沙羅
雪渓の帯細りゆく田植かな 酒井きよみ
五月闇軋む列島いかにせん 泉早苗
・長谷川櫂選
【特特選】
夏かがやく長き手足を洗ひけり 安藤久美
苗取の後ひろびろと朝の雲 越智淳子
新茶一煎美しき日なりけり 松川まさみ
【特選】
田を植ゑて土佐一国のしづけさよ 橋詰育子
青嵐蝶も吹かれてはるかまで 橋詰育子
潮の香や火の香や鰹食ひにけり 趙栄順
能登地震や岩に隠るる大鮑 花井淳
スコツチと氷が馴染む緑の夜 山本桃潤
【入選】
むれ咲いて絵にはあらねど杜若 橋詰育子
しぶき浴びざくざく包丁山の蕗 梅田恵美子
海はるか山またはるかサングラス 趙栄順
吊忍つりかへて夏来たりけり 橋詰育子
お茶うけはあをき蚕豆山の家 藤倉桂
一つ年のびし思ひや新茶のむ 橋詰育子
さつきまで人の声あり植田かな 稲垣雄二
この家の水にも慣れて金魚かな 飛岡光枝
花柚子やあたりまへの日々戻りくる 梅田恵美子
一煎はいろなきほどの初摘み茶 泉早苗
夏めくや世界を憂ふ理髪店 田村史生
虹立ちて誰かあらはれさうな朝 清水薫
何もなき夕餉に香る木の芽かな 安藤久美
蝶に聞く泰山木の花いづこ 間宮信子
ポン菓子のポンと轟く初夏の市 梅田恵美子
五月闇軋む列島いかにせん 泉早苗
牛車行く玉砂利の音御所涼し 氷室茉胡
尾をふりふり乳吸ふ仔山羊麦の秋 川上あきこ
ひそやかに若葉の木蔭蜂巣箱 梅田恵美子
一煎は写真の母へ新茶汲む 玉置陽子
第二句座(席題:雲の峰、栃の花)
・鬼川こまち選
【特選】
空突いて雨を呼ぶなり栃の花 松川まさみ
お遍路のまた一人来る雲の峰 橋詰育子
橡大樹大空に花かかげたり 酒井きよみ
托鉢僧の着物短き雲の峰 川上あきこ
連山にそだちはじめし雲の峰 橋詰育子
白山ときそふ嵩なり雲の峰 泉早苗
生まれきて初めの一歩雲の峰 趙栄順
雲の峰荒野となりし地球かな 梅田恵美子
【入選】
マスク外し巡る名刹雲の峰 氷室茉胡
樹齢問へば樹上の橡の花笑ふ 長谷川櫂
なべてをみな元気な句会橡の花 氷室茉胡
しんしんと山気満ちたり栃の花 玉置陽子
見上ぐるは白きシャンデリア栃の花 川上あきこ
雨含み艶やかなりし栃の花 近藤沙羅
白峰のやがて銘菓に橡の花 清水薫
峰雲が人を育てる甲斐の国 稲垣雄二
巫女のふる鈴にもに似たり橡の花 酒井きよみ
栃の花高きに雨後の日射しあり 安藤久美
峰雲や議論深まり得たる佳句 氷室茉胡
・長谷川櫂選
【特選】
しんしんと山気満ちたり栃の花 玉置陽子
恐ろしき飽食の日よ栃の花 山本桃潤
橡大樹大空に花かかげたり 酒井きよみ
一山を輝したり栃の花 趙栄順
栃の花高きに雨後の日射しあり 安藤久美
【入選】
今年また君待ちくるる橡の花 藤倉桂
白山の父のごとくや雲の峰 趙栄順
橡の花咲きゐる真下熊通る 酒井きよみ
なべてをみな元気な句会橡の花 氷室茉胡
パラソルの花の大輪雲の峰 玉置陽子
遠泳の沖に沖あり雲の峰 山本桃潤
「きごさい+」でお話しいただいた安成哲三先生の新著『モンスーンの世界 日本、アジア、地球の風土の未来可能性』(中公新書)が出版されました。俳句が育まれた東アジアの季節風についての一冊です。葛西美津子さんの一句が紹介されています。
等圧線崩れ崩れて春そこに 美津子
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
ねむさうに芍薬ゆるる真昼かな 川辺酸模
愚かなる地球を笑ひ金魚玉 辻奈央子
わたしにはなれない私更衣 三玉一郎
鉄塔の大きく跨ぐ麦の畑 佐伯律子
【入選】
帰任など忘れてしまふ青葉風 川村杳平
太陽も飲み込んでゐる蜘蛛の網 辻奈央子
下の田のぼそぼそといふ水喧嘩 佐伯律子
根性が曲がつてゐたる植田かな 三玉一郎
鯉幟ふいに命を吹きこまれ 上 俊一
花海芋ノースリーブがよく似合ふ 平尾 福
・長谷川櫂選
【特選】
母あらず母の日傘の日の匂ひ 上村幸三
花よりも草のきれいな五月かな 三玉一郎
夏の蝶松島すべて遊び場に 宮本みさ子
衣紋掛母もうをらぬ母の日よ 長谷川冬虹
戦争に正義語るなこどもの日 川辺酸模
【入選】
わたしにはなれない私更衣 三玉一郎
母といふ背なの遥かよ夏衣 上村幸三
しばらくは現忘れて草むしる 川辺酸模
これからは遺影に語る母の日よ 長谷川冬虹
思ひ出す母の諭しや柏餅 甲田雅子
生きがたきこの世の岸に草むしる 川辺酸模
かしは餅蒸したての熱葉つぱまで 宮本みさ子
新緑や行きも帰りも越す峠 武藤主明
花海芋ノースリーブがよく似合ふ 平尾 福
滝ごりや大日如来おはす山 服部尚子
上棟の木組みの映る代田かな 宮本みさ子
母の日や一炷に母のこゑ聴かな 上村幸三
蓬摘む餅にするには足らねども 及川由美子
蜥蜴去り街は再び乾き出す 平尾 福
母の日よ孫を抱きて母憶ふ 谷村和華子
幾箱も母のマスクや母の日よ 長谷川冬虹
糠雨の粒々まとひ女郎蜘蛛 上 俊一
第二句座(席題:杉落葉、夏場所、松蝉)
・長谷川冬虹選
【特選】
松蟬や外国船の遭難碑 上 俊一
大関の洒落た浴衣や夏相撲 平尾 福
五月場所両国界隈カフェ巡り 谷村和華子
夏場所や装束真白立行司 上村幸三
松蟬や寂しき家をはやしけり 辻奈央子
【入選】
呼び出しの声晴れやかに五月場所 那珂侑子
松蝉や湯本の駅の端の椅子 川村杳平
夏場所や鬢付け油の匂ふ駅 阿部けいこ
松蝉や峠を越へて妻籠宿 甲田雅子
松蟬や見合ひの席に加はりて 辻奈央子
杉落葉百年屋敷守りをり 谷村和華子
勝ち越しの郷土力士や五月場所 阿部けいこ
・長谷川櫂
【特選】
伊之助の装束軽し五月場所 上 俊一
大関の洒落た浴衣や夏相撲 平尾 福
夏場所や装束真白立行司 上村幸三
おづおづと鳴き始めたる松の蝉 平尾 福
松蟬や寂しき家をはやしけり 辻奈央子
【入選】
松蝉や東海道を歩く会 那珂侑子
松蟬や一茶の土蔵ここにあり 三玉一郎
松蟬や風ただならぬ日和山 上 俊一
夏場所や郷土力士の揃踏み 武藤主明
松蟬や外国船の遭難碑 上 俊一
夏場所や大川渡る触れ太鼓 川辺酸模
夏場所や地下鉄駅に力士達 長谷川冬虹
大盛りのざるを平らげ夏場所へ 平尾 福
天狗堂すねまで埋まる杉落葉 服部尚子
第一句座
・矢野京子選
【特選】
春の日やとろりと李朝白磁壺 長谷川櫂
ラ・フランス花咲く道を天上へ 菅谷和子
翔平の兜かがやく端午かな 神戸秀子
ふくふくと大地を肥やし大蚯蚓 ももたなおよ
君のゐぬ二度目の夏のめぐりくる 斉藤真知子
【入選】
初節句武者人形より男前 ストーン睦美
桶の音高く銭湯夏に入る 石塚純子
母の骨蝶の軽さや拾ひけり 夏井通江
一句生る若葉萌ゆるがごとくかな 安藤文
草笛をさびしき唇のおぼえゐし 矢田民也
あめんぼや時には水を踏みはづし 斉藤真知子
寿命とふことばやさしや遠郭公 石塚純子
もういらぬ母の日ギフトの冊子来る 夏井通江
母の家の電球換えし黄金週間 ストーン睦美
ひるがへり犬吠えかかる鯉幟 長谷川櫂
青嵐わが身中を吹きわたれ 斉藤真知子
斑の入りてバナナ旨しよ人もまた 神戸秀子
・長谷川櫂選
【特選】
明智越水尾は柚子の花盛り 菅谷和子
掃き寄せて春のこぼせしものばかり 矢野京子
さつと浴び夫若返る菖蒲風呂 菅谷和子
もういらぬ母の日ギフトの冊子来る 夏井通江
柚子の花ともに遊びし昼の風呂 菅谷和子
ベランダの小さき空にも鯉幟 ストーン睦美
すみれ忌やはや一年のたちにけり 上松美智子
ふくふくと大地を肥やし大蚯蚓 ももたなおよ
君のゐぬ二度目の夏のめぐりくる 斉藤真知子
【入選】
初節句武者人形より男前 ストーン睦美
桶の音高く銭湯夏に入る 石塚純子
梅の尻まこと清しき緑かな 駒木幹正
ラ・フランス花咲く道を天上へ 菅谷和子
母の骨蝶の軽さや拾ひけり 夏井通江
嫗とて軽く三杯筍飯 石塚純子
瀧の中ひらりとくぐる岩燕 大場梅子
戦ひのなき国なれば茶摘唄 ストーン睦美
まきさんを偲ぶ莟やラ・フランス 菅谷和子
草笛をさびしき唇のおぼえゐし 矢田民也
どんたくの七福神は馬に乗り 矢田民也
あめんぼや時には水を踏みはづし 斉藤真知子
柏葉の古葉も若葉も柏餅 大平佳余子
ふるさとの笹の葉ほどき粽食ぶ 城山邦紀
いぢめつ子よき爺となり柏餅 大場梅子
オフィスビル灯の深夜まで五月二日 原京子
亜紀さんの忌日となりぬ子供の日 上松美智子
柏餅 粽 鮎菓子 腹八分 上松美智子
十三回忌母の梅酒の封切らん 神戸秀子
しづかなる二人の暮し豆御飯 斉藤真知子
余花追ふてここは信玄棒の道 石塚純子
故郷の春の山河になりし母 夏井通江
コロナ明け目にいつぱいの若葉かな 安藤文
野天の湯遅れて来たる春の月 駒木幹正
幇間に女弟子あり傘雨の忌 大場梅子
斑の入りてバナナ旨しよ人もまた 神戸秀子
第二句座(席題:五月闇、憲法記念日)
・矢野京子選
【特選】
ずたずたとなるも憲法記念の日 長谷川櫂
おうおうと謡ひ合はすや五月闇 長谷川櫂
五月闇青葉の息のきこえくる 夏井通江
【入選】
五月闇心の中といふ場所も 高橋真樹子
五月三日我憲法に育てらる 石塚純子
五月闇破つて道を拓くなり 大場梅子
白き花のみ浮かぶ庭五月闇 ストーン睦美
変わらぬことも勇気いること憲法記念日 ストーン睦美
・長谷川櫂選
【特選】
五月闇大滝山をとどろかす 夏井通江
ぼんやりと生きて憲法記念日よ 林弘美
またたくま母を送りし五月闇 上松美智子
【入選】
また雨と思ひて眠る五月闇 矢田民也
佇めば我も森の木五月闇 米山瑠衣
五月闇吸物椀に閉ぢこめん 矢野京子
白き花のみ浮かぶ庭五月闇 ストーン睦美
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
楸邨の欅の道を入学す 宮本みさ子
どの人も笑顔大きや五月来る 谷村和華子
花やはらか棘やはらかや山椒摘む 長谷川櫂
をのこならつけたき名あり柏餅 及川由美子
【入選】
人間も虫を食らうか守宮笑ふ 平尾 福
太陽を驚かしたる黄砂あり 平尾 福
若鮎や堰の魚道を一つ跳び 石川桃瑪
あんなにも待ち侘びた春だつたのに 三玉一郎
葉桜を待ちわびてゐた毛虫たち 平尾 福
はやすでに親の貫禄孕猫 川辺酸模
芍薬のしづかにゆれて客迎ふ 那珂侑子
炊き込んで故郷の緑五加飯 長谷川櫂
大皿の烏賊透きとほる薄暑かな 川辺酸模
ひとひらも残さじと散る桜かな 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】
楸邨の欅の道を入学す 宮本みさ子
寝台に春が忘れてゆきし人 三玉一郎
春にもまた帰りたき場所あるらしく 三玉一郎
われらみな蔵王の子なり花林檎 長谷川冬虹
こんなはずぢやなかつた春を惜しみけり 三玉一郎
【入選】
桃咲いて阿武隈河畔花浄土 長谷川冬虹
卯の花や隣家の闇の深々と 上 俊一
やはらかにまた伸びやかに山桜 長谷川冬虹
思ひ出の栞としたる花菫 武藤主明
太陽を驚かしたる黄砂あり 平尾 福
分け入つていよいよ深し花の山 川辺酸模
引き潮に海苔粗朶倒れかかりをり 佐伯律子
春の夜の海神かすかなる寝言 宮本みさ子
暗礁か卯波が白くはしやぎをり 上 俊一
桜桃の花の盛りや納骨す 長谷川冬虹
筍を猪と分け合ふ山家かな 川辺酸模
花林檎蔵王臨みて母眠る 長谷川冬虹
芍薬のしづかにゆれて客迎ふ 那珂侑子
鹿啼けば奈良の若葉はひんやりと 谷村和華子
山椒の芽身欠き鰊は鼈甲色 佐藤和子
第二句座(席題:犬ふぐり、蚯蚓、メーデー)
・長谷川冬虹選
【特選】
メーデーやかつて兜太のスローガン 武藤主明
あきらめてのの字に乾く蚯蚓かな 佐伯律子
メーデーやシャッター通りを静々と 武藤主明
いぬふぐり日に三本の列車待つ 武藤主明
【入選】
死ぬ前に蚯蚓は空を見上げしや 那珂侑子
狂ほしく絡み合ふ恋蚯蚓かな 川村杳平
犬ふぐり少年野球の練習場 阿部けいこ
スマホ手にメーデーの旗靡かせて 佐藤和子
水滴に己映すや犬ふぐり 服部尚子
故郷の土手の長きやいぬふぐり 甲田雅子
犬ふぐり如雨露の水をうまさうに 上村幸三
・長谷川櫂選
【特選】
死ぬ前に蚯蚓は空を見上げしや 那珂侑子
芸もなくただSの字の大蚯蚓 上 俊一
釣り針を蚯蚓に徹(とほ)す子供の手 青沼尾燈子
あきらめてのの字に乾く蚯蚓かな 佐伯律子
憎みもせず憎まれもせず大蚯蚓 上村幸三
【入選】
狂ほしく絡み合ふ恋蚯蚓かな 川村杳平
雨風につられて蚯蚓穴を出る 平尾 福
空即是色食うて食はれし蚯蚓かな 長谷川冬虹
無農薬みみずの太く育ちをり 阿部けいこ
腐葉土の程よくこなれ蚯蚓出づ 及川由美子
ふるさとの空の色なり犬ふぐり 平尾 福
上京す先づはメーデーに参加す 那珂侑子
スマホ手にメーデーの旗靡かせて 佐藤和子
しぶしぶと参加する人五月祭 那珂侑子
薄れ行く恋の記憶やメーデー歌 川辺酸模
志高く持てよと蚯蚓這ふ 谷村和華子
膀胱鏡検査は明日犬ふぐり 川村杳平
さまざまなジャンルから講師をお迎えして季節や文化に関わるお話をお聞きする「きごさい+」
今回の講師は、新井一二三のペンネームで中国語著作もたくさんおありの明治大学理工学部教授 林ひふみさんです。ぜひご参加ください。
講演の後、句会もあります。(選者:林ひふみ、趙栄順、長谷川櫂))
日 時:2023年5月20日(土) 13:30~16:00
演 題 : 台湾映画の世界
講 師 : 林ひふみ (新井一二三)
プロフィール:
明治大学理工学部教授。1990年代より、香港、台湾、北京、上海、広州各地の中国語新聞・雑誌にコラムを寄せる。主に日本の社会・文化をテーマとする中国語著作が30点あまりある。日本語著書に『中国・台湾・香港映画のなかの日本』(明治大学出版会)、『台湾物語』(筑摩選書)、『中国語は楽しい』(ちくま新書など)、訳書に『オールド台湾食卓記:祖母、母、私のいきつけの店』(洪愛珠著、筑摩書房)など。明治大学では中国語のほかに、「映画で学ぶ日本とアジア」「映像を通じて識る台湾」ゼミを開講。趣味は旅行と料理。
講師からのひと言
近年日本では台湾ファンが急増し、ちょっとしたブームと言えるほどになっています。台湾からも多くの旅行客が日本を訪れています。しかし、実のところ、台湾は日本とは大きく異なる社会で、なかなか理解が難しい面もあります。大衆向けに作られた映画は、私たちが外国の事情を理解しようとする際、大きな手助けとなってくれます。今回は、1980年代の台湾ニューシネマ以降のヒット作品に沿うかたちで、台湾社会の変遷についてお話ししたいと思います。
2023年5月20日(土) 13:30~16:00 (13:15~ Zoom入室開始)
13:30~14:45 講演
14:50~15:20 句会(選句発表)
15:20~16:00 趙栄順(きごさい編集委員)との対談、質疑応答
<申込み案内>
1. 参加申し込み 5/12(金)まで: ここをクリック して申込みフォームからお申込みください。
2. 参加費:きごさい会員:1,000円 会員外:2,000円 会費の振込先は自動確認メールでお知らせします。
3.ズームのURL、句会の入力フォームのURLは、申込みと入金された方に5/17頃までにメールで配信致します。かならずご確認ください。
4.句会:当期雑詠5句 前日投句です。選者:林ひふみ、趙栄順、長谷川櫂
前日5/19(金) 17時までに所定のフォームから投句。ただし句会の参加は自由です。
ズームを使ったオンライン講演会です。5/12(金)までに参加申し込みをして、5/17頃メールで配信するズーム入室URLなどの案内をご確認いただかないと、当日視聴できません。よろしくお願いいたします。