sinokodai「俳句の相談」にシノコダイ(黒鯛の幼魚)についての庄内地方の方から相談が届きました。

【相談】
山形県酒田市周辺では黒鯛の幼魚をシノコダイと言います。秋の釣魚ですが、デイケアの俳句同好会の先生は黒鯛は夏の季語の一点張りです。庄内では秋の風物詩として藤沢周平さんの作品には頻繁に登場しますし、地元の観光案内にも秋の風物詩と案内されてます。鰆なども関東では春でも瀬戸内では6月頃が産卵期ですし、魚の俳句が多い自分としては納得が行きません。このまま通して良いものでしようか。

【回答】
黒鯛(チヌ)にかぎらず魚は地方によって生態や食文化が異なります。このため歳時記で季節を特定すれば、地方によってかならずズレが生じます。そこで俳句に詠む場合、工夫が必要になります。
問題の黒鯛は多くの歳時記では脂ののる夏の魚にしています。しかし黒鯛の子(シノコダイ)は庄内では秋の風物詩として定着しているので、夏魚として句に詠むのは違和感があるというご指摘です。
私も長く新潟で暮らしたことがあるので、黒鯛の子ではありませんが、小鯛に初秋を感じる北陸一帯の季節感はよくわかります。丸谷才一も鶴岡の人ですが、初秋の小鯛のこまやかな味をたたえた文章があったはずです。
この場合、まず大事なのはシノコダイのもつ初秋の季節感をどこまでも大事にすることです。質問者の句が具体的にどんな句なのかわかりませんが、ただ黒鯛という季語だけを使えば夏の句になってしまいます。そこで初秋の季語を入れて秋の句にするという方法を考えてください。
長い目でみれば、そういう句が積み重なることによって「黒鯛の子」「シノコダイ」が初秋の季語として認知されるようになるはずです。(2016年9月20日)