《俳句の相談》人の句を見てできた句を投句していいか?
【相談】
ある雑誌の10月号で葛西美津子さんの俳句、
梅雨の家ぎゆつと絞つてみたきかな
に出合い、
絞りたきは日本列島秋出水
という句ができました。このような句を自分の句として投句できるのでしょうか。
【回答】
投句してはいけません。
句集や雑誌で人の句を見て感動し、そこから俳句ができることはよくあります。このこと自体は想像力が活発に働いているということであり、何も悪いことではありません。ときには、発想がふくらんでよい句がいくつも生まれることもあります。それは堂々と自分の句として投句、発表してください。
しかし「相談」に書いておられる、
絞りたきは日本列島秋出水
はダメです。理由は二つ。一つは発想が似すぎていること(絞れないものを絞る、雨)。そして、より重大な理由は原句、
梅雨の家ぎゆつと絞つてみたきかな 葛西美津子
このほうがはるかにすぐれているからです。
このような場合、新しい句がもとの句から離れているか、もとの句を超えているかどうかが問題です。そしてどちらがすぐれているか、あなた自身わかるようになることがとても大事です。
しかし仮にこの句を投句した場合、原句が誰でも知っている句ではないので、選者によっては採ってしまうことがあります。しかし、採られたとしてもそれをあなたが自分の句とするには躊躇(ちゅうちょ)、いいかえれば「疾(やま)しい思い」があるはずです。このような句作りを繰り返していると、「疾しい思い」が積み重なってあなた自身を蝕んでゆくことになります。
つまりこれは俳句を作る人の倫理の問題です。俳句は気持ちよく作りたいもの、そう思いませんか。(2016年10月3日)