古志仙台ズーム句会(2020年6月28日)
・第1句座
【特選】
ひとつずつ秘密の宿る香水瓶 森凜柚
横たへてみても凡骨竹むしろ 石川桃瑪
線量計睨むフクシマ夏へ道 石原夏生
【入選一】
さくらんぼ紅き双子をひとつまみ 川村杳平
昼寝人思案するかに首かしぐ 上俊一
黒人の死へ向日葵はうなだるる 武藤主明
野晒の今も眠れる夏野かな 川辺酸模
木漏れ日は夏のにほひや庭師来る 甲田雅子
人影にちるあめんぼの水輪かな 佐藤和子
六月の恋のはじまる傘のなか 森凜柚
公園の昼寝のぢぢいけふ居らず 上俊一
起こされて皆で見に行く夜光虫 阿部けいこ
背後から波を吞みこむ怒涛夏 宮本みさ子
鍋底へ焔涼しき餡練機 宮本みさ子
竹むしろ大望抱くこともなく 石川桃瑪
まだ胎のなかの心地か昼寝の子 辻奈央子
梅雨寒や田水の深さ加減して 及川由美子
姫ゆりやガリ版刷りの民主主義 川辺酸模
大茅の輪地球丸ごと潜らさん 武藤主明
【入選二】
目つむれば旅をしてをり籠枕 辻奈央子
梅雨の街この傘させばパリジェンヌ 那珂侑子
こもり居のすさびに吊す簾かな 及川由美子
あぢさゐの茂り隣の子が見えず 那珂侑子
透く骨のあえかに動く目高かな 川辺酸模
夏鶯節回しあり小節あり 金谷哲
グローブを抱へて走れ夏帽子 金谷哲
存はば微笑百歳麦の秋 長谷川冬虹
ほととぎす真夜の脊山に掠れ鳴く 甲田雅子
道の辺の歌碑に降るなりえごの花 阿部けいこ
山畑やじやがたら薯の花盛り 及川由美子
人住みし名残微かや柿の花 阿部けいこ
眠る子は背中に熱しさくらんぼ 伊藤寛
縁台を伝ひて歩む赤子かな 武藤主明
子別れの鴉はばさと舞ひ上がる 谷村和華子
コロナ菌遮断ビニール梅雨長く 川村杳平
梅雨寒し天保八年一揆の地 川村杳平
でで虫を避けて優しき男の子かな 青沼尾燈子
やり場なき汚水タンクや夏至の海 武藤主明
・第2句座(席題=立葵、蛇、水羊羹)
【特選】
ぐうたらな青大将が長々と 上俊一
ほどほどに試してみるか蝮酒 川村杳平
水やうかん流して器水の色 宮本みさ子
【入選一】
田草取る乙女の先を青大将 宮本みさ子
立葵映画館守る署名来る 甲田雅子
水羊羹ズーム句会の果てにけり 川村杳平
ずいぶんと長きため息蛇の衣 森凜柚
立葵雨が激しくなりにけり 伊藤寛
水やうかん重きといへどへぎ折敷 石川桃瑪
大地から生えてくるごと青大将 辻奈央子
くちなはを踏んで覚めたる午睡かな 川辺酸模
夢の中すつくと濡れて立葵 谷村和華子
立葵ずらりとならぶ農家かな 那珂侑子
咲き昇る花又花や立葵 金谷哲
【入選二】
吹く風も葵の色に染まらんと 辻奈央子
水羊羹提げて門前一呼吸 及川由美子
わが殻をひたに破らん立葵 甲田雅子
蛇がまあカラス三羽に睨まれて 石原夏生
立葵リヤカーを引く母の後 佐伯律子
一家族ふたたびそろふ水羊羹 長谷川冬虹
立葵の花びら付けてとさか真似 佐藤和子
近ごろのは固くないかい水羊羹 伊藤寛
蛇見たと孫駆け戻る夕餉かな 伊藤寛
立ち葵高校野球あと十日 石原夏生
青大将屋根よりどさりバーベキュウ 金谷哲
蛇泳ぐ流れの早き用水路 阿部けいこ