ネット投句(2023年3月31日)選句と選評
【特選】
泥の穴指でまさぐる田螺取り 京都 佐々木まき
とりどりの自由ゆれをりチューリップ 長崎 川辺酸模
【入選】
春眠しマスクの中に欠伸して 北海道 村田鈴音
わたしからわたしがはなれ花の中 北海道 芳賀匙子
春風をあやつりあやつり一輪車 北海道 柳一斉
錆深きロシアの船や春の雪 北海道 柳一斉
若き日の父母思ふ桜かな 宮城 長谷川冬虹
春の夜母の爪切る納棺師 千葉 麻生十三
吾の肩に風に抗ひ花ひとつ 東京 岡田定
病ゆえがん検できず桜散る 東京 長尾貴代
今もまだ娘ライバル白寿の春 東京 長尾貴代
春の夜やスカイツリーがぼんやりと 東京 楠原正光
おさなごの小さき手で追ふ桜かな 東京 楠原正光
黒もじをそーっと入れて桜餅 東京 堀越としの
コロナ明け顔一面の花吹雪 東京 櫻井滋
花の屏風ひろげたるごと我が窓辺 神奈川 越智淳子
潮から上がる網真つ赤桜えび 神奈川 越智淳子
天下とると手相見言ったが春定年 神奈川 遠藤初惠
花冷えの廊下はるばる湯殿まで 神奈川 遠藤初惠
病床の花びんに一枝さくら咲く 神奈川 三浦イシ子
花ふぶくたびにあなたが遠くなる 神奈川 三玉一郎
こころからこころへふぶく桜かな 神奈川 三玉一郎
風光る母の杖先足の先 神奈川 植木彩由
晩年のかくも待たるる桜かな 神奈川 中丸佳音
たかだかと空押しあぐる辛夷かな 神奈川 島敏
チューリップ花びらとぢて雨籠 神奈川 那珂侑子
陽炎の果てに我逝く国あらむ 神奈川 片山ひろし
春炬燵己がいびきに目覚めけり 新潟 安藤文
花の空黄金の国なりし佐渡 新潟 安藤文
声溢るる学校田の田植かな 新潟 高橋慧
溝浚へ若者一人初参加 富山 酒井きよみ
朧夜の花や縄文火焔土器 石川 松川まさみ
賓頭盧の御眼いく度も撫でて春 長野 金田伸一
ほの見えて梅としらるる香りかな 長野 金田伸一
風呂の中体真白し春の月 岐阜 夏井通江
物は捨て人を失ひ春深し 愛知 宗石みずえ
三つ目は二人で分くる桜餅 愛知 青沼尾燈子
夫入院春爛漫の只中に 京都 佐々木まき
花辛夷夫を見送る手術室 京都 佐々木まき
久に逢ふ人も加はる花見かな 京都 氷室茉胡
花の闇さくらの奥に鬼ねむる 大阪 安藤久美
ぼた餅を持ちて覗くや辻御堂 大阪 山中紅萼
三年間のマスク外して卒業す 大阪 木下洋子
花時や瞑目深き大文字 大阪 澤田美那子
巡礼の春すれちがふ影法師 兵庫 加藤百合子
今日からは日ごと通はん花一分 兵庫 加藤百合子
永き日を余さず使ひ切りにけり 岡山 北村和枝
アレクサと喋る幼子のどけしや 岡山 北村和枝
もんぺはき花の行脚の一世かな 岡山 齋藤嘉子
春風や踝見ゆるハイヒール 広島 鈴木榮子
雨上がり春がきらきら植物園 長崎 ももたなおよ
花すみれいつか一人のふたりかな 長崎 川辺酸模
都井岬太平洋に青き踏む 大分 山本桃潤
鵜と比ぶ息の長さよ春の海 大分 山本桃潤
白魚の喉過ぐとき生生し 大分 山本桃潤
この島を洗ふ大潮山笑ふ 大分 竹中南行