ネット投句(2023年2月15日)選句と選評
【特選】
草餅やもはや返せぬ母の恩 神奈川 三浦イシ子
われもまた人の形のおぼろかな 神奈川 三玉一郎
【入選】
鬼やらひ紙の面つけ出番待つ 北海道 村田鈴音
一切が魚氷に上る青さかな 北海道 芳賀匙子
春寒の卵一個の日曜日 北海道 芳賀匙子
魚氷に上り山々は肩を組み 北海道 柳一斉
立春の雲の誘ふ旅心 北海道 柳一斉
凧揚げる空の深さを手に覚え 青森 清水俊夫
霜柱燃ゆるがごとく崩れをり 宮城 長谷川冬虹
春の日や倉庫の奥に差す光 茨城 袖山富美江
ほつこりと糞の置かれり春の土 埼玉 佐藤森恵
千代紙で作る封筒ものの種 千葉 菊地原弘美
歳月や崩れし畦につくし摘む 千葉 若土裕子
子の心知らずに逝かせ梅香り 千葉 春藤かづ子
裸木に赤い小さな手袋ひとつ 千葉 青山果楠
ウクライナ春泥に倦む若き兵 千葉 谷口正人
春立つや夫歩行器の軽き音 千葉 池田祥子
川筋の変はりし堤蕗の薹 千葉 池田祥子
ホーム端一人ぽっちの日向ぼこ 東京 岡田定
取れたての一枚づつや若布干す 東京 楠原正光
襟立ててバスの影待つ余寒かな 東京 堀越としの
紅白の梅奔放に日曜日 東京 堀越としの
卒業の別れを惜しむマスクかな 東京 櫻井滋
内裏雛小さきをしのばせ入所の荷 神奈川 遠藤初惠
父の座に父ゐるごとし春炬燵 神奈川 松井恭子
寒すずめ今朝も餌待ち並びおり 神奈川 土屋春樹
梅一輪湯気立つやうに咲きにけり 神奈川 島敏
雪やみて鶸の群れ湧く青空よ 神奈川 湯浅菊子
満天の星屑のなか冬の富士 神奈川 藤澤迪夫
手水舎の柄杓の新た梅ひらく 神奈川 藤澤迪夫
バレンタインデー母の情けのチョコ一つ 新潟 安藤文
水平に雪原垂直に杉 新潟 高橋慧
雪籠りこの世を覗く窓一つ 富山 酒井きよみ
織り上がる紬一反春の嶺 石川 花井淳
一と日降り一と日積みけり春の雪 長野 金田伸一
春寒やガラスの器粉々に 長野 大島一馬
春の灯と車内の映る車窓かな 岐阜 夏井通江
我死して後の雛の行きどころ 岐阜 夏井通江
風花や長き老後を茫茫と 岐阜 三好政子
湯たんぽで一生終えし母なりき 愛知 稲垣雄二
亀泣くや病に逝きし友遥か 愛知 青沼尾燈子
ゴム伸びし靴下を干し木の芽晴 京都 吉田千恵子
どか雪や山笑ひかけまた眠る 大阪 木下洋子
薄氷を一番乗りで踏んで行く 大阪 木下洋子
声だけを空に残して落雲雀 大阪 澤田美那子
余呉の湖許されて今朝寝かな 大阪 齊藤遼風
わけ知らぬ身にも建国記念の日 兵庫 天野ミチ
春時雨微かに濡れし交差点 兵庫 髙見正樹
春の野へ出でて遊べや仏たち 奈良 きだりえこ
海からの電車大きな籠と海女 奈良 中野美津子
一茶忌や烏蹴散らす塵芥車 奈良 柏木博
薄氷の生れては消ゆる黙かな 和歌山 玉置陽子
退院の母を迎へる春炬燵 岡山 北村和枝
善哉よかっぽ酒よと初午祭 長崎 ももたなおよ
声上げて菜飯喜ぶ白寿かな 長崎 川辺酸模
枝を手に妻の追ひゐる畦火かな 長崎 川辺酸模
前生も死後も茫々残る雪 大分 竹中南行