ネット投句(2022年11月30日)選句と選評
【特選】
ぽたぽたと雨を楽しむ冬木かな 新潟 安藤文
乾鮭に命つなぎし昔あり 富山 酒井きよみ
折りて鶴ひらかば果てしなき枯野 石川 松川まさみ
チャップリンある日怒りの冬帽子 愛知 青沼尾燈子
淋しさうな木に五本ほど大根干す 兵庫 藤岡美恵子
【入選】
樽底に憂さも蔵める味噌作り 北海道 村田鈴音
あめゆきのやんでからまつしぐれかな 北海道 芳賀匙子
人殺す大義はどこに良寛忌 北海道 柳一斉
温め酒加減あやふく妻の留守 青森 工藤一枝
閉じられままの聖書や冬銀河 青森 三浦勝衛
消えてゐる月消えていく天王星 青森 清水俊夫
凛として抗議の白紙冬薔薇 千葉 池田祥子
吊られたる鮟鱇の眼に暗き海 千葉 麻生十三
花ならぬ紅葉の筏目黒川 東京 岡田定
冬ざれやビニル傘打つあめのおと 東京 小野早苗
するすると窓にゴンドラ冬うらら 東京 堀越としの
銀杏落ち葉再開発を蹴散らさん 東京 櫻井滋
セーターを抜けて地球へ顔を出す 神奈川 三玉一郎
おかめ蕎麦すすりつ冬の雨聞きつ 神奈川 中丸佳音
朝採れの白菜や濡れ新聞紙 神奈川 藤澤迪夫
刻々と変はる富士山冬の空 神奈川 那珂侑子
高僧も混じり沢庵漬けにけり 神奈川 那珂侑子
明日知れぬ色の限りの冬紅葉 神奈川 片山ひろし
海鼠腸や島の鬼太鼓聞きながら 神奈川 片山ひろし
母は目を子は耳を挿す雪兎 神奈川 片山ひろし
どつさりと大根提げて客来たる 新潟 安藤文
日の透ける橅の林や滑子採り 新潟 高橋慧
芋蔓にあやからんかなの道 長野 金田伸一
落葉掃き堅き大地に大き宙 長野 大島一馬
冬空の高きに皇帝ダリヤかな 岐阜 夏井通江
石ころの影の伸びたる小春かな 岐阜 古田之子
長男に教え込まんと雪囲 京都 吉田千恵子
玉ねぎを百ほど埋めて山眠る 京都 諏訪いほり
発言の撤回またも虎落笛 京都 氷室茉胡
売り叩く声の飛び交ふ十二月 京都 氷室茉胡
冬の蝶鏡の奥へ帰りけむ 大阪 安藤久美
けふの日の良きことひとつ濃き紅葉 大阪 山中紅萼
山眠る夢はほのぼの花の色 大阪 澤田美那子
歯がゆさは一日ひとつ年用意 大阪 澤田美那子
はりつけのごとく外套かけてあり 兵庫 加藤百合子
枯れてより風にまかせん箒草 兵庫 加藤百合子
左義長の炎に揺らぐ年男 兵庫 福田光博
ついて来い言わんばかりの仔猫かな 兵庫 福田光博
冬晴や港の空を舞ふ鳶 兵庫 髙見正樹
ポケットに愛だけつめて冬木道 奈良 喜田りえこ
埋み火や言葉を武器と闘へり 奈良 喜田りえこ
冬蜂の潜みて眠る鉢の中 奈良 中野美津子
更地増え街の欠けゆく寒さかな 岡山 北村和枝
蛸壷に猫の寝てゐる小春かな 香川 曽根崇
空鋏鳴らして終る松手入 香川 曽根崇
セザンヌの絵より転がりラフランス 長崎 ももたなおよ
今年から母は家居や報恩講 長崎 川辺酸模
明々と灯して電車枯野ゆく 大分 山本桃潤
落葉舞ふ帰るところのなき都会 大分 山本桃潤