ネット投句(2022年9月30日)選句と選評
【特選】
わが小庭うたを届けに小鳥来る 宮城 長谷川冬虹
蛤となりて雀は瞑想す 大阪 澤田美那子
プーチンはクマに雀は蛤に 岡山 齋藤嘉子
秋茄子小ぶりなれども紺深し 香川 曽根崇
きちきちの羽音日和や讃岐富士 香川 曽根崇
我逝きて妻の夜長の如何ならむ 大分 山本桃潤
陸に置く露一滴や古端渓 大分 山本桃潤
ふところの深き国なれ蚯蚓鳴く 大分 竹中南行
【入選】
迷ひなく布を裁つ手に秋澄みぬ 北海道 村田鈴音
虫喰いの菊花むんずと抱瓶に 北海道 芳賀匙子
切株に一息つきて紅葉狩 北海道 柳一斉
天麩羅の旬の松茸色も良し 岩手 川村杳平
蟻の道畏み畏み「国葬」す 宮城 長谷川冬虹
同年の朋惜しみつつ菊の酒 宮城 長谷川冬虹
退院の君をことほぎ百舌鳥高音 埼玉 園田靖彦
君先に眠りゐる墓白桔梗 埼玉 上田雅子
秋祭り背負いし子にも足袋法被 千葉 芦野アキミ
懐かしきかほまじりたる秋祭 千葉 菊地原弘美
木犀にさそはれ夜のベランダへ 千葉 菊地原弘美
つややかなむすびに一塩今年米 千葉 若土裕子
大根蒔く小さき五粒祈りつつ 千葉 谷口正人
手助けの言葉身にしむ車椅子 千葉 池田祥子
婚家より届く新米二十年 千葉 池田祥子
今日の月芒採りにも行かざりき 千葉 池田祥子
対岸の虫の音聴こゆ隅田川 東京 岡田定
天高し鈴なりの絵馬からからと 東京 岡田定
安売りの惣菜うれし鰯雲 東京 小野早苗
竹伐つて作りし二胡は風の音 東京 神谷宣行
一言に悔いあり窓は秋の雨 東京 畠山奈於
若者の群れに混じりて街残暑 東京 堀越としの
高熱の身に沁みわたるりんご汁 神奈川 遠藤初惠
信濃毎日にくるまれ届く林檎かな 神奈川 遠藤初惠
新涼やかろがろ下る山男 神奈川 三浦イシ子
亡き者の慟哭まじる虫の声 神奈川 三玉一郎
野鼠の口に合つたか落花生 神奈川 松井恭子
青鷺の飛びて歩きて天高し 神奈川 松井恭子
里芋に味含まする間を読書 神奈川 中丸佳音
つぎつぎと成つて配つてゴーヤーかな 神奈川 那珂侑子
稲雀喜び勇み天へ地へ 新潟 高橋慧
三日三晩踊りし草履軒に干す 富山 酒井きよみ
山雨急胡弓をかばふ風の盆 富山 酒井きよみ
二百十日二十日過ぎけり今朝の晴 石川 松川まさみ
汐風や刈田千枚押しのぼる 石川 松川まさみ
望月の全からざる目の病 長野 金田伸一
畦道も仏の道ぞ曼殊沙華 長野 大島一馬
姨捨に老いを背負ひし月見かな 長野 大島一馬
秋気澄む木地師の里は谷の底 岐阜 三好政子
台風が揺する夜勤の工場群 愛知 稲垣雄二
犬の尾に命の証しゐのこづち 愛知 青沼尾燈子
寂しさは一人の閨の鉦叩き 京都 佐々木まき
灯火親し「山廬の四季」を膝に置き 京都 佐々木まき
野分晴まだやり直し効く齢 京都 氷室茉胡
田の神もひとつ年寄る鳴子かな 大阪 安藤久美
大声も力の一つ運動会 大阪 高角みつこ
誰にでもできると言へどむかご飯 大阪 高角みつこ
大風や大宰府の雨京の雨 大阪 山中紅萼
金秋や国葬などは要らぬこと 兵庫 天野ミチ
綿を摘む籠のひとつに赤ん坊 岡山 齋藤嘉子
更地今すつかり草地虫しぐれ 長崎 ももたなおよ
新走り百寿記念の銀杯に 長崎 ももたなおよ
令まじや狭窄症のわが背骨 長崎 川辺酸模
どの局も国葬ばかり大根蒔く 長崎 川辺酸模