ネット投句(2022年9月15日)選句と選評
【特選】
秋涼しほつとくつろぐ瓜茄子 千葉 池田祥子
親の臑かじる子も亡き盆の月 神奈川 片山ひろし
*亡し
国葬や怒髪鶏頭ありぬべし 石川 松川まさみ
秋暑く人も自分も嫌ひなり 大阪 高角みつこ
名月を入るるに狭き余呉の湖 大阪 齊藤遼風
*狭し
【入選】
蜩や「束の間」といふ旅の宿 北海道 村田鈴音
どんぐりは記憶のつぼや降りしきる 北海道 芳賀匙子
スマホにて子から渋谷の今の月 宮城 長谷川冬虹
新歳時記まづ月の項音読す 宮城 長谷川冬虹
鷹匠の腕へむんずと鷹戻る 埼玉 園田靖彦
衣被父の在ませば百十歳 千葉 若土裕子
自転車でやんまと並走川堤 千葉 谷口正人
ひとつ家の灯火おとし月見かな 千葉 麻生十三
草屋根の崩るるままに良夜かな 千葉 麻生十三
鎌を研ぎ七草刈りて月を待ち 千葉 麻生十三
子は寝ねて在宅業務良夜かな 東京 宇津木幹夫
足立つか立たぬかの海夏果つる 東京 宇津木幹夫
夏惜しむ草に埋もれしベンチかな 東京 岡田定
木漏れ日の準備体操空高し 東京 岡田定
冷まじや生きよ生きよと心臓音 東京 神谷宣行
難病認定受けてひるまず天高し 東京 神谷宣行
鰯雲サイクリングの列をなし 東京 楠原正光
空中にぴたと止まれる蜻蛉かな 東京 楠原正光
少し嬉しけふ十五夜とメール来て 東京 堀越としの
暮れなづむ庭茫々と秋深し 東京 櫻井滋
猫の背を撫ぜる手とまる秋思かな 神奈川 越智淳子
組み合はず押しと張り手の今相撲 神奈川 越智淳子
森の日をしづかに讃へ水澄めり 神奈川 三浦イシ子
秋といふ忘るるための季節かな 神奈川 三玉一郎
旅に買ひ夕顔の実のごろんごろん 神奈川 松井恭子
人悼むもつたいなきほど月夜かな 神奈川 松井恭子
新涼や飛行機雲が近く見え 神奈川 土屋春樹
台風の高波洗ふ烏帽子岩 神奈川 片山ひろし
夫婦して仲睦まじく栗を剥く 新潟 安藤文
サッチモのサマータイム聴く夜長かな 新潟 高橋慧
戦士に母にあかあかと今日の月 富山 酒井きよみ
丸ビルと新丸ビルや芋名月 石川 花井淳
障りあるまなこに明し今日の月 長野 金田伸一
草むしりせきれいの子の来て遊ぶ 岐阜 古田之子
力こぶ草のちからと引き合ひぬ 岐阜 梅田恵美子
人類の嘆きの上に今日の月 愛知 稲垣雄二
菊一輪挿す畳に母の尿 京都 吉田千恵子
秋の空また書き直す遺言書 京都 氷室茉胡
祝辞述ぶ人も老人敬老日 京都 氷室茉胡
末つ子は制御不能や天高し 京都 氷室茉胡
もう一つ太陽増えたかこの残暑 大阪 高角みつこ
桃食へば心に浮かぶ山蘆かな 大阪 木下洋子
颱風や焦らすが如く意地悪く 兵庫 天野ミチ
母鹿の眼黒々として仔を映す 奈良 中野美津子