ネット投句(2022年7月15日)選句と選評
【特選】
うつくしやいのち奪ひし大雪渓 神奈川 三玉一郎
大悪人溽暑にまみれここにあり 愛知 青沼尾燈子
ありがたき北野の梅も干されたり 京都 佐々木まき
煽ぐより開くたのしみ京扇子 京都 佐々木まき
恐ろしき千歳の闇へもどり鉾 和歌山 玉置陽子
【入選】
病む母の震える文字の夏見舞 北海道 村田鈴音
草いきれ二十五平米の貸農園 北海道 村田鈴音
母は絵に我は一句にクレマチス 北海道 芳賀匙子
大うちは川のしこ名の力士出でよ 宮城 長谷川冬虹
剣道の面の光りて夏に入る 茨城 袖山富美江
どの顔も修羅のかんばせ佞武多来る 埼玉 園田靖彦
大南風青空をゆくモノレール 埼玉 上田雅子
遠泳や少し大人になりし夏 埼玉 上田雅子
電柱の影も尊し炎天下 埼玉 上田雅子
雲の峰ありあり見ゆるきのこ雲 千葉 若土裕子
屋形船南風纏ひて浮かびけり 千葉 谷口正人
寄り添ひて夫の爪切る夜の秋 千葉 池田祥子
愛しきはうしろ姿や古浴衣 千葉 麻生十三
放課後の静まり返るプールかな 東京 楠原正光
日焼けして見分けのつかぬ島の子ら 東京 楠原正光
きうりもみ義母のひと鉢懐かしく 東京 堀越としの
草いきれロック大会夢の跡 東京 櫻井滋
コロナ禍やラヂオ体操復活す 東京 櫻井滋
甘酢漬けほのくれなひや新生姜 神奈川 越智淳子
医学書に古びし付箋半夏生 神奈川 遠藤初惠
夏休全部入つてゐるリュック 神奈川 三玉一郎
夏空や身ぐるみ剥いで洗濯機 神奈川 松井恭子
昼寝ざめやつと我が家に辿り着く 神奈川 那珂侑子
巣鴨たのし赤い腹巻買うてみる 神奈川 那珂侑子
炎天や献花の列のながながと 新潟 安藤文
ひつそりと我に寄り添ふ青葉木菟 新潟 安藤文
夕河鹿水底の石揺れており 新潟 高橋慧
人類の生まれし海へ禊かな 富山 酒井きよみ
庵の夏寝茣蓙一枚あればよし 富山 酒井きよみ
能登半島海に浮かせて大夕焼 石川 花井淳
古団扇聞いてゐるのかゐないのか 石川 松川まさみ
いつぴきの夏の鱸を包丁す 長野 金田伸一
対話なき地上に蛇の孤独かな 長野 大島一馬
下がり眉の顔おだやかや楸邨忌 岐阜 夏井通江
山の池朽葉沈めて河骨咲く 岐阜 古田之子
生きるとは間違えること心太 岐阜 梅田恵美子
大いなる残る命や泥鰌汁 愛知 稲垣雄二
この星に石炭紀あり釣り忍 愛知 稲垣雄二
あみだくじの末の会長山車準備 京都 吉田千恵子
つとよぎりふと失せにけり夏の蝶 京都 諏訪いほり
捩花や妻には妻の未来像 京都 氷室茉胡
心太さつきの話もう忘れ 京都 氷室茉胡
鵜飼川殺生の火をしたたらす 大阪 安藤久美
太ももに響くジャズ祭夏の月 大阪 高角みつこ
涼風のたつまで墨を擦りにけり 大阪 高角みつこ
祇園会や涼とりにいく百貨店 大阪 内山薫
鱧づくしいよよ始まる祭かな 大阪 木下洋子
大夕立そのほかの音皆消えて 大阪 澤田美那子
賀茂茄子や深く冷たく紺光る 大阪 澤田美那子
マンションに取り囲まれて青田風 兵庫 吉安とも子
何もかも異常事態や梅雨明ける 兵庫 吉安とも子
鍬を持つ幾年月や青田風 兵庫 吉安とも子
その事に触れずにおこうサングラス 兵庫 千堂富子
大変なニュース続くも冷奴 兵庫 天野ミチ
色々なゼリー美し人の世に 兵庫 天野ミチ
夏深しコロナで君と会えぬまま 奈良 中野美津子
月読の神宿りませ袋掛 和歌山 玉置陽子
白南風や鉄人レース駆け抜くる 香川 曽根崇
遍路宿すでに空つぽ明早し 香川 曽根崇
由々しきは秩序なき世ぞ蟻の列 長崎 ももたなおよ
舟虫やハングル文字のもの数多 長崎 ももたなおよ
炎天のこの一杯の生ビール 長崎 川辺酸模
うつつ世に少々飽きて夕涼み 長崎 川辺酸模
浮き世にも花は有りけり夕涼み 長崎 川辺酸模
酒蔵や代々の黴うごめきて 大分 山本桃潤
丘越へて戦争がくる雲の嶺 大分 山本桃潤
言葉とは意を尽くすとは玉の汗 大分 竹中南行