ネット投句(2022年4月30日)選句と選評
【特選】
賽銭の額を数へる日永かな 新潟 安藤文
裄丈の兄とぴつたり端午かな 石川 花井淳
花の屑朝一番に踏み入りぬ 岐阜 古田之子
生まれ落つるかなしみにぬれ甘茶仏 大阪 安藤久美
散りてなほ剛毅なるかな白牡丹 奈良 喜田りえこ
【入選】
山独活の赤紫の匂ひ立つ 北海道 村田鈴音
命こらへし満開の桜かな 北海道 芳賀匙子
鳥帰る茶漬けすすりて箸置けば 北海道 柳一斉
島の中奥へ奥へと散椿 宮城 長谷川冬虹
一合を遺影の父へ昭和の日 宮城 長谷川冬虹
葬送の今朝まつ白に初夏の富士 千葉 若土裕子
久々の故郷にひとり春の暮 千葉 谷口正人
暮れなづむ庭あをあをと夏に入る 千葉 池田祥子
母の忌にひとり酒酌む残花かな 千葉 麻生十三
行く春の暴れ続くる地球かな 東京 松田桃華
恋文の返事に届く柏餅 東京 神谷宣行
行く春や誕生日も過ぎにけり 東京 長尾貴代
明易や徒然草が枕元 東京 楠原正光
二次元の世界を発ちててふてふに 東京 畠山奈於
スーパーにホタルイカあり夫に買ふ 東京 堀越としの
黄水仙とムスカリ群れるがんばれと 東京 堀越としの
ねぎ刻む独居老人走り梅雨 東京 櫻井滋
温暖化地球まるごと更衣 東京 櫻井滋
初めてのチーズケーキを焼く五月 神奈川 伊藤靖子
下駄でゆく厠は暗し菜種梅雨 神奈川 越智淳子
田植機や顔の緊りし老農婦 神奈川 越智淳子
万緑や学部棟前「師道」の碑 神奈川 遠藤初惠
亡き妻にと所望されたるゆすらかな 神奈川 佐藤なぎ子
菜の花の土手の向かうにある昔 神奈川 中丸佳音
まつ白な祈願鉛筆梅の花 神奈川 那珂侑子
七十五まだまだ若しと言はれ春 神奈川 那珂侑子
筑波嶺を揺らして蟇の交むかな 神奈川 片山ひろし
真白の佐渡の雲写す代田かな 新潟 安藤文
戦なき大地を歩く蟻の列 新潟 安藤文
立山がやあと挨拶鯉幟 富山 酒井きよみ
行く春の老体やさし病の巣 石川 松川まさみ
見納めに来たる吉野の残花かな 長野 金田伸一
山門の春暗がりに仁王の眼 長野 大島一馬
木の芽張る二歳児の言葉爆発 岐阜 夏井通江
小糠雨芽吹きの山を覆ひたり 岐阜 古田之子
春の土小さき花より目覚めけり 岐阜 三好政子
飛魚や飛ぶ形にされ店だなに 愛知 宗石みずえ
豚の名は耳の番号夕薄暑 京都 吉田千恵子
たとふれば安土城てふ春の夢 京都 諏訪いほり
遠目にも分る貴方の春日傘 京都 氷室茉胡
花水木十九の特攻兵の歌碑 京都 氷室茉胡
歌ひつつ丸め丸めて草の餅 大阪 安藤久美
戦なき野に摘みためて草の餅 大阪 安藤久美
ある朝の扉に一つ蝶の蛹 大阪 木村正子
飽きもせず年を重ねて蟇 大阪 澤田美那子
思ひ出す横顔ひとつ蚕豆君 大阪 澤田美那子
春深し深夜の窓を開け放つ 兵庫 天野ミチ
山の寺犬一匹の朧かな 兵庫 福田光博
更衣白の眩しき通学路 兵庫 髙見正樹
牡丹のからくれなゐに爛れゐる 奈良 喜田りえこ
牡丹の崩れんとして息深く 奈良 喜田りえこ
名を呼べば振り向く子猿暮の春 和歌山 玉置陽子
悠然と老いづく力牡丹かな 和歌山 玉置陽子
な踏みそ青きに隠す地雷あり 岡山 齋藤嘉子
日柄よし恥ぢらひ開く桜漬け 広島 鈴木榮子
麦秋の広がり虚しテレビ消す 広島 鈴木榮子
畳紙に残る母の字花衣 広島 鈴木榮子
鰆一本提げて結納祝かな 香川 曽根崇
行く春やいつも人の世難しく 長崎 ももたなおよ
戦争はいつもすぐ其処昭和の日 長崎 ももたなおよ
たんぽぽや別れを惜しむ志願兵 長崎 川辺酸模
戦車踏む麦の祖国よ愛おしき 大分 山本桃潤
春キャベツ刻むや母の音を立て 大分 山本桃潤
混迷や海霧よりぬつと船帰る 大分 山本桃潤
疫禍なほ戦争いまも柳絮とぶ 大分 竹中南行
押花にしたき雨垂れ暮の春 大分 竹中南行