ネット投句(2022年4月15日)選句と選評
【特選】
花筏嘆きの海を漂へり 千葉 池田祥子
春キャベツ戦争記事に包みけり 神奈川 松井恭子
猛然と囀りまくる命かな 大阪 澤田美那子
【入選】
とくとくと大地さすらふ雪解水 北海道 高橋真樹子
一皿の春の苦みをたたふべく 北海道 高橋真樹子
花冷えや給湯室の列にいて 北海道 村田鈴音
父の忌やいつもの店の鰊蕎麦 北海道 村田鈴音
ふらここを漕ぎて押し出す青き空 北海道 柳一斉
忘るなと余震続けり花冷す 宮城 長谷川冬虹
父の忌のさくら隠しの雪の朝 宮城 長谷川冬虹
春泥やピンで留めたる背番号 茨城 袖山富美江
島々を舟行き交へる花月夜 埼玉 上田雅子
ラッシュアワーのプラットホーム燕の巣 千葉 菊地原弘美
さあ小鳥新築戸建て巣箱です 千葉 若土裕子
雉逃げる慌てふためき転ぶなよ 千葉 谷口正人
縄文の欠片を探す菫かな 千葉 池田祥子
桟橋に乗船の列夏来る 東京 楠原正光
メーデーの組合別に長き列 東京 楠原正光
蕗の薹昨日のところまた一つ 東京 堀越としの
鼻先に花びらつけて犬帰る 神奈川 遠藤初惠
花冷はこころの後ろ姿かな 神奈川 三玉一郎
真下にて仰ぐ桜の冥しとも 神奈川 中丸佳音
ふるさとの海市を語る母は亡し 神奈川 片山ひろし
鬼太鼓どんどこどんと花の雨 新潟 安藤文
落ちさうで落ちぬ椿のしぶとさよ 新潟 安藤文
添ひとぐる死神の顔朧月 石川 松川まさみ
胸に抱く赤子に緑さす日かな 岐阜 夏井通江
腹見せて眠る子犬や春の雲 岐阜 古田之子
一夜さの雨の力や山芽吹く 岐阜 古田之子
春疾風スカーフにくるむ遊び髪 岐阜 三好政子
地下室の寒気に耐へしキーウの人 岐阜 三好政子
花の世をからくり人形うらがへる 岐阜 梅田恵美子
戦争がのたうちまはる春の泥 愛知 稲垣雄二
囀るやたちまちに数限りなく 愛知 臼杵政治
明日葉の苦しや母のもうをらず 愛知 宗石みずえ
初蝶のたれかを待つてゐるごとく 愛知 青沼尾燈子
心なし悲しき貌の蚕かな 京都 佐々木まき
清明や双子ですよと告げらるる 京都 氷室茉胡
酒辛く草餅は芳しがよし 大阪 安藤久美
なつかしき秘書検定よ桜草 大阪 高角みつこ
リラ冷えの静かなる日をありがたく 大阪 高角みつこ
白木蓮や良き師良き妻昼の酒 大阪 齊藤遼風
隠国の深き闇あり朝寝かな 大阪 齊藤遼風
老いるほど妣懐かしやヒヤシンス 兵庫 加藤百合子
浜に佇ち遥か紀州のかぎろひを 兵庫 加藤百合子
きやうだいかずつと一緒に雀の子 兵庫 天野ミチ
弁当の蓋の佃煮春惜しむ 奈良 喜田りえこ
ひとひらの花と寂びたる矢立かな 和歌山 玉置陽子
一刀で彫り出す花の尉と姥 和歌山 玉置陽子
やはらかき棘も刻まん木の芽和 岡山 齋藤嘉子
草餅や我のそばにはいつも祖母 岡山 齋藤嘉子
蛇穴を出でて驚く瓦礫かな 香川 曽根崇
醜草も花を捧げて佛生会 香川 曽根崇
全校生フェリー見送る離任の日 香川 曽根崇
すかんぽや吾にもありし反抗期 長崎 川辺酸模
しばらくはこの世の夢を花筵 長崎 川辺酸模
赤ん坊の寝顔うかがふ春蚊かな 長崎 川辺酸模
金印を乗せて帰るや春の潮 大分 山本桃潤
淡海は天の受け皿花明り 大分 竹中南行