ネット投句(2020年10月15日)選句と選評
【特選】
大宇宙ぐらぐら揺らし雁渡る 01_北海道 高橋真樹子
一円も使はぬひと日天高し 13_東京 森凜柚
花野ゆく花野の果てのおそろしき 14_神奈川 松井恭子
男郎花見守るように女郎花 23_愛知 臼杵政治
・やうに
体育の日だつたはずの今日終はる 27_大阪 高角みつこ
冷まじやアドレス消去ワンタッチ 27_大阪 澤田美那子
我が影を隠して白き蕎麦の花 27_大阪 齊藤遼風
・白し
孫娘の凭れ掛かるや月を待つ 29_奈良 田原春
・の、不要。これ重大。
月浴びて涙のねずみ動き出す 33_岡山 齋藤嘉子
・走り出す?
詳細は聞かず語らず温め酒 37_香川 曽根崇
磯菊やタンカーすでに視野の外 38_愛媛 豊田喜久子
赤とんぼ展望台に山迫る 38_愛媛 豊田喜久子
よれよれの地球憂ふやけふの月 40_福岡 北井乃峰子
・地球を憂ふ
コスモスの光まぶしむ二人かな 42_長崎 川辺酸模
屏風絵が終の棲家や秋の蝶 42_長崎 川辺酸模
・棲家か
長き夜や飴山句集の書写をせん 42_長崎 百田直代
・の、不要。同じく。
爽やかや老いて無くせしもの多き 44_大分 山本桃潤
・あまた
色付きし言葉の森を歩む秋 44_大分 山本桃潤
【入選】
さみしさの先頭に立つ芒かな 01_北海道 芳賀匙子
天高し島ひとつ置き湖黙す 01_北海道 柳一斉
糸瓜忌や食ふことが一仕事とは 01_北海道 柳一斉
豊作の松茸お裾分けの山 03_岩手 川村杳平
・松茸の山お裾分け
手のひらにささめく木の実宇宙塵 07_福島 渡辺遊太
痛風のしんしんと来て秋の雨 11_埼玉 佐藤森恵
・しんしんと痛し
妻であり母である日々鳥渡る 11_埼玉 藤倉桂
一揺れに壊れてしまふ熟柿かな 11_埼玉 藤倉桂
・一揺れで
長き夜の夜汽車の窓に映るかほ 12_千葉 菊地原弘美
一両はべつたら市の帰り客 12_千葉 菊地原弘美
ベランダに夫の寝椅子を月今宵 12_千葉 若土裕子
箒木や農家の鶏放し飼ひ 12_千葉 若土裕子
・の、不要。
啄木鳥のまほら打つ音澄みわたる 12_千葉 池田祥子
すり鉢にぼてんと坐るとろろかな 13_東京 岡田栄美
警官のマスクの黒のそぞろ寒 13_東京 岡田栄美
秋草と並び座りぬ月の前 13_東京 岡惠
捧げ持つ皿を全き熟柿かな 13_東京 市村さよみ
・皿に
あつけなく抜けるスランプひよんの笛 13_東京 森凜柚
白き手の舞ふやグレコの枯葉散る 13_東京 西川遊歩
弟を棺に埋づめ燃ゆる菊 13_東京 西川遊歩
父がすり母がのばせるとろろ汁 13_東京 長井亜紀
・のばしぬ
草叢に確と立ちけり女郎花 13_東京 楠原正光
稲架の影伸びてひと日に事もなく 13_東京 堀越としの
・のびて一日何もなし
日々新た術後一年天たかし 13_東京 櫻井滋
秋風や異臭たちこむ秋津州 13_東京 櫻井滋
全校で落穂拾ひし山の村 14_神奈川 伊藤靖子
・拾へり
その皺の迷路楽しき胡桃かな 14_神奈川 越智淳子
窯変の果ての色なる柘榴かな 14_神奈川 金澤道子
お日様をぎゆつと詰めたる柘榴かな 14_神奈川 金澤道子
・お日様のぎゆつと詰まれる
コスモスを挿してひとりやティータイム 14_神奈川 金澤道子
・ひとりの
夕の日に仄かに染まる十日月 14_神奈川 原田みる
なかなかに形なさぬや鰮雲 14_神奈川 三浦イシ子
台風の大波岩に食ひ入るや 14_神奈川 三浦イシ子
夕映えの仕舞ひの色の熟柿かな 14_神奈川 松井恭子
蟷螂を月の草生に放ちたり 14_神奈川 水篠けいこ
氾濫の川を流れてゆく南瓜 14_神奈川 水篠けいこ
太股で磨く林檎や子は二十歳 14_神奈川 水篠けいこ
・太腿?
加はりてわれも揺れたし花芒 14_神奈川 中丸佳音
百目柿軒より吊るし故郷思う 14_神奈川 土屋春樹
・軒に吊して
蛇穴に入れば夢見る蛇となる 14_神奈川 湯浅菊子
・入りて
遠き日の少年となりひよんの笛 14_神奈川 片山ひろし
・少年現れよ
しんしんと隔離病棟夜は長し 15_新潟 安藤文
秋の虹二重とあらば殊の外 15_新潟 高橋慧
新米の迷はず卵かけご飯 17_石川 岩本展乎
仏壇は掌合はすところ荒尾梨 20_長野 金田伸一
敗戦の日職員室で食べた兎 20_長野 柚木紀子
枯れし蓮まだ枯れぬ蓮雨しづか 21_岐阜 夏井通江
雨のなか歩いてふいに野菊かな 21_岐阜 夏井通江
夕冷えて調子あやしき鉦叩 21_岐阜 古田之子
月山や花野の果ては空のはて 21_岐阜 梅田恵美子
秋雨や雫をきそふ蓮の葉 21_岐阜 梅田恵美子
瞑目の日がな一日鬼の子よ 21_岐阜 梅田恵美子
冬瓜の身の置き所なき世かな 23_愛知 稲垣雄二
・冬瓜も
鮎落ちて寂しき星となりにけり 23_愛知 稲垣雄二
無花果捥ぐ通学の子がおはやうと 23_愛知 臼杵政治
舟伏せて流木の浜秋夕焼 23_愛知 宗石みずえ
思ふこと一句にならぬ愚の秋よ 23_愛知 青沼尾燈子
まだ書けぬ便りのありて秋の暮 23_愛知 野口優子
名月や隣の瓦を照らしけり 24_三重 乾薫
・を、不要。
羽下げて枯れ木に休む蜻蛉かな 24_三重 乾薫
へそくりの場所忘れたり胡桃割る 26_京都 氷室茉胡
・忘れたる胡桃かな
池澄むや小魚ときに裏返り 26_京都 氷室茉胡
加減よき合はせ味噌玉秋日和 27_大阪 安藤久美
案山子の手かなしきまでに水平に 27_大阪 安藤久美
鹿の眼の中にも松の色変へず 27_大阪 古味瑳楓
俳句にも牛蒡引くにも筋肉よ 27_大阪 高角みつこ
バックパック開いたままなる夜長かな 27_大阪 高角みつこ
父の手を妹にゆずり鳳仙花 27_大阪 内山薫
・ゆづる
稔田を見たしと来しが苅田かな 27_大阪 内山薫
むき栗や皮むけぬ手のいとかなし 27_大阪 内山薫
大阪に都はありし今年米 27_大阪 木下洋子
・都の
豊年の力あふるる黄金波 27_大阪 澤田美那子
ひと筋の安堵の煙刈田中 27_大阪 澤田美那子
逆縁となるは一生温め酒 27_大阪 齊藤遼風
火の国に水豊かなり新ばしり 27_大阪 齊藤遼風
・火の国は
秋の海暮れてほのかに何の鳥 28_兵庫 加藤百合子
・ほのかや
月の宴はてたる後の月夜かな 28_兵庫 加藤百合子
どんぐりをにぎつたままで眠りをり 28_兵庫 千堂富子
とぎ汁は茶碗洗ひに今年米 28_兵庫 藤岡美惠子
敗荷や嘘と欺瞞の民主主義 29_奈良 喜田りえこ
御影堂やおん目の秋思深からむ 29_奈良 喜田りえこ
藁ぼつち太平洋を真正面 30_和歌山 玉置陽子
藁ぼつち夜はくれなゐの夢を見む 30_和歌山 玉置陽子
月浴びていやかぐはしきはざの稲 33_岡山 齋藤嘉子
新暦猫の写真が十二枚 37_香川 丸亀葉七子
声に出し秋明菊とはさみしき名 37_香川 丸亀葉七子
遠州の好みし茶碗秋の白 37_香川 元屋奈那子
月代やふところ深き山の宿 37_香川 元屋奈那子
石垣の石の温もり返り花 37_香川 曽根崇
祝ごと途絶えし日々や水引草 38_愛媛 豊田喜久子
括りたる新聞の嵩秋暑し 40_福岡 北井乃峰子
田の神のぼうと見てゐる田刈かな 42_長崎 川辺酸模
・ほうと
昼の虫虫歯きいきと穿らるる 42_長崎 百田直代
・上五ダメ。
コスモスや嫌はれ者になりきれず 44_大分 竹中南行
若き日の夫に会ひたし紅葉かな 44_大分 土谷眞理子
・会ひたる