「うたたね歌仙」の著作権は「季語と歳時記の会」に属します。
第六十二巻 殺掠の世界の巻
【初折の表】
発句 殺掠の世界の隅に涅槃かな 山本桃潤(春)
脇 麦青みゆく祖国追はれて 遊歩(春)
第三 潮に乗りはるか沖へと流し雛 善子(春)
四 海の底から聞えるピアノ 文(雑)
五 真夜中の地震に目覚めて月光に 松太(秋・月)
六 納屋で寄添ふ案山子の家族 松太(秋)
【初折の裏】
初句 笑ひすぎて南瓜大王爆発す 光枝(秋)
二 突然停電二百万世帯 善子(雑)
三 シェルターで誰か弾いてるバイオリン 善子(雑)
四 テレビ電話に新妻の顔 酸模(雑・恋)
五 ひまはりの大地さ迷ふ人の影 酸模(夏)
六 白骨照らす月光涼し 酸模(夏・月)
七 木から木へ飛ぶ密林の猿の声 善子(雑)
八 不死草の花いづこに香る 光枝(雑)
九 どれもこれも気に食はぬなり肖像画 美津子(雑)
十 春の嵐の靴二千足 菊子(春)
十一 本堂に善男善女花の山 森恵(春・花)
折端 生まれ出てはや蠅飛び回る 光枝(春)
【名残の表】
初句 戦争の乳房つかみて赤子泣く 淳子(雑)
二 高地高原罌粟花ざかり 菊子(夏)
三 ひと夏の麦わら帽子色褪せて 善子(夏)
四 錠下ろしたる背徳の小屋 りえこ(雑・恋)
五 蠟燭の炎ゆらめくマリア像 一郎(雑)
六 奇跡の泉白く氷れり 光枝(冬)
七 コサックの悲しみ唄ふコブザール 酸模(雑)
八 馬に恋せし乙女やあはれ 光枝(雑・恋)
九 からからと座敷わらしの遊ぶ声 文(雑)
十 早稲の香清し陸奥の旅 陽子(秋)
十一 復旧の新幹線を月照らす 光枝(秋・月)
十二 今年は早き富士の初雪 光枝(秋)
【名残の裏】
初句 アフリカを離れて象のケニア老ゆ 恭子(雑)
二 涙のごとく星はまたたく 松太(雑)
三 青春のひとりぼつちの太平洋 遊歩(雑)
四 ジンベエザメのよぎる春暁 雅子(春)
五 花に寝て夢の中まで花吹雪く 櫂(春・花)
挙句 鐘ものどかに阿弥陀微笑む 淳子(春)
七 光枝
五 善子
四 酸模
三 松太
二 菊子 文 遊歩 淳子
一 山本桃潤(発句) 美津子 森恵 りえこ 一郎 陽子 恭子 雅子 櫂(捌)
第六十一巻 お多福の巻
【初折の表】
発句 お多福の顔をめざさん初鏡 善子(春)
脇 声はれやかに若戎売り 淳子(春)
第三 双六の見えきて遠き花の京 陽子(春)
四 千石船の綱手重たし まき(雑)
五 鳥一声月夜の中洲ばうばうたり まさみ(秋・月)
六 母恋しやと鬼の子の鳴く 酸模(秋)
【初折の裏】
初句 幾秋の地獄を生きて拉致家族 善子(秋)
二 口先ばかりアベの八年 まさみ(雑)
三 妻の座にふんぞりかへる蟇 櫂(夏・恋)
四 微笑で人を殺す大奥 松太(雑)
五 喉鳴らす膝の上なるペルシャ猫 慧(雑)
六 オリエント急行雪蹴散らして 一郎(冬)
七 ベルリンの壁ひえびえと月照らす 杳平(冬・月)
八 あらおもしろの「愛の不時着」 櫂(雑)
九 花鳥の楽園なれど地雷原 陽子(雑)
十 轟きのぼる龍蒼天へ 遊歩(春)
十一 子も孫も花守となり長き髯 恭子(春・花)
折端 天の香具山けさ春の山 櫂(春)
【名残の表】
初句 白妙の袖ひるがへし大御神 淳子(雑)
二 鈴からからと巫女はわななく 櫂(雑)
三 家に帰ればコンビニの娘なり 杳平(雑)
四 クール便にて届く嫁鰤 光枝(冬・恋)
五 婆捨ても爺捨てもあり老人ホーム 恭子(雑)
六 屍の空を禿鷹が舞ふ 森恵(雑)
七 金髪のハイエナ喰らふ十五歳 美津子(雑)
八 靴音凍るアウシュビッツ収容所 一郎(冬)
九 廃線のレールがつづく草の中 森恵(雑)
十 猪駆けまはる被爆地の村 善子(秋)
十一 皓々と月光轟く防波堤 まさみ(秋・月)
十二 あした一輪つひの朝顔 善子(秋)
【名残の裏】
初句 父は残り脱出のバス国境へ 櫂(雑)
二 残虐プーチン極悪の相 菊子(雑)
三 伊勢丹は節操もなくキャビア・カフェ 櫂(雑)
四 猫なで声で恋猫の鳴く 光枝(春)
五 赤ん坊も父も丸顔花疲れ 文(春・花)
挙句 春のうちからならぶ空豆 櫂(春)
七 櫂(捌)
四 善子(発句)
三 まさみ
二 陽子 淳子 杳平 恭子 一郎 森恵 光枝
一 まき 酸模 松太 慧 遊歩 美津子 菊子 文
第六十巻 蛸壷の巻
【初折の表】
発句 蛸壺の寝息きこゆる良夜かな 酸模(秋・月)
脇 風も吹かぬに揺るる瓢箪 恭子(秋)
第三 大阿蘇の噴火すさまじ天地揺る 酸模(秋)
四 初乳にむせぶ小さきみどりご 森恵(雑)
五 うたた寝に姿くづして藍ゆかた 善子(夏)
六 横綱もするアロママッサージ 櫂(雑)
【初折の裏】
初句 悠久のナイルへ炎ゆる陽は落ちて りえこ(雑)
二 ネオンの灯るカフェ・フラミンゴ 櫂(雑)
三 オスプレイ頭上を過る基地の町 光枝(雑)
四 珊瑚の島は偏見まみれ 櫂(雑)
五 人間になれぬ人魚に海青く 善子(雑・恋)
六 かの雨の日の学徒出陣 雅子(雑)
七 ジヤングルに眠る白骨月涼し 酸模(夏・月)
八 阿弥陀如来のほのかなる笑み 櫂(雑)
九 無心する息子許すも三度まで まき(雑)
十 鶯餅の餡にこだはる 恭子(春)
十一 花守が命かけたる花ひらく 善子(春・花)
折端 天地創造忙しき春 松太(春)
【名残の表】
初句 澄みわたる闇をハッブル望遠鏡 櫂(雑)
二 雪でまつしろ禅寺の池 一郎(冬)
三 沢庵のしつぽをきざむ朝ぼらけ 恭子(冬)
四 真人間になれよと出所 ひろし(雑)
五 今宵また夫婦でチゲの屋台曳き 善子(冬・恋)
六 明けの明星白くかがやく 櫂(雑)
七 神の子を産んだだなんて言い張つて 尾燈子(雑)
八 「なんてしつこい女性週刊誌!」 櫂(雑)
九 タララッタッタ、Vespaに乗つて街をゆく 光枝(雑)
十 秋の彼岸の俄か坊さん 光枝(秋)
十一 山奥に湖をたたへてけふの月 光枝(秋・月)
十二 愛たつぷりと煮るラ・フランス 光枝(秋)
【名残の裏】
初句 カルカッタ物乞ひの手が四方より りえこ(雑)
二 がいこつたたき空也念仏 ひろし(冬)
三 蝕すすむ黒き太陽中空に 恭子(雑)
四 庭にぽつぽつ蕗の薹出づ 文(春)
五 今年こそ花の吉野に花見酒 酸模(春・花)
挙句 夢にうつつに朝寝百畳 一郎(春)
七 櫂(捌)
五 光枝
四 善子 恭子 酸模(発句)
二 りえこ ひろし 一郎
一 森恵 雅子 まき 松太 尾燈子 文