水俣忌の巻/初裏/八
五 拉致されてじき五十年月氷る 一郎(冬・月)
六 日本海に沈む太陽 光枝(雑)
七 歌ひつつ紅花を摘む乙女らは 陽子(夏)
八 乳房吸はれしことを昨夜に 松太(雑・恋)
次へ。
【付句候補】
◯
乳房吸はれしこと思ひつつ
△
千石舟が風待つ湊(善子)
✖︎
加賀友禅の衣装人形
年寄りねらふ緊縛強盗
あけすけ話に耳立ててゐる
神よと仰ぐウィグルの空
摺師の腕が冴える錦絵
縁起がいいぞ七星天道
富士の裾野の景懐かしく
その紅差して花嫁となる
夏ばてしたる修験の若輩
紅を落として浴衣の舞妓
笠置シズ子は今日も買ひ物
北前船の待ち遠しくて
化粧も知らず一人への恋
兵士となりて帰らぬ恋人
流れるプールでときめく二周目
愛しき人で胸は溢るる
遠き都へ思ひ募らせ