うたたね歌仙「花の山姥の巻」満尾
《連衆》玉置陽子、松井恭子、高橋慧、三玉一郎、川辺酸模、青沼尾燈子、安藤文、岩井善子、飛岡光枝、佐藤森恵、齊藤嘉子、西川遊歩、中野美津子、湯浅菊子、北側松太、長谷川櫂(捌)
二〇二四年四月九日~八月十一日
【初折の表】
発句 花巡るいつぽんの杖ある限り 黒田杏子(春・花)
脇 霞さすらふ山姥となれ 酸模(春)
第三 もくもくと噴煙を上げ富士笑ふ 一郎(春)
四 帰還の兵のあふるる甲板 恭子(雑)
五 夕暮れて自由の女神月照らす 文(秋・月)
六 悪夢ふたたびトランプの秋 文(秋)
【初折の裏】
初句 世界みな恋する星のごとくあれ 嘉子(秋・恋)
二 ミロのヴィーナス仰ぐ少年 遊歩(雑)
三 乙女らの恥毛かがやく水遊び 嘉子(夏・恋)
四 流れにをどる梅花藻の花 善子(夏)
五 裏金と知りつつ誰も逆らはず 陽子(雑)
六 見猿聞か猿言は猿の森 中野美津子(雑)
七 ダーウィンの進化の果ての月氷る 遊歩(冬・月)
八 地球呑み込む一本の蔓 一郎(雑)
九 怖い夢ばかり見てゐる大統領 松太(雑)
十 春の空よりヘリ墜落す 善子(春)
十一 八咫烏いつせいにたつ花の山 松太(春・花)
折端 夏待ちきれぬ京の鉾町 一郎(春)
【名残の表】
初句 千年の夢より弥勒まだ覚めず 酸模(雑)
二 無垢の心の鉄腕アトム 櫂(雑)
三 七色のマーブルチョコが散らばつて 恭子(雑)
四 海響もして昇る太陽 陽子(雑)
五 都知事選妖魚も雑魚も賑やかに 善子(雑)
六 なめくじ笑ふででむしの角 酸模(夏)
七 天竺はまだまだ遠し火焔山 松太(雑)
八 クビライ一家夏の都へ 櫂(夏)
九 睡蓮の花ひらく音幽かなり 菊子(夏)
十 秋の揚羽は風に破れて 光枝(秋)
十一 寝たきりの母を照らせよ今日の月 光枝(秋・月)
十二 目を見開けば蟋蟀の闇 光枝(秋)
【名残の裏】
初句 竪坑の金山ひとつ掘りつくし 恭子(雑)
二 蕭条として野良犬の町 松太(雑)
三 三度目の大戦まで二十八時間 櫂(雑)
四 春の潮の音ものすごき 櫂(春)
五 古里を探しただよふ花筏 一郎(春・花)
挙句 千年たたばみなレンゲ草 櫂(春)