古志仙台ズーム句会(2020年9月27日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
光太郎山荘の栗いただきぬ 宮本みさ子
白桃の深夜最も香を放つ 及川由美子
身の内の透きとほるまで鉦叩 谷村和華子
のぼさんとふと口にする子規忌かな 青村尾燈子
はらわたは十分苦し痩せ秋刀魚 上俊一
【入選】
秋寂ぶや荷台の犬の下がり眉 佐伯律子
教室の換気に乗じ秋の蚊よ 及川由美子
邯鄲や彼の世此の世を繋ぐかに 谷村和華子
こほろぎの鳴き継ぐ声の迷ひなく 佐伯律子
泥のごとく寝(い)ねて防人月を浴ぶ 石川桃馬
酔芙蓉今宵はどこの舞踏会 武藤主明
病葉のまだ枝にある九月尽 服部尚子
捨てられて空へ微笑む案山子かな 上俊一
赤ん坊触るるごとくに障子貼る 辻奈央子
桃よりもやはらかな手をつなぎけり 辻奈央子
・長谷川櫂選
【◎特選】
原発に追はれし峠あきあかね 甲田雅子
【特選】
我が庭は虫の楽園草茫々 石原夏生
秋風やまた解体の屋根ひとつ 金谷哲
泥のごとく寝(い)ねて防人月を浴ぶ 石川桃馬
夕べ来て今宵も来たるかまど虫 甲田雅子
蒼くあをく果つることなく鰯雲 谷村和華子
夏と秋ごちやまぜにして野分過ぐ 辻奈央子
この村は今も掛稲天日干 伊藤寛
豆ご飯だだちや豆とは贅沢な 伊藤寛
【入選】
秋寂ぶや荷台の犬の下がり眉 佐伯律子
鰯雲空しさの胸うめつくす 川村杳平
刈田道日暮れて遠き猫の鈴 伊藤寛
ママママと裸婦像指す児秋うらら 阿部けいこ
身の内に秋燈一つ灯しをり 武藤主明
戸を開けて落雁冷ます秋彼岸 宮本みさ子
月山の月より白し蕎麦の花 川辺酸模
九月尽病葉のまだ枝にある 服部尚子
剃刀の替刃滑らか秋の朝 川村杳平
赤ん坊触るるごとくに障子貼る 辻奈央子
あらばしり飲み比べたる会津蔵 長谷川冬虹
第二句座(席題=朝寒、敗荷、さつま芋)
・長谷川冬虹選
【特選】
声出せばくづれさうなり破れ蓮 辻奈央子
さつまいも旗のごとあげ園児かな 宮本みさ子
朝寒や除染土運ぶうなり音 金谷哲
【入選】
敗蓮や遠く逃れし友何処 金谷哲
破れ蓮の水の鉄色夕暮れて 佐藤和子
戦場のごとき水面や破蓮 森凛柚
箸入れて皮ぱりぱりと焼秋刀魚 長谷川櫂
やれはすやときに顔出すかいつむり 那珂侑子
甘藷食ふ妻とソーシャルディスタンス 武藤主明
・長谷川櫂先生選
【特選】
破れ蓮ただ一葉となりにけり 青沼尾燈子
戦場のごとき水面や破蓮 森凛柚
敗荷の沼も見飽きて避難人 宮本みさ子
戦なき国に敵をり敗蓮 森凛柚
日と風と雨と戦ひ敗蓮に 森凛柚
【入選】
敗蓮や遠く逃れし友何処 金谷哲
朝寒の海に白波露天風呂 伊藤寛
破れ蓮に語りかけたる子どもかな 辻奈央子
敗荷となりて内閣総辞職 長谷川冬虹
甘藷すら食えぬ時代を忘れまじ 石原夏生
声出せばくづれさうなり破れ蓮 辻奈央子
朝寒や食後二錠の降圧剤 鈴木伊豆山
朝寒のスリッパを脱ぐ岩湯かな 宮本みさ子
妹と分けて頬ばるふかし芋 谷村和華子
破れ蓮になりてはじめて空に立つ 服部尚子
やれはすやときに顔出すかいつむり 那珂侑子
朝寒や猫のぬくみを確かめむ 佐伯律子
さつま芋ほどよき酒の肴かな 青沼尾燈子
一族の菩提寺しんとやれ蓮 甲田雅子
朝寒や起きてエビネの鉢をみる 服部尚子
あの頃の弁当箱の藷の端 鈴木伊豆山
薯掘りの土まみれなる軍手かな 佐伯律子
朝寒やマスクで隠す無精髭 武藤主明
スーパーに秋刀魚とかぼす隣り合ふ 佐藤和子
朝寒や犬叱る声遠くより 青沼尾燈子
そろそろか八百屋にひらく焼きいも屋 那珂侑子