古志金沢ズーム句会(2020年9月20日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
白山の風より白し新走 山本桃潤
月光のいろとも知らで茗荷咲く 松川まさみ
空四角水も四角や柳ちる 長谷川櫂
奥能登の風が仕上げし柚餅子かな 齋藤嘉子
生も死も幻であり蚯蚓鳴く 土屋眞理子
秋風の吹き初むるころ鴨居玲 清水薫
束の間に様変はる世ぞ露走る 篠原隆子
青竹のなごりの青や崩れ簗 近藤沙羅
いつの日か歌を聞かせよ蛍草 清水薫
くろがねの一念葡萄の房重し 趙栄順
どぶろくの夜や鳥になり虫になり 宮田勝
口中に湖ひとつマスカット 玉置陽子
【入選】
いま頃は良寛さんと温め酒 酒井きよみ
ひとひらの月の剥落下り鮎 篠原隆子
亡き友の集まつてゐる大花野 氷室茉胡
刈田はや里の童と憩ひけり 花井淳
蔓たぐり天地開けてきたりけり 齋藤嘉子
心棒が勝負の鍵よ木の実独楽 氷室茉胡
鬼となり色なき嶺の鬼あざみ 梅田恵美子
黙々と働く母よ韮の花 齋藤嘉子
あぶれ蚊のこゑも水澄むもののうち 篠原隆子
外来種増えて頭上も虫時雨 密田妖子
とんぼうの羽根きらりまた星生まる 稲垣雄二
雨風に揉まれしいのち花野かな 梅田恵美子
和紙といふあたたかきもの星祭 高橋慧
杖振りて二人でめざす花野かな 梅田恵美子
大拙の白き世界へ昼寝覚 長谷川櫂
裏山に柴焚く煙蛇笏の忌 趙栄順
子育ての刻を遥かに障子貼る 氷室茉胡
戦争はかくも身近よへちま棚 篠原隆子
籾がらは林檎のほてり癒しけり 花井淳
捨てる人戻る人古里は秋 酒井きよみ
こころざし千里を跨ぐ流星群 宮田勝
いちじくを割れば青空しみいりぬ 長谷川櫂
幸ひは虫の音を浴び白ワイン 清水薫
ひようひようと秋深めゆく句集かな 酒井きよみ
ペン立てのペンの一本秋扇 稲垣雄二
・長谷川櫂選
【特選】
白山の風より白し新走 山本桃潤
奥能登の風が仕上げし柚餅子かな 齋藤嘉子
ゆううつや頭に響く轡虫 土屋眞理子
胃薬を酒で飲み干す敬老日 中野徹
いつの日か歌を聞かせよ蛍草 清水薫
口中に湖ひとつマスカット 玉置陽子
秋暑しマグマの如くジャム煮ゆる 密田妖子
新藁に産み落とされし卵かな 稲垣雄二
風紋を消してはむすびゆく秋ぞ 安藤久美
【入選】
鉢植ゑの無花果一つづつ熟るる 佐々木まき
新豆腐貧しきけふを労りて 松川まさみ
星凉し生きた証の一句集 酒井きよみ
花野てふ心に光差すところ 高橋慧
ひとひらの月の剥落下り鮎 篠原隆子
玄関の大壺にあふれ水引草 近藤沙羅
生も死も幻であり蚯蚓鳴く 土屋眞理子
灯して水昏くせり秋蛍 趙栄順
青竹のなごりの青や崩れ簗 近藤沙羅
きららかや風を映して秋の水 松川まさみ
秋の灯やずしと楸邨全句集 宮田勝
杖振りて二人でめざす花野かな 梅田恵美子
鯊大漁南蛮漬に骨煎餅に 鬼川こまち
捨てる人戻る人古里は秋 酒井きよみ
第二句座
・鬼川こまち選
【特選】
良妻にならずじまひや秋の風 氷室茉胡
里山の風を離さず吾亦紅 玉置陽子
倒るるにあらず身を伏す吾亦紅 佐々木まき
獣らはかたまり眠る秋の風 安藤久美
秋風の骨あるごとく刺さりけり 趙栄順
秋風や帆をあかあかと沖の船 篠原隆子
秋風をはらみて少女ペダルこぐ 梅田恵美子
【入選】
秋風や箔打ちの音ひもすがら 齋藤嘉子
吾亦紅一乗谷の風に伸び 宮田勝
秋風や聖母昇天仰ぐ窓 玉置陽子
露天湯へ一本道や吾亦紅 梅田恵美子
太刀魚の抜身ぺらぺら秋の風 玉置陽子
小鼓のととんとんとん秋の風 宮田勝
つつましく珠洲焼に挿す吾亦紅 中野徹
時刻表めくりし旅や吾亦紅 高橋慧
秋風や不漁を嘆く能登の人 清水薫
秋の風百石武士の屋敷跡 清水薫
秋風にあらがふ葛の裏表 佐々木まき
・長谷川櫂選
【特選】
秋風や箔打ちの音ひもすがら 齋藤嘉子
吊るされてほてる玉葱秋の風 稲垣雄二
加賀手鞠色なき風に遊ぶかな 齋藤嘉子
【入選】
秋風や紫煙と別れ三十年 清水薫
川岸のこんなところに吾亦紅 近藤沙羅
良妻にならずじまひや秋の風 氷室茉胡
露天湯へ一本道や吾亦紅 梅田恵美子
遠目にもやさしき色や吾亦紅 梅田恵美子
干瓢を揉んでほぐすや秋の風 安藤久美
秋風や山の神くる吾の庭 土屋眞理子
小鼓のととんとんとん秋の風 宮田勝
獣らはかたまり眠る秋の風 安藤久美
茶巾干す水屋にひそと吾亦紅 花井淳
秋風や不漁を嘆く能登の人 清水薫
秋風や帆をあかあかと沖の船 篠原隆子
錻力屋に弾けるひかり秋の風 花井淳
吾亦紅ふたりで歩く風の道 篠原隆子
秋風にあらがふ葛の裏表 佐々木まき