古志鎌倉句会(2019年11月10日)
兼題=展宏忌 席題=たくあん 、インバネス
☆特選
柊を展宏さんの花とせん 美津子
美しき光となりてゆく秋ぞ 栄順
鮟鱇が時折動く我が心 麒麟
特選
月光を浴びて遊ぶやインバネス 麒麟
海鼠にも辛酸の道ある如く 麒麟
点滴の管排尿の管霜一夜 伊豆山
秋出水父祖の苦闘の水位標 伊豆山
亥の年の亥の月亥の日亥の子餅 和華子
人の世の人分けゆくやインバネス 幸三
水鳥のまた羽ばたくや夢の中 靖彦
海眠る底に鮟鱇眠りけり 遊歩
吾を産む母熱かりき神無月 怜
オルゴール秋の光のやうに鳴る 伸子
唇に冬きたりけり展宏忌 光枝
かたはらに伊勢物語展宏忌 ひろし
母の杖振らば懸からん秋の虹 秀子
粛々と乾びてゆきぬ鵙の贄 道子
入選
かかげたる花はまぼろし枯蓮 宣行
燗酒に海の香りや展宏忌 宣行
祝ひとて沢庵一樽抱へ来し 宣行
我が身まだ実り足らざる熟柿かな 宣行
雪降ると競うて大根漬けにけり 光枝
人形町二階の窓に柿吊す 光枝
荒れ荒れて萩うつくしや展宏忌 光枝
人肌てふことばありけり展宏忌 光枝
祖母の石曾祖母の石大根漬く 美津子
けふもまた鴨を見に来しインバネス 美津子
けさ冬のぎらりと青し鴨の羽 美津子
冬すみれけふお祝ひに一つ咲く 美津子
しぐるるや翁に似たる龍太の書 秀子
天平の碁石くはへて小鳥来る 秀子
天平の秋日をここに瑠璃の碗 秀子
私より先に眠りし蒲団かな 一郎
しづけさになるまで沈む鯨かな 一郎
暗躍の大陸浪人インバネス 靖彦
厨房の火力全開初しぐれ 靖彦
たくあんや糀に染まる母の指 英樹
ずんずんと天下御免の熊手ゆく 英樹
仏門に生れてふるまふ十夜粥 伸子
口切や真白き奉書白き筆 伸子
考へのまとまらぬまま柚子湯かな 益美
たくあんをかむ音ひびく電車かな 益美
竜の玉世の薄情をわが薬 怜
待ちかねし足音高くインバネス 怜
鵙の贄いつの間にやら無くなつて 道子
老僧の筆の自在や大海鼠 かよ
香港の一団となるマスクかな 遊歩
まぼろしの庵の軒の吊るし柿 幸三