古志月山月見句会(2019年9月14、5日)
【特選】
名月に恋する蟇の声ならん 英樹
口あけて地獄見せゐる蓮の実 りえこ
ゆきゆきてアジアの奥に月見かな 二本
月山の神も老いたり草虱 英樹
越えてゆく山も幻けふの月 一郎
ひとすぢの水にしたがふ秋思かな 美津子
月山の月の光を草枕 善子
草々の朽ちゆく中に泉あり 善子
月の山ひとつのこして月沈む 一郎
死の山の月山指して鳥渡る 遊歩
浮草の紅ゆるる水の秋 光枝
熊の母皮となりてもおそろしや 玲子
はるかなる月へと歌仙巻き上げる 一郎
ときをりは蛇となりけり月の僧 英樹
露の玉即身仏になほ遠し 二本
【入選】
けふ月の山はこの世のものならず 英樹
六十里越えて月山そばの花 光枝
ありがたや水を出羽の新豆腐 二本
恐ろしき顔して鮭の遡り来る 善子
冷や冷やと歯にしみとほる山の水 二本
月山の天晴な空小鳥くる 松太
月山の水の巡れる棚田かな 玲子
山形はさすがに稲の香りかな 英樹
隠沼に黒蛇棲まふ月の山 玲子
月山の道はこれから秋あかね みさ子
おもしろや月追ひかけて月の山 二本
ねまるなり月の光にまみれつつ 二本
病めるままの福島の山盆の雨 雅子
生きかはり死にかはりては月あふぐ 英樹
秋天の真中にあり月の山 二本
俳諧や一歩もひかぬ月の道 遊歩
千里来てけふ月山の月の中 玲子
月の宿せせらぎの闇あるばかり 慧
月山の芋のさみどり月の膳 玲子
まだよべの月を見てゐる露の玉 一郎
森閑と月の沈めり水の底 慧
芋の子のわれら照らせよけふの月 美津子
水音はくだけんばかりけふの月 美津子
ひらひらと月の光の茸かな 英樹
橅の森秋の日傘の見えかくれ 光枝
冷やかや橅の林の陰の神 二本
月山をたまげさせてや鳥威し 松太
月山の月のしづくかましら酒 松太
生き死にの石積まれあり月の山 英樹
けふよりは道なき道を露の玉 一郎
毒茸の美しかりし月の山 英樹
河骨もまた月光の破片にて 英樹
十六夜や月山の宿寝に入りぬ みさ子
月山を前に座りぬ露の玉 二本
まぼろしの鏡のやうやけふの月 玲子
せせらぎの音村中に月の山 孝代
月山や空いつぱいにうろこ雲 りえこ
枝豆や半歌仙ではあきたらず 美津子
けふの月待つ間もたのし歌仙かな 一郎
半歌仙「アジアの奥の月見の巻」
2019年9月14日、月山「まいづる屋」
<連衆>二本、遊歩、りえこ、英樹、一郎、美津子、光枝、善子、玲子、慧、櫂(捌)
・初折の表
発 ゆきゆきてアジアの奥に月見かな 二本
脇 台風一過青空市場 遊歩
三 新米も水も薪も積み込んで 二本
四 深みにぬかる象の前足 りえこ
五 炎天に石積み上げてピラミッド 櫂
六 金庫破りはヘヤピンひとつ 英樹
・初折の裏
一 爆音を轟かせ去るランボルギーニ 一郎
二 くどき文句は今日もアドリブ 英樹
三 相方を尻に敷いてる漫才師 二本
四 星もきれいな通天閣よ りえこ
五 凩におでんの屋台軋ませて 英樹
六 定年の日の花束重し 美津子
七 踏破せんおくのほそ道六百里 光枝
八 月の涼しき水の大垣 二本
九 時々は遊びに来たれ山の猿 善子
十 黄金まばゆき涅槃図の寺 英樹
十一 月山の雪まだ残る花吹雪 英樹
十二 庄内平野一面の春 遊歩