古志東北三県合同盛岡句会(2019年8月18日)
・長谷川櫂選
【特選】
吾作り吾食す茄子日に三度 玲子
ときどきは会話に入る蠅叩 てい子
縄文の炎の中を秋の風 光枝
フクシマで被曝八月十五日 みさ子
冷房やふらふら白内障の犬 杳平
いにしへの大河の跡や塩灼くる 翠
なまぬるき風に転がる蝉の殻 律子
かなかなや水を欲しがる原爆図 主明
出棺の母が降らせてゐる慈雨か 杳平
・
球児等の帽子のつばの日陰かな けい子
離宮へと葡萄の棚の天蓋す 翠
足裏に灸点あまた秋に入る 光枝
【入選】
赤飯の蒸し方伝授盆用意 エミ
夏の月コーラン置ける書見台 翠
風呂敷の面影はあり柿の帯 みさ子
打水に蝶の来てをり捕虜の墓 翠
勝越しのボール輝く夏の空 雅子
西瓜そと叩けば氷の音したり てい子
米櫃に米ぱらぱらと盆の月 律子
夏の果て漬物石も塩をふく てい子
眼病に効くと伝へて草清水 けい子
朝顔や塩壺に塩山をなす 由美子
生身魂あくまで極むマイペース 光枝
この一石のみがふる里墓洗ふ 由美子
松焚いて長子の背中魂迎へ 光枝
・
山百合や同級生の墓を訪ふ 杳平
パン生地が声を発する今朝の秋 由美子
片蔭の一切無くて米所 けい子
尺蠖の測り直してゐるところ 主明
猛暑日は茶杓二杯の抹茶かな けい子
鍋の耳ことりゆるびぬ今朝の秋 由美子
・照井翠先生選
【特選】
この一石のみがふる里墓洗ふ 由美子
風鈴のしんと戦争ありにけり 櫂
松焚いて長子の背中魂迎へ 光枝
かなかなや水を欲しがる原爆図 主明
・
涼しさは一切れの闇明けがらす 櫂
蚊太るおそろしき血の胎みせて みさ子
瓜の花戦争の世のほか知らず 櫂
【入選】
村中が楽屋さながら村歌舞伎 主明
盆棚のぶよぶよの桃冷やしけり 杳平
若竹の突き抜く部屋に戻りたし みさ子
夏氷噛みてとことん句とあそぶ みさ子
戦争があの日通りし稲の道 櫂
主語のなき家族の会話冷奴 主明
・
ドア叩く力の余り秋暑し 光枝
独り身の娘の帰省遠花火 杳平
さはさはと盆径の風亡母のごと 雅子
鍋の耳ことりゆるびぬ今朝の秋 由美子