古志三島句会(2019年7月15日)
15句投句
【特選1】
かなしみのまだ濡れてゐる洗い髪 一郎
告白に偽りのなき素足かな 一郎
思つてた人にはなれず金魚飼ふ 一郎
金魚鉢よりも大きな金魚かな 一郎
江戸切子箱より出でて吾を照らす 桂久
杖ついてどうにか潜る茅の輪かな 克実
差し入れし手の透けてゆく清水かな かよ
楸邨の青き山河に分け入りぬ 二本
【特選2】
水飯をおろかな顔で啜りけり 一郎
さみしさの水の音聞く水馬 一郎
夏帽子頭の上で風になる 一郎
黄昏の人待ち顔の団扇かな 桂久
捩花の夢見るやうにねぢれけり 佳江
炎昼や蛇流れゆく堀深し 紀子
【入選】
母老いる北国の夏愛でながら 通江
つぎつぎに木槿を咲かせ二人かな 通江
カンナ咲く源兵衛川のむこう岸 通江
くもる日のぼんやりした顔川蜻蛉 通江
楽しくて伸び伸び木々は梅雨のなか 通江
雨蛙気配を消して草の中 通江
少年の大岡信水あそび 寛子
鮠はやし梅花藻の花すりぬけて 寛子
藻の花の見ゆる小さき橋渡らん 寛子
清らなるもののはじめや泉湧く 寛子
翡翠の一閃大いなる静寂 寛子
故郷の風の匂ひを水団扇 かよ
黒南風や釣人しんと川の中 かよ
鹿児島のぼつけもんの血生身魂 かよ
深海に言葉を探す海月かな かよ
梳いてやる髪青々と浴衣かな かよ
優曇華や坂口安吾堕落論 ちよこ
たくましき百日草の月日かな ちよこ
止みさうな雨の音聞く合歓の花 ちよこ
更衣はるかな波を聞きながら ちよこ
畑一枚玉葱を陽にころがせり まさこ
波引きて小蟹さばしる潮だまり まさこ
藷の蔓もつれしままに裏返す まさこ
落ち梅を並べ置きしは誰ならん まさこ
いかづちのころがつてゆく富嶽かな 二本
巻狩のほてりを冷す泉かな 二本
泡盛や口に含めば花開く 二本
大昼寝宇宙の声の聞こえ来る 二本
古の星の光やかたつぶり 空
虹色の光を放つなすびかな 空
遠山に雲湧くところ青胡桃 空
青梅の底をさまよふだんご虫 美智子
水うまき三島句会や冷し瓜 美智子
湧き水は母乳のごとき梅花藻よ 美智子
蚊遣りしてかはせみを待つ男かな 楓
うなぎ焼く匂ひも梅雨の三島かな 楓
今日咲きし花を違へず黒揚羽 紀子
雨粒のこぼれ落ちたる茅の輪かな 紀子
夏河を汽笛とともにこゆるなり 克実
すき間なく服吊り下がる梅雨の頃 克紀
転職の息子の朝よ夏燕 桂久
独り言しづかに沈む金魚かな 一郎