「古志」宮城句会(東北3県合同、2019年6月16日)
・長谷川櫂選
*特選
揚羽蝶少年の日を飛びまはる 福
翡翠は夏の秘密を知ってゐる 福
出羽三山詣でて涼し被曝の身 みさ子
泥染みの形見の浴衣風が着る 翠
川底に鮎裏返るひかりかな 主明
朝の雨花茄子の黙解きにけり みさ子
涼しさや棹一本の船頭歌 光枝
サイダーの弾くる泡の寂しけれ 光枝
*入選
如何せん孫の土産の蛇の衣 福
抜け出せぬ被曝地衣替へてもや みさ子
病み夏蚕見えざる糸を吐くらしく 翠
花屑を付けて拗ねたる胡瓜かな 主明
夏茱萸に口潤しぬ瑞巌寺 秀郎
織るといふ祈りありけり青山河 光枝
紅バラに溺れて歪む水の玉 みさ子
梅雨冷や延命拒否のなぐり書き 律子
夕焼や怒涛は天を蹴るごとし 秀郎
コーヒーの豆挽く音や梅雨に入る けいこ
南風喉まで見せて鯉の口 けいこ
のうぜんの花かけのぼる家一つ 福
夫がゐた父母がゐた花林檎 玲子
ひと雨のあとよく香る花みかん てい子
・照井翠選
*特選
オフェーリアの棺としたし花氷 櫂
田植果て海につながる水明り 雅子
羅や流るるやうに席を立ち けいこ
夕焼や怒涛は天を蹴るごとし 秀郎
蟻の列ふいにそぞろになりにけり 律子
もの植ゑぬ田に水光る走り梅雨 夏生
右腕のなきマネキンの梅雨入りかな 律子
*入選
揚羽蝶少年の日を飛びまはる 福
抜け出せぬ被曝地衣替えてもや みさ子
緑陰に入りて瀬音の絶え間なく けいこ
昼寝してそのまま五十億光年 櫂
織るといふ祈りありけり青山河 光枝
夏の山削られて又夏の山 光枝
紅バラに溺れて歪む水の玉 みさ子
青梅やまだ天中に透ける月 律子
更衣また旅に出る寅次郎 福
舌ちろろ蜜舐めるごと青大将 玲子
指つけて流れに鮎を走らせる 福
広がって夢の中まで青水輪 櫂
茂る杜一点明るし古鏡 エミ
涼しさや棒一本の船頭歌 光枝
夫がゐた父母がゐた花林檎 玲子