東北三県合同句会(須賀川)2019年4月21日
長谷川櫂選(〇特選)
・第一句座
〇春泥に顔を突込みアンネの死 照井翠
〇まづ泥を吐きて咲きたる椿かな 照井翠
〇関越えん世の知らぬ花さがすべく 藤英樹
〇安達太良の鬼の寝床も花の塵 藤英樹
〇代掻きの唄もあらんやみちのくは 齋藤嘉子
〇鳥笛や春にもありて原爆忌 佐川あけみ
〇五十二の廃炉茫然花の声 喜田りえこ
〇春ともし一夜をかけてまたたけり 鈴木光影
〇風光る光の中に干す布巾 阿部けいこ
〇遠山は白き月山花千本 石原夏生
〇三月の濤泣き崩る相馬節 武藤主明
春寒やむかし魚でありしこと 鈴木光影
西洋の石東洋の石余寒 鈴木光影
王たらん金の花粉の牡丹かな 長谷川冬虹
谺する原生林の春の声 長谷川冬虹
須賀川は古き家並に燕来る 藤英樹
死に死にて死に死にて咲く桜かな 藤英樹
天解けてどつと山田の雪解風 佐藤光枝
今年また転生の蝶来りけり 及川由美子
晩霜にタイヤ燻らす伊達郡 佐藤和子
これほどの花を見てこそ花疲れ 石原夏生
百姓の大地すてゆく仏生会 高田春男
水が水追ひ越す渓や花辛夷 武藤主明
・第二句座
〇たましひも尻据ゑて見る桜かな 照井翠
〇拾ひあぐ泣いてるやうな桜貝 甲田雅子
〇風そよぐほどになりけり藤の房 齋藤嘉子
〇紅の牡丹を吸ふや鯉の口 喜田りえこ
〇須賀川の春かみしめるお菓子かな 喜田りえこ
田水張る一枚づつを見て廻る 佐藤光枝
赤いくつ春のかたみとなりにけり 佐藤光枝
瀧桜飛沫一滴たまはれり 鈴木光影
みちのくの空の高みやいかのぼり 佐川あけみ
ふきのたう習ひ始めのキリル文字 長谷川冬虹
磐梯山大き笠雲梨の花 石田てい子
原発忌三方に落雁を盛る 宮本みさ子
照井翠選(〇特選)
・第一句座
〇天網の洩らす光や滝桜 永瀬十悟
〇根の国より広がる双手滝桜 永瀬十悟
〇本尊に真向ひて咲く桜かな 永瀬十悟
〇花びらの空にも吸はれ花吹雪 甲田雅子
〇千年の桜は闇を力とす 宮本みさ子
つばくらめ乙字ケ滝を乱麻なり 藤英樹
太角を落としゆく鹿振り向かず 佐川あけみ
亀鳴くや音と匂の消ゆる世に 喜田りえこ
梅咲くや冷たきものに猫の鼻 及川由美子
花吹雪幹のもつとも昏むとき 及川由美子
王たらん金の花粉の牡丹かな 長谷川冬虹
蛇穴を出づ風音に耳すます 石田てい子
しづかなる光降る日や初蝶来 佐藤和子
古関址や雨に烟りの花馬酔木 神永秀郎
春の虹大海原に足をかけ 宮本みさ子
三月の濤泣き崩る相馬節 武藤主明
水が水追ひ越す渓や花辛夷 武藤主明
・第二句座
〇この国にみちのくのある桜かな 藤英樹
〇赤いくつ春のかたみとなりにけり 佐藤光枝
〇田の神の使ひとなりて春の雪 佐藤光枝
〇大牡丹水の翼をつつみおり 高田春男
復旧の漁港に幟風光る 永瀬十悟
お灸据ゑバラの棘めく日永かな 及川由美子
水の精皮一枚の白牡丹 高田春男
指揮棒に転校生をむかふ花 高田春男
末黒野に壮年の父立つてゐる 佐藤和子
走り根の掴む大地や春嵐 石田てい子
永瀬十悟選(〇特選)
・第一句座
〇関越えん世の知らぬ花さがすべく 藤英樹
〇散り果てて安らいでゐる桜かな 藤英樹
〇酔うてけりさくらさくらの福島に 齋藤嘉子
〇千年の桜は闇を力とす 宮本みさ子
あるときは鬼となるなり瀧桜 藤英樹
晴天に名のりいでたる揚雲雀 及川由美子
梅咲くや冷たきものに猫の鼻 及川由美子
ぬくぬくと種蒔く人を眺めゐる 石原夏生
病室の窓の広さの花見かな 阿部けいこ
置き去りのフレコンの山花の山 佐藤和子
春光を紡ぐからむし織の里 武藤主明
桜見に戻りて来たる冬帝 武藤主明
・第二句座
〇公園に戦後ありけり八重桜 佐藤光枝
〇瀧桜飛沫一滴たまはれり 鈴木光影
〇末黒野に壮年の父立つてゐる 佐藤和子
この国にみちのくのある桜かな 藤英樹
野焼の穂猛るや山と川の間 宮本みさ子
煤色の弁慶に挿す小鮎かな 佐川あけみ
羊の毛刈る虎刈りもいいところ 佐伯律子
田祭の苔むす碑文に「天の水」 齋藤嘉子
春光を手元に集む茶筅かな 武藤主明