古志鎌倉句会(2019年4月14日)深沢生涯学習センター
席題=蜃気楼 八十八夜
【特選】
海市よりいまも帰らぬ船一つ 道子
著莪が咲くや山の上まで墓となり 道子
名をつけてうちの子となる子猫かな 道子
遠き日のさざめきにとく粽かな 美津子
春愁の真上に白し昼の月 美津子
長生きのその先知らず桃の花 菊子
老象の目小さき春愁ひ 菊子
使ひ込む茶筒百年樺桜 伊豆山
挿し木してまた千年を滝桜 伊豆山
肩車して蜃気楼見せてやる 秀子
花冷や酒もてしめす死者の唇 秀子
力ある種となれよと浸しけり 靖彦
タンカーのなほ呑まれゆく海市かな 靖彦
花冷の日がな一日猫眠る 康子
かはほりも少し酔ったり花の闇 英樹
今年また四月五日の花の冷 光枝
富士にわく産湯死に水春の水 遊歩
生き死にの説法中や遠蛙 麒麟
【入選】
あかあかと燃えながら死ぬ椿かな 伸子
春風に持ち上げらるるバレリーナ 伸子
大仏の胸をふぶくや山桜 光枝
ぷつと吐く梅干しの種春愁ひ 光枝
著莪なだれ咲く極楽寺切通 道子
花びらに手足ひろげて亀の浮く 道子
大鍋に塩炒る八十八夜かな 秀子
心早やつま先だちて巣立鳥 幸三
花冷のあとあたらしい朝が来る 一郎
良き種ははやも沈めり種浸し 靖彦
くらくらと炎の如し山つつじ 康子
大岡忌遺影の奥を飛花落花 遊歩