古志東北三県合同句会(平泉、2019年2月9日)
*長谷川櫂選
【特選】
ぎんどろの枝のひと掃き冬銀河 主明
墨捏ねて奈良は永遠日脚伸ぶ 光枝
縦横に雪山うれし獣跡 光枝
福豆を撒くも拾ふもひとりかな てい子
駆け出して子ら鳥となる春を呼ぶ 由美子
もう春の来てゐるみどり草の餅 てい子
浜近き冬鳥の声魂を呼ぶ 雅子
蓬生や荒びの土の相馬郷 みさ子
【入選】
どの顔も介護の話のつぺ汁 冬虹
耕運機音弾ませて春を呼ぶ てい子
九条を投ずるなかれどんど焚く 冬虹
うち破る余生求めん桜榾 光枝
白鳥の帰る声聞く厨かな けいこ
雪礫ほどの弁慶ずんだ餅 主明
仏壇の花のしをるる寒さかな けいこ
耳萎えの右脳さまさん春の風 雅子
除染土の土に還れぬまま凍つる 主明
口々に大往生と蕪煮る 由美子
雪山にタシケント憶ふ人の逝く けいこ
バーボンのロックを呷る寒しばれ 杳平
忌明けや鰤のぶつ切りあら汁に 由美子
冬の鳥砲弾となり越えゆきぬ 翠
遺されて暖炉の前の揺られ椅子 翠
夏生いま入院中や冬籠 冬虹
春きざす漬物石の傾ける てい子
とろろ蕎麦ぬくし秀衡塗の椀 杳平
まんさくや一茶通れる道ならん 光枝
とろとろと斑雪野を往く一両車 杳平
牡丹の根こそぎ切られても芽吹く みさ子
永き日のそちこち軋む古刹かな 光枝
二股に分かるる雪の月見坂 主明
矢ともなり弓ともなりて雁帰る 主明
平成の名残りの雪や光堂 冬虹
*照井翠選
【特選】
白鳥を抱きて眠る魂あらん 櫂
初夢やバンクシー画の表門 雅子
ぎんどろの枝のひと掃き冬銀河 主明
薄雪は螺鈿のごとく光堂 冬虹
判官の義臣白鳥ども百羽 杳平
銀河鉄道冬帽子忘れさう 杳平
閼伽桶の薄氷光るしじまかな 雅子
春きざす漬物石の傾ける てい子
鳥帰る雲より白き光帯び 由美子
【入選】
黒楽の茶碗の泡や春の夢 みさ子
白鳥の溶けてしまひぬ水たまり 櫂
この国のかたちに沿うて春の川 奈央子
金堂を支へてゐたる霜柱 主明
武蔵坊息吹きかけし山氷る 櫂
ぎんどろの木は銀色に氷りけり 櫂
雪礫ほどの弁慶ずんだ餅 主明
潮馴れの松に静かや浜の雪 雅子
魂のずぶ濡れとなる春田かな 櫂
束稲は裸で空に眠る山 櫂
いつか去る氷の上の影法師 櫂
さざ波の光は無限春の海 てい子
闇汁や炉火に煤けて自在鉤 雅子
玻璃盃霞のごとくにごり酒 冬虹
まんさくや一茶通れる道ならん 光枝
やがて咲く光の花や白障子 櫂
歳月のこぼるるばかり春の月 光枝