古志東北合同福島句会 2018年11月17日
・長谷川櫂選
【特選】
寒牡丹命ひとつの姿かな 藤英樹
淋しくて我を呼びしか寒牡丹 藤英樹
嘴で一突き柿の甘くなる 葛西美津子
蓑虫も二つ並べば恋心 石原夏生
俤を拾ひ集めて牡丹焚く 武藤主明
*
雑木山日がなどこかに木の実降る 及川由美子
あなたから成るしら露もこの霧も 照井翠
嫁いびる唄も懐しあんこ餅 甲田雅子
寒牡丹みちのく人の如く佇つ 藤英樹
【入選】
締められて雪吊の縄匂ひたつ 藤英樹
玄関に押し入つて来る枯野かな 藤英樹
雪ちらちら汁粉ふつふつ大鍋に 葛西美津子
地獄見し人に大きな冬日向 葛西美津子
この先はかの三日月湖冬の虹 葛西美津子
その鬚の翁さびたる鯨かな 葛西美津子
雨後の日差は濃ゆし吊し柿 茂木泉
須賀川や石切唄の冬紅葉 阿部けいこ
リハビリの絵筆が写す烏瓜 阿部けいこ
今年藁神の器を作らんと 阿部けいこ
握手して思はぬぬくさ山眠る 及川由美子
蒟蒻玉値切り小切りや原発禍 神永秀郎
この風を待ち侘びたるや返り花 石田てい子
道草のやうにゆらゆら冬の蝶 石田てい子
汚染土の山なす闇や蚯蚓鳴く 石田てい子
戦着を縫ふか夜なべの菊人形 武藤主明
武士だけの戦にあらず菊人形 武藤主明
火吹竹突然闇の隙間より 武藤主明
*
ユリの木の一日にして裸かな 阿部けいこ
故郷は桜紅葉の母校かな 石原夏生
艶やかな釉薬ならん牡丹灰 武藤主明
・照井翠選
【特選】
炎かと寄れば牡丹の返り花 長谷川櫂
牡丹も我も最後は炎かな 長谷川櫂
牡丹の骨に重さのなかりけり 長谷川櫂
*
牡丹の火吉野太夫が焚きしかな 長谷川櫂
生きながら炎となりし牡丹かな 葛西美津子
貝の舌ゆるびて白し冬の水 宮本みさ子
襖絵の魁夷の海の時雨けり 及川由美子
【入選】
牡丹には牡丹の花の劫火あり 長谷川櫂
神も人も国喪ひて牡丹焚く 長谷川櫂
牡丹の火さみしき鬼の来て焚けり 長谷川櫂
牡丹焚く国喪ひし人のため 長谷川櫂
締められて雪吊の縄匂ひけり 藤英樹
嘴の一突き柿の甘くなる 葛西美津子
白河へ道さしかかるしぐれかな 葛西美津子
烏瓜夕日の色を奪ひけり 石田てい子
釣糸のきらり紅葉の散りしきる 茂木泉
鳥影は花散るやうに冬の草 茂木泉
雑踏を肩で泳ぐや鰯雲 武藤主明
武士だけの戦にあらず菊人形 武藤主明
俤を拾ひ集めて牡丹焚く 武藤主明
*
初しぐれみなさらさらとなりにけり 長谷川櫂
花であることを忘れし寒牡丹 藤英樹
牡丹焚く青く冷たく芳しく 葛西美津子
明日は明日独りの卓の新走り 神永秀郎
朝顔の風待つてゐる蔓の先 石田てい子
英文の絵馬の字細し小春風 石田てい子
あの時の梟はいづこ牡丹焚 武藤主明