第一句座
長谷川冬虹選
【特選】
揚雲雀むかし多賀城ありし跡 平尾 福
呆けたる我を乗せゆく春の雲 上村幸三
鳴くことも叶はぬ国へ雁帰る 武藤主明
のびのびと産土遊べ初燕 川辺酸模
【入選】
椴松や親指ほどの芽吹きあり 臼杵政治
百歳になつても三月三日かな 那珂侑子
ひた走る数千キロや西行忌 川村杳平
霾るや僧玄奘の道難儀 石川桃瑪
窯開けのその朝ひとつ初桜 齋藤嘉子
白木蓮咲き満ち空に来迎図 齋藤嘉子
春と春ぶつかり合うて春一番 三玉一郎
蛇一匹わけ知り顔に穴を出づ 服部尚子
長谷川櫂選(推敲例)
【特々選】
春愁やつつけば閉ざす貝の口 佐伯律子
生きて拝む東日本大震災忌 宮本みさ子
【特選】
避難所のホール響す卒業歌 川辺酸模
一艘の舳先がひらく水の春 上村幸三
泥の田に腹ごしらへて鳥帰る 及川由美子
【入選】
被災せし町の傍ら苗木市 川辺酸模
春彼岸吹雪の墓へ詣でけり 川村杳平
ぬくもりの母の手放し入学す 川辺酸模
冷凍のぼたもち供へ春彼岸 阿部けいこ
春風の翼よ赤子歩き初む 齋藤嘉子
白木蓮咲き満ち空は来迎図 齋藤嘉子
みちのくの嘆きつづける桜かな 青沼尾燈子
揚ひばり隣のひばり茶化しをり 佐伯律子
第二句座(席題:しやぼん玉、初蝶、蓬)
長谷川冬虹選
【特選】
初蝶とぶ野原はありやガザの地に 服部尚子
吾子のゐるかの世へ飛ばすしやぼん玉 齋藤嘉子
太陽を閉じ込めてゐるシャボン玉 齋藤嘉子
バンクシーガザに描けよしやぼん玉 川辺酸模
【入選】
紋白蝶蕊深く翅ふるへをり 谷村和華子
さ迷へる地球は青きしやぼん玉 武藤主明
初蝶や半世紀過ぐ初任の地 川村杳平
初蝶のたれか探してゐるごとく 青沼尾燈子
セシウムやわが田畑は蓬生に 齋藤嘉子
病む子へと伯母が得意の蓬餅 及川由美子
きかん坊の兄追ひかける石鹸玉 佐伯律子
重たくてゆつくり回る石鹸玉 上村幸三
タワマンの上から一つシャボン玉 服部尚子
長谷川櫂選
【特選】
重たくてゆつくり回る石鹸玉 上村幸三
【入選】
シャボン玉陽気な風がやつて来る 平尾 福
初蝶のたれか探してゐるごとく 青沼尾燈子
初蝶の絡まりながら消えにけり 武藤主明
初蝶は風塵にして自在なる 及川由美子
初蝶やつれなき風に右ひだり 川辺酸模