ネット投句(2020年11月30日)選句と選評
・もう一度基礎固めを。
【特選】
手付かずの一日おそろし古日記 11_埼玉 園田靖彦
古伊万里の和蘭陀はるか返り花 12_千葉 池田祥子
二人死にひとり誕生神の留守 13_東京 西川遊歩
わらつとの納豆売りや雪の朝 14_神奈川 伊藤靖子
極月や関所の如き検温器 14_神奈川 原田みる
・ごとく。この違いは?
水面の黙より氷り始めけり 14_神奈川 三玉一郎
カンカンと炭新しき炉端かな 28_兵庫 加藤百合子
時雨忌やこれより道を分つ君 29_奈良 喜田りえこ
思想こそ国の柱よ竜の玉 44_大分 山本桃潤
じやぶじやぶと発句を洗へ寒の水 44_大分 山本桃潤
歌仙とは詩の旅なり冬銀河 44_大分 土谷眞理子
【入選】
ふるまひの大根千本干しにけり 01_北海道 高橋真樹子
日あたりて爪の先まで冬木かな 01_北海道 芳賀匙子
短日の独り居なればなほ迅し 01_北海道 柳一斉
・や
燃えあがる煖炉ゴッホの絵の具箱 07_福島 渡辺遊太
誤字脱字当て字そのまま日記果つ 11_埼玉 園田靖彦
日向ぼこ次の春までマスクして 11_埼玉 上田雅子
空澄みて水澄みてあき逝きにけり 11_埼玉 上田雅子
・秋
ともかくも百一歳や寒牡丹 11_埼玉 藤倉桂
焼き立てのだし巻き卵今朝の冬 12_千葉 若土裕子
冬桜あおげば薄き昼の月 12_千葉 若土裕子
訃報あり落葉踏みしめ行く夜かな 12_千葉 谷口正人
カトレアや皆集まれぬ誕生日 12_千葉 池田祥子
海底に沈むがごとく冬の都市 12_千葉 麻生十三
貧しくも冬大根の菜飯かな 12_千葉 麻生十三
人生の不孝に冷たき霙降る 13_東京 いかいあつし
突き出るや泥大根の宅急便 13_東京 岡田栄美
おでん屋を梯子したのは遠い日々 13_東京 森徳典
寒空や妻は昼寝の自粛慣れ 13_東京 森徳典
ゆつくりとつける自信や冬菫 13_東京 森凜柚
穴穿つ啄木鳥さえも家族持つ 13_東京 長尾貴代
一人きりの父の命日蘭の花 13_東京 長尾貴代
蟷螂の骸半分緑色 14_神奈川 遠藤初惠
逡巡の三年日記買ひにけり 14_神奈川 金澤道子
ヤマネよりしづかに我の冬眠す 14_神奈川 金澤道子
しぐれつつ同じお顔の六地蔵 14_神奈川 金澤道子
ワクチンの後のけだるさ浮寝鳥 14_神奈川 原田みる
新酒酌みこよい昭和に遊びけり 14_神奈川 三浦イシ子
しののめの精魂のこゑ冬山河 14_神奈川 三浦イシ子
抱き上げて重心のない兎かな 14_神奈川 三玉一郎
榾くべて午後の当番はじまりぬ 14_神奈川 松井恭子
冬庭や雉鳩遊び水飛沫 14_神奈川 森川ヨシ子
雉鳩は羽整へて日向ぼこ 14_神奈川 森川ヨシ子
落葉踏む音軽やかに退院す 14_神奈川 水篠けいこ
樽椅子や臓腑に沁みる新走り 14_神奈川 土屋春樹
筑波嶺の風に粉をふく吊し柿 14_神奈川 片山ひろし
コロナ禍もしばし忘るる炬燵かな 15_新潟 安藤文
枯木立ジャコメッティの人の影 20_長野 大島一馬
信濃雪楸邨書斎「岸の黄」 20_長野 柚木紀子
いづれも「エール」秋ななくさつぎつぎ 20_長野 柚木紀子
甘ずっぱくなった石榴輩(ともがら)はなればなれ 20_長野 柚木紀子
明るさの銀杏紅葉を歩きけり 21_岐阜 夏井通江
この山の椎降る音や幾千万 21_岐阜 梅田恵美子
・この山に。この違いは?
返信のキーボード打つ置炬燵 22_静岡 池ケ谷章吾
男の子ゴム縄跳びに混じりたく 23_愛知 臼杵政治
自転車を置いて銀杏拾うひと 24_三重 乾薫
・ふ
凍蝶の凍てを解きたる日射しかな 26_京都 氷室茉胡
存分に水遊ばせて紙を漉く 26_京都 氷室茉胡
大白鳥影といふものなかりけり 27_大阪 安藤久美
白鳥翔ちてさざなみのさみしさよ 27_大阪 安藤久美
代々の墓移しけり返り花 27_大阪 古味瑳楓
藷焼いて母が待ちたる我が家かな 27_大阪 内山薫
・の待ちゐし
着ぶくれてころがるやうに登園す 27_大阪 木下洋子
一口でとろける鰤の照焼よ 27_大阪 木下洋子
・で?
空寝して大人の話聞く炬燵 30_和歌山 玉置陽子
ゆさゆさと山揺らしたる蜜柑かな 30_和歌山 玉置陽子
・揺らし捥ぐ
片端から塩錆の出刃牡蠣を打つ 37_香川 丸亀葉七子
凩の声の行方を聴く夜かな 44_大分 竹中南行