ネット投句(2020年8月15日)選句と選評
・戦争の句は、『俳句の宇宙』に書いた忌日の句同様
真情がすべて。
・旧かなは『伊勢物語』で学んでください。
【特選】
敗戦忌青柚のごとき学徒らよ 04_宮城 長谷川冬虹
草も木も黙る八月人間は 07_福島 渡辺遊太
・人間も?
梅干すや座り心地を梅に聞き 11_埼玉 藤倉桂
流れゆく鮎も釣師も水の影 13_東京 西川遊歩
胸に汗真一文字の手術跡 13_東京 櫻井滋
七十五年後の少年敗戦日 13_東京 櫻井滋
気に入らぬことあるらしき団扇かな 14_神奈川 金澤道子
大いなる残火八月十五日 14_神奈川 三玉一郎
手から手へわたす八月十五日 14_神奈川 三玉一郎
炎天や不協和音の交差点 14_神奈川 天野史郎
この年は短冊一枚星祭り 15_新潟 高橋慧
胃切りしむかしありけり生身魂 20_長野 金田伸一
老の守る遺髪は黒し終戦日 23_愛知 宗石みずえ
灯籠のほのほのいのちほのぼのと 27_大阪 古味瑳楓
この坂も懐かしからむ門火たく 28_兵庫 藤岡美惠子
八月や哀しみの翼垂れてあり 33_岡山 齋藤嘉子
・八月の
朽ちゆける鉄扉八月十五日 40_福岡 北井乃峰子
美しや人を欺く熱帯魚 44_大分 土谷眞理子
星合ひの壱岐や対馬や浪とどろ 99_不明 園田靖彦
取って置き今年切り出す七夕竹 99_不明 園田靖彦
・取つて
コロナ後も変わらぬものに心太 99_不明 高角みつこ
・変はらぬ
【入選】
地にふれしほおづき一つやおらあか 01_北海道 芳賀匙子
・文語体の新かな、アウト。以下同じ。
迎火や道の真中に鳥の糞 01_北海道 芳賀匙子
いわし雲一言でいいなにか言へ 01_北海道 柳一斉
まがまがしき令和二年の敗戦日 04_宮城 長谷川冬虹
天を衝けねぶり流しの魔除幣 05_秋田 佐藤一郎
熱帯夜羽化せし蝉の静かなり 11_埼玉 佐藤森恵
夏草刈る赤銅色の腕あり 11_埼玉 上田雅子
あと幾日粒数え食う黄蜀黍 11_埼玉 湯浅寒葵
ゲリラ雨通り過ぎたる金魚鉢 12_千葉 若土裕子
捕へしはあまたの影や補虫網 12_千葉 若土裕子
鍵あける鈴の音かすか夜涼かな 12_千葉 若土裕子
くたびれてズーム終わるや西日射す 12_千葉 谷口正人
今朝秋の枝に見慣れぬ鳥一羽 12_千葉 池田祥子
夜濯のほそき水音響きけり 12_千葉 麻生十三
骨壺の無きひともいる霊迎え 12_千葉 麻生十三
世はことのほかなれど雲の峰すつく 13_東京 井上じろ
鳴き出してみんみん空の何か呼ぶ 13_東京 井上じろ
胸張りてマスクはずすは炎天下 13_東京 永井奈緒
松虫や闇へ闇へと誘われぬ 13_東京 岡 惠
・誘はるる
夕星や我は茗荷の花刻み 13_東京 岡 惠
・刻む
流星を待ちて眠ってしまひし子 13_東京 岡 惠
蝉鳴いて父命日やあと三日 13_東京 岡田栄美
大見出しは疫病み累計原爆忌 13_東京 市村さよみ
逆縁や墓石潤す盆の朝 13_東京 森徳典
八月やことさら寒き十五日 13_東京 神谷宣行
竹取の翁とならん星祭 13_東京 神谷宣行
地に降りて真水吸ふ群れ揚羽蝶 13_東京 西川遊歩
ねこじゃらし骨壺のあり花瓶あり 13_東京 長井信彦
毎年の会釈をかはし墓参り 13_東京 楠原正光
夏の海少しゆがんでゴッホの椅子 13_東京 畠山奈於
孫と見る戦争映画星涼し 13_東京 堀越としの
咲ききって首を垂れおり向日葵よ 14_神奈川 伊藤靖子
さまざまな蝉競ふ声昼下がり 14_神奈川 伊藤靖子
アウシュビッツに子供が死せり晩夏光 14_神奈川 越智淳子
干草の匂ひ立ちおり野の真昼 14_神奈川 遠藤初惠
送る荷の隅に二匹のかぶと虫 14_神奈川 遠藤初惠
崖の上の鉄砲百合に見下ろさる 14_神奈川 遠藤初惠
箱庭に撒いて土産の星の砂 14_神奈川 金澤道子
ともしびの如く咲きけり鶏頭花 14_神奈川 原田みる
かなかなや一村染むる大夕日 14_神奈川 原田みる
夏海やこの淋しさのゆゑ知らず 14_神奈川 三浦イシ子
この場所が吾子のふるさと虹架かる 14_神奈川 松井恭子
撫子の花のおもゐをぬいとりぬ 14_神奈川 森川ヨシ子
短編に栞挟んで氷水 14_神奈川 水篠けいこ
朝焼や二日つづきの夢をみて 14_神奈川 中丸佳音
目を瞑り暑さに耐へむ原爆忌 14_神奈川 中丸佳音
故郷やしんしんと聞く虫の闇 14_神奈川 天野史郎
敗戦忌学徒の叔父は未だルソン 14_神奈川 土屋春樹
アリ神輿蝉の躯を担ぎ行く 14_神奈川 土屋春樹
仏壇に白桃妖し影落とす 14_神奈川 湯浅菊子
八月を管長さまと坐禅組む 14_神奈川 那珂侑子
えのころや買い物帰りに二、三本 14_神奈川 服部尚子
火の神を鎮めて御山洗かな 14_神奈川 片山ひろし
栗うまし焼いてはじけてひとつづつ 14_神奈川 片山ひろし
しんしんとスカイツリーの秋さびし 15_新潟 安藤文
蝉の声いやに大きいこの夏よ 15_新潟 安藤文
ゆうゆうと窓を過ぎゆく蜻蛉かな 15_新潟 安藤文
学生棋士の目元涼しき一手かな 17_石川 花井淳
遅れくる音やはらかく遠花火 17_石川 岩本展乎
今生の句集成りたり赤のまま 20_長野 金田伸一
もうつぎの句集の夢を白木槿 20_長野 金田伸一
・句集を夢に
山鳩は繰り言並べ敗戦忌 20_長野 大島一馬
ゆび触るる兎(と)罠猪罠かるいざわ 20_長野 柚木紀子
雨上がり路にうつりし夏の蝶 21_岐阜 夏井通江
葉の裏を青虫毛虫蝉の殻 21_岐阜 古田
・に
万歳は終生すまじ敗戦日 21_岐阜 三好政子
宙を舞ふ馬のしつぽや雲の峰 21_岐阜 梅田恵美子
盆の月竹馬の友は化石化中 22_静岡 池ヶ谷章吾
プチトマト次々爆ぜる残暑かな 23_愛知 稲垣雄二
七転八倒くしやくしやの夏布団 23_愛知 青沼尾燈子
高原に二羽の秋蝶出会ひけり 23_愛知 野口優子
灯にすける小さき指の守宮かな 24_三重 乾 薫
燃えながら残る暑さの日が西に 26_京都 佐々木まき
生きている限りは八月十五日 26_京都 佐々木まき
・は、不要
裏方に徹す来し方稲の花 26_京都 氷室茉胡
燈籠の水よりあはく流れゆく 27_大阪 安藤久美
白粉の黒き実どなたでもどうぞ 27_大阪 古味瑳楓
遠花火忘れきりたる思ひふと 27_大阪 山中紅萼
大やかん傾けて注ぐ麦茶かな 27_大阪 内山薫
熱帯夜たたみの上をごろりごろり 27_大阪 内山薫
コロナ禍に読書が力秋に入る 27_大阪 木下洋子
炎天に闇を見てゐし敗戦日 27_大阪 澤田美那子
・円天の、ゐる
茄子の馬お役目終へて食はれけり 27_大阪 澤田美那子
産土に父母なくて雲の峰 27_大阪 齊藤遼風
舌下にしぶく夏大根の辛味かな 28_兵庫 加藤百合子
閃光の果の灼熱蓮の種 28_兵庫 加藤百合子
老と幼ふたつの背中魂祭 28_兵庫 加藤百合子
手花火や小さき膝が輪をつくり 28_兵庫 千堂 富子
じゃあじゃあと聞こゆる声や残る蝉 28_兵庫 天野ミチ
きりり結び今宵箸置き茗荷の葉 28_兵庫 藤岡美惠子
良夜かな知人と出会う散歩道 28_兵庫 髙見正樹
家ぢゆうの戸口開きて秋入れむ 29_奈良 喜田りえこ
椋鳥や狙ひすまして犬の餌へ 29_奈良 田原春
大瑠璃やシャッター忘れ聴き惚れて 29_奈良 田原春
夕べまだ草いきれある散歩径 37_香川 丸亀葉七子
空蝉に猫との想ひ出あまたあり 37_香川 丸亀葉七子
・と、不要
したしたと 死者の書つむぐ 蓮の糸 37_香川 元屋奈那子
大津皇子 いらつめ織りし 蓮衣 37_香川 元屋奈那子
・一字あけ、不要。
石切場灼けし足場に立ちくらむ 37_香川 曽根崇
土用干わが生涯を曝しけり 37_香川 曽根崇
終戦日引き揚げの荷に琴の爪 38_愛媛 豊田喜久子
影を濃くして八月の白い道 38_愛媛 豊田喜久子
夜のうちに繕ひてあり蜘蛛の網 40_福岡 北井乃峰子
蚊帳の海幼き兄と泳ぎしが 40_福岡 北井乃峰子
沖縄の星霜醸す古酒(くうす)かな 42_長崎 川辺酸模
いつもとは違ふ寂しさ盆まいり 42_長崎 百田直代
炎昼の透きとほりたり壁のごと 43_熊本 筑紫秋蘭
雲海や釈迦さみしげに眠りたまふ 43_熊本 筑紫秋蘭
風鈴のリズムを貰へよき言葉 44_大分 山本桃潤
新涼や意のままに伸ぶ鉋屑 44_大分 竹中南行
桃缶が真ん中にある冷蔵庫 99_不明 高角みつこ