ネット投句(2020年7月31日)選句と選評
・何よりも心に届く句を。
・それだけ考えていれば、細かなことは自ずから身についてきます。
・そうならなければ、心の持ち方の問題。
・これで相手に届くかどうか、推敲をお忘れなく。
・器用に作った句はダメ。
【特選】
コロナ禍の彩も切なき花火かな 05_秋田 佐藤一郎
巣籠もるや五色並べて奈良団扇 11_埼玉 藤倉桂
術衣着て待つ私以外全部夏 13_東京 長井亜紀
驚きし蜥蜴やわれもおどろきぬ 13_東京 堀越としの
星空へ抱き上げられて遠花火 13_東京 齊藤拓
・られし花火かな
蜘蛛の巣を払へば糸のまつわり来 14_神奈川 越智淳子
滝壺を水おとなしく出てゆけり 14_神奈川 金澤道子
夕風に息するつぼみ紅芙蓉 14_神奈川 原田みる
蓮の花肩に担ひて帰りけり 14_神奈川 水篠けいこ
梅雨出水見る間に橋が流れ去り 14_神奈川 土屋春樹
・去る
爽やかな文字の遺句帖特攻へ 14_神奈川 那珂侑子
白桃の箱をそおつと開けるとき 14_神奈川 那珂侑子
天空に地球が赤く燃える夏 20_長野 大島一馬
永うながう谺しはるか富士は花影 20_長野 柚木 紀子
初盆や激しき性も石の下 23_愛知 青沼尾燈子
・激情もいま
みな河馬の顔(かんばせ)となる昼寝覚 26_京都 氷室茉胡
・われ河馬の
噴水の穂の柔らかき夜風かな 28_兵庫 千堂富子
短夜や明けて無慚な最上川 28_兵庫 天野ミチ
虚空より一筋の青糸とんぼ 28_兵庫 藤岡美惠子
・虚空飛ぶ
海はエロス真白なヨット走らせて 44_大分 山本桃潤
死んだ子がいつも待ってる墓参り 46_鹿児島 大西朝子
・待つてる
【入選】
夏木立コロポックルや見えかくれ 01_北海道 高橋真樹子
・コロポックルは
漂へる三日月湖蓮はまぼろし 01_北海道 芳賀匙子
万緑を落ちゆく水の一直線 01_北海道 柳一斉
コロナ禍に眼を休めたる若葉かな 01_北海道 柳一斉
・コロナ禍の
立葵更地の続くシャッター街 04_宮城 長谷川冬虹
・更地またある
打水の跳びゆく先の無明かな 07_福島 渡辺遊太
耳鳴りのことさら激し今朝の秋 11_埼玉 園田靖彦
立ち上る浅間のけぶり今朝の秋 11_埼玉 園田靖彦
母の手に古きアルバム八月来 11_埼玉 藤倉桂
オルゴール不意に鳴り出す暑さかな 12_千葉 菊地原弘美
速さうな瓜茄子選び魂迎 12_千葉 若土裕子
・茄子や胡瓜や
ご自慢は鱧の骨切り逝き給ふ 12_千葉 若土裕子
長き長き自粛の日々や百日紅 13_東京 岡 惠
草むしりクッキー焼きて母を待つ 13_東京 岡田栄美
梅雨曇りママは真っ赤なワンピース 13_東京 岡田栄美
・真赤な
片影に一息入れて駅舎まで 13_東京 森徳典
・片陰で、でを嫌うなかれ。
膝抱へ塗るペディキュアや夏の果 13_東京 森凜柚
見えてゐて見てゐぬ場所に黴の花 13_東京 森凜柚
志野碗のなかの静寂夜の秋 13_東京 神谷宣行
籐椅子は我が全身を待ちゐたり 13_東京 西川遊歩
物置の鎌を取出し残暑かな 13_東京 楠原正光
・取り出す
薄くうすく新玉ねぎの甘さかな 13_東京 堀越としの
・甘さ、が甘い。
明日開く百合のかほりや雨あがり 13_東京 櫻井滋
・かをり
百合の香やまづ東京を換気せん 13_東京 櫻井滋
夕暮れてピアッツア噴水の音ばかり 14_神奈川 越智淳子
写経の手休め目を遣る半夏生 14_神奈川 遠藤初惠
まつ先に声さらはれて滝の前 14_神奈川 金澤道子
・るる
林間を進むごとくに蓮見舟 14_神奈川 金澤道子
梅雨寒の部屋の真中にだんご虫 14_神奈川 原田みる
・真中を
あの夏の京都で買うた帽子かな 14_神奈川 三玉一郎
朝空の玄関に立ち蝉時雨 14_神奈川 森川ヨシ子
・立つ
手拍子に噴水空を駆け上る 14_神奈川 水篠けいこ
・上がれ
東京の夏がぼやけるマスクかな 14_神奈川 中丸佳音
機内食窓の向かふに雲の峰 14_神奈川 土屋春樹
一筋の風に置かれし籐寝椅子 14_神奈川 湯浅菊子
梅雨明を待ちきれず蝉鳴きだしぬ 14_神奈川 那珂侑子
日生港籠をはみ出す蝦蛄の足 14_神奈川 服部尚子
かなかなや死者を伝へるテレビ画面 15_新潟 安藤文
マスクして客やって来る暑さかな 15_新潟 安藤文
・やつて
泥つけしまま草立ち上がる出水後 15_新潟 高橋慧
おねしよしたこともありなん豆ごはん 17_石川 花井淳
・ありけり
鮎釣りや九頭竜居眠りしてをりぬ 17_石川 花井淳
雨はらむ雲井に登る凌霄花 17_石川 花井淳
・雲井へ
息殺し人を待ちをり毒茸 20_長野 大島一馬
積乱雲一瞬陽光移動せり 20_長野 大島一馬
抽象化無理だなんて闇ほうたる蛍 20_長野 柚木 紀子
夫出かけ家は閑かや蓮の花 21_岐阜 夏井通江
蜘蛛の巣に顔を捕られて四苦八苦 21_岐阜 古田之子
・しまひけり
ほしいまま遊びし雲の夕焼けや 21_岐阜 三好政子
・夕焼けて
町暑し抜苦与楽と大き文字 21_岐阜 三好政子
バッグより本出して待つ白雨かな 21_岐阜 三好政子
草いきれ雨のあがりし大八洲 21_岐阜 梅田恵美子
大梅雨や闇おそろしき泥の川 21_岐阜 梅田恵美子
しんしんとシーラカンスの夏来る 22_静岡 池ヶ谷章吾
・しんかんと
電柱の影に身を置く炎暑かな 22_静岡 池ヶ谷章吾
まづ蠅が降り来る南方帰還船 23_愛知 臼杵政治
胎の児と戦死嘆けり終戦日 23_愛知 宗石みずえ
・嘆きぬ
このよはひあまたのつみや冷奴 23_愛知 青沼尾燈子
昼寝覚うゐのおくやまけふもゆく 23_愛知 青沼尾燈子
亡き人の声の聞ゆる夕端居 23_愛知 野口優子
・端居かな
鵜篝の弾けて深き山河かな 23_愛知 野口優子
・闇夜かな
夕焼けに向かいてさげるレジ袋 24_三重 乾 薫
・向ひてゆくや
涼風やこけしのやうな顔と顔 27_大阪 高角みつこ
天道虫帽子の底へ転げ落つ 27_大阪 高角みつこ
ひるがへる燕の腹の白さかな 27_大阪 内山薫
大阪は西風が頼りよ夕焼けて 27_大阪 澤田美那子
つまらなきものを楽しく夜店の灯 27_大阪 澤田美那子
・つまらなきものきらきらと夜店かな
さみどりは少年の色ソーダ―水 27_大阪 齊藤遼風
思ひ出を香水瓶に詰め込みし 28_兵庫 千堂富子
明日といふ不思議迎へん冷奴 28_兵庫 藤岡美惠子
夏シャツの下の筋肉キャッチボール 29_奈良 田原春
葛切や水ゆらゆらと運ばるる 30_和歌山 玉置陽子
蝉しぐるる中を行かねばならぬかな 33_岡山 齋藤嘉子
・蝉しぐれ中を
百日紅いのち長くば恥多し 37_香川 曽根崇
老の愚痴さらりと受けてビール注ぐ 37_香川 曽根崇
・かはし
雷鳴といふ小気味よきものの中 38_愛媛 豊田喜久子
水害の村に燃ゆるよ百日紅 42_長崎 川辺酸模
麦茶飲み決めの一手や棋聖戦 42_長崎 百田直代
・一手へ
通らねばならぬこの道灼けに灼け 42_長崎 百田直代
・灼けてをり。力んでもダメ。
あぢさゐのほのとあかるき草枕 43_熊本 筑紫秋蘭
・あかるし
夕刊を広げ爪切る原爆忌 46_鹿児島 大西朝子