ネット投句(2020年6月30日)選句と選評
・現状安住では俳句は難しい。妻であるとか老人であるとか。
・日記ならともかく。
【特選】
草矢打つ遙かなる的胸に秘め 13_東京 西川遊歩
明日ひらく花の香りや大夕焼 13_東京 長井亜紀
ちさき子のマスクかわゆし夏帽子 14_神奈川 伊藤靖子
箱庭に釣人ひとり来てをりぬ 14_神奈川 金澤道子
まだ父に辿り着かない帰省かな 14_神奈川 三玉一郎
二つ三つ茅の輪をくぐる念のため 27_大阪 澤田美那子
・念のため二つ三つくぐる茅の輪かな
マスク外せばこんなにも草いきれ 28_兵庫 加藤百合子
旅は良し家はなほよし青簾 38_愛媛 豊田喜久子
睡蓮や収まりつかぬ昼の酒 44_大分 山本桃潤
【入選】
この国をいつでも捨てむ更衣 01_北海道 柳一斉
・大げさか。
夏空やこころ遠くへ旅したる 01_北海道 柳一斉
・旅をして
朝焼けやカップ片手に庭に立つ 04_宮城 大内美保
・カップ?
かの日から陰画のままや夏の海 07_福島 渡辺遊太
ほととぎす闇に生まれて闇に消ゆ 07_福島 渡辺遊太
茹で上がるやうな人体田草取 11_埼玉 園田靖彦
朝焼の海に向へる子亀あり 11_埼玉 佐藤森恵
・向かひて子亀歩む
巣立鳥見てゐる私と野良猫 11_埼玉 佐藤森恵
コロナ禍に生まれし恋や氷水 11_埼玉 藤倉桂
友の中若きわれありさくらんぼ 12_千葉 菊地原弘美
・中に
白玉やそろそろ母が着くころと 12_千葉 若土裕子
・ころか
掌にずしり玉の赤子の髪洗う 12_千葉 池田祥子
母の日や妣のかなしき日をおもふ 12_千葉 麻生十三
梅雨寒や母には見せぬ死亡欄 13_東京 永井奈緒
夏の別れ怒りの電話そっと置き 13_東京 永井奈緒
・そつと置く
夏茱萸の渋味を好む人と棲む 13_東京 荒木大和
花南瓜長生きといふ寂しさに 13_東京 神谷宣行
梅雨晴や大星雲の渦を見る 13_東京 神谷宣行
・見ゆる
庭のもの刻んで香る冷奴 13_東京 長井亜紀
梅雨寒や爆音上げるオートバイ 13_東京 楠原正光
・あげて
雨やみて二頭のアゲハ夫を呼ぶ 13_東京 堀越としの
梅雨明けや列島丸ごと換気せん 13_東京 櫻井滋
飛び石を踏み外したき藻の花よ 14_神奈川 越智淳子
・外したる花藻かな
マスク外し百合の匂ひを確かめる 14_神奈川 遠藤初惠
・確かめよ
虫干やもう使はぬと思ひつつ 14_神奈川 金澤道子
梅雨晴やマスクを外す上り坂 14_神奈川 原田 みる
茅の輪から別のあなたが出てきたり 14_神奈川 三玉一郎
愛されて愛し返して汗の中 14_神奈川 三玉一郎
・しぬ
夏の朝天を見上げて犬静か 14_神奈川 山本孝予
愛犬とさいごの対話柿若葉 14_神奈川 山本孝予
さくらんぼ半年会はぬ母よ娘よ 14_神奈川 松井恭子
ほうたるや付かず離れず夫婦なり 14_神奈川 松井恭子
・たり
電話中夏鶯のこだまかな 14_神奈川 森川ヨシ子
・こだまして夏鶯や電話中
弓なりの日本列島梅雨に入る 14_神奈川 水篠けいこ
楊梅の煮ゆる匂ひにひとりなる 14_神奈川 中丸佳音
・をり
松の枝に明恵上人下に蝦蟇 14_神奈川 湯浅菊子
冷酒や詩嚢たがやし句を作る 15_新潟 安藤文
花いばら咲き満ちており登山口 15_新潟 高橋慧
散り敷きて星のかけらかえごの花 15_新潟 高橋慧
一本の蒲公英を挿すモーニング 17_石川 花井淳
手取川向かふの山も滴るる 17_石川 花井淳
・れり
あの日から海・人哭くや沖縄忌 19_山梨 小泉雅恵
なめくじりすつとんきような顔をして 21_岐阜 夏井通江
・ぢ。辞書を。
更衣きのみきのまま生きてみたし 23_愛知 野口優子
切り抜きのレシピも古し梅酒漬け 27_大阪 高角みつこ
・古き梅酒かな
いきてゐることがかなしみ水中花 27_大阪 内山薫
気がつけば疫病神も端居かな 27_大阪 木下洋子
・疫病神と
この年の祭なくとも祭鱧 27_大阪 木下洋子
甚平やあつといふ間ぞ十年は 27_大阪 澤田美那子
父の日や釘真っ直ぐに打ち込みし 28_兵庫 千堂 富子
・つ
獣かな茂りに音が遠ざかる 28_兵庫 髙見正樹
・獣かも
柔らかな大き掌楸邨忌 29_奈良 喜田りえこ
・柔らかに?
沖縄忌今も空には戦闘機 29_奈良 喜田りえこ
・空ゆく
ひとすぢの紐となりたり蛇の衣 30_和歌山 玉置陽子
たらちねの乳房のごとく桃すする 33_岡山 齋藤嘉子
・ごとく、不要。
夏椿今年もとどく縁しあり 34_広島 三好芳枝
太郎次郎三郎川の名ぞ涼し 37_香川 丸亀葉七子
・太郎次郎川の名涼し三郎も
灸の火網戸の風にあおられぬ 37_香川 丸亀葉七子
・るる
朝涼や牧にたまはる山羊の乳 37_香川 曽根崇
白峯の御霊鎮もる大緑陰 37_香川 曽根崇
只事句作つては捨つ蛇の衣 42_長崎 百田直代
億年のかなたの微光苔の花 44_大分 竹中南行
・かなたへ
火葬場の高き煙突梅雨晴間 46_鹿児島 大西朝子