ネット投句(2020年4月30日)選句と選評
・コロナ禍の渦中、俳句の勉強の機会です。
・てにをは、注意を。主格の「の」あやうし。
・描写不全、感情過多? 伝わらない句あまた。
【特選】
想ひの丈を尻尾に込めて猫の恋 14_神奈川 湯浅菊子
吾が手より春の水飲む貰ひ犬 23_愛知 青沼尾燈子
顔のなき季語となりけり昭和の日 27_大阪 高角みつこ
新茶汲む人に会わぬをよしとして 27_大阪 澤田美那子
・決然たるもの。会はぬ?
懸命のたどたどしき字花は葉に 28_兵庫 藤岡美惠子
この山は大きな楽器春の水 30_和歌山 玉置陽子
桜湯や笑まふ壽美さん洋さん 33_岡山 齋藤嘉子
若くつて美しくつて春愁 44_大分 山本桃潤
犬嫌ひ人間ぎらひ子猫かな 44_大分 竹中南行
【入選】
雁帰る大日輪のど真ん中 01_北海道 高橋真樹子
うらうらに日は透け通り鴉の巣 01_北海道 芳賀匙子
ウイルスと距離測りつつ春深む 04_宮城 石原夏生
豆の花平気で生きん子規のごと 04_宮城 長谷川冬虹
・素材多すぎ
花朧汁も膾もウイルス禍 05_秋田 佐藤一郎
春の街寂し曲がれど曲がれども 07_福島 渡辺遊太
スーパーの黙の行列田螺鳴く 11_埼玉 佐々木みほ
紙鍵盤叩く中指風薫る 11_埼玉 佐々木みほ
星涼し大海原に子亀ただよふ 11_埼玉 佐藤森恵
・を
青き水深に鯨の立ちてをり 11_埼玉 佐藤森恵
・てをり、これでは動きなし。
亡き人へま白き飯と花菜漬 11_埼玉 上田雅子
花水木キッチンカーで来るランチ 12_千葉 菊地原弘美
今朝開く薔薇の莟を食はれけり 12_千葉 若土裕子
コロナ禍や地球の子らへ鯉幟 12_千葉 若土裕子
隼人とは薩摩の良き名柏餅 12_千葉 池田祥子
ういるすと闘うステージ梅雨に入る 13_東京 横山直典
・闘ふ
ソーシヤルディスタンシング紋白蝶眩し 13_東京 岡 惠
一輪は早や実となれり二輪草 13_東京 葛西美津子
・なりぬ
春籠もり腿肉日毎干乾びる 13_東京 荒木大和
ほたるいか見るべき程の事見しや 13_東京 市村さよみ
要火急不用の用や蠅生る 13_東京 市村さよみ
・不要の要不急の急や
孫娘今は蕾の牡丹かな 13_東京 森徳典
その奥にコロナ後の世や蜃気楼 13_東京 森凜柚
きらきらのさよりの尖りならべけり 13_東京 西川遊歩
・きらきらと尖るさよりのならびけり?
赤き点てんたう虫の草の上 13_東京 楠原正光
・虫が。主格の「の」は特別のときしか使わない。どんなときかは考えてください。
白き小鳥群れ囀るや花辛夷 13_東京 堀越としの
・言葉多すぎ。
みなしごの蝙蝠泣くや昼の洞 14_神奈川 越智淳子
天めざし翔びたつばかり花水木 14_神奈川 遠藤初惠
まるで羽毛うすくれなゐの漆の芽 14_神奈川 金澤道子
藪を出てくる小綬鶏に子の三羽 14_神奈川 金澤道子
夏近し雉鳩二羽で来てをりぬ 14_神奈川 金澤道子
菜の花に囲まれ鴉恍惚に 14_神奈川 原田みる
・恍惚と
花冷や電話して聞く母の声 14_神奈川 原田みる
乾坤や来し春がゆくだけのこと 14_神奈川 三玉一郎
春ゆくや色変へぬまま吉野紙 14_神奈川 三玉一郎
竹の秋こどもの付けしけもの道 14_神奈川 山本孝予
敷藁に光のつぶの苺かな 14_神奈川 松井恭子
空いつぱいジャスミン香り宇宙かな 14_神奈川 森川ヨシ子
・香る
春キャベツ怒つてないと言つてくれ 14_神奈川 水篠けいこ
誰がために咲くや躑躅の花盛り 14_神奈川 水篠けいこ
やさしさにカラスノエンドウからみあふ 14_神奈川 中丸佳音
風に乗り子供神輿の触れ太鼓 14_神奈川 土屋春樹
・乗る
春寒や愛する故にいま会はず 14_神奈川 那珂侑子
風に揺れぶらんこ誰か待つてゐる 15_新潟 安藤文
ちやんづけで呼ぶ姉なりき雪柳 20_長野 金田伸一
ウイルス禍キリコの街に春虚ろ 20_長野 大島一馬
・街の、街は
ウイルス禍桜は遠く離れおり 20_長野 大島一馬
・をり
琵琶を記憶する種子.人類を記憶する宇宙 20_長野 柚木紀子
・長すぎる
まっくらな天日ころがす大虹 20_長野 柚木紀子
鳥はみな人間嫌ひ風光る 21_岐阜 三好政子
足の裏水神動く春の川 22_静岡 池ケ谷章吾
コロナ禍に籠れば陰に著莪の花 23_愛知 宗石みずえ
・陰に、不要。
貰ひ犬なにかを喋る日永かな 23_愛知 青沼尾燈子
・何かいひたき
燕来るミサも自粛の教会に 26_京都 佐々木まき
・ミサを
やはらかな日差しに太る薔薇の棘 26_京都 佐々木まき
透け透けの商品棚や四月尽 26_京都 氷室茉胡
・商品棚を春は行く
こでまりや今朝触れてゆく子らもゐず 27_大阪 安藤久美
・こでまりに触れてゆく子ら今朝はゐず
円空の鑿をとびちる胡蝶かな 27_大阪 古味瑳楓
・鑿に
残花かなわれにも一つ恋の詩 27_大阪 古味瑳楓
花ばかり囁やく街の散歩かな 27_大阪 山中紅萼
・街を。この「の」も注意を。
君居らぬことの不思議や豆ご飯 27_大阪 木下洋子
・君?
新茶の香電波に乗せん近未来 27_大阪 澤田美那子
春愁や孫と話すもマスクして 27_大阪 澤田美那子
跡取りの穀雨の中を帰りけり 27_大阪 齊藤遼風
永き日のコロナウイルスの怒濤 28_兵庫 加藤百合子
明日からは検査入院卯波立つ 28_兵庫 千堂富子
袖通すことのなかりし花衣 28_兵庫 藤岡美惠子
蜘蛛の囲に雨後の水玉朝日さす 28_兵庫 髙見正樹
人の死を数字で示す春の果 29_奈良 喜田りえこ
たんぽぽやボール一つでよく遊び 29_奈良 田原春
でんぐり返り新緑の空に会う 29_奈良 田原春
・会ふ
愁ひつつふくらませたり紙風船 30_和歌山 玉置陽子
桜湯や縁の糸ぞおもしろき 33_岡山 齋藤嘉子
大禍なり遍路道より遍路消え 37_香川 丸亀葉七子
客ゐない電車かげろふ讃岐富士 37_香川 丸亀葉七子
吹きたまる花屑遍路の墓とかや 37_香川 曽根崇
傷痕をよぎる痛みや夕永し 37_香川 曽根崇
芝桜一島挙げて船迎ふ 38_愛媛 豊田喜久子
サラリーマン駅に疎らや更衣 38_愛媛 豊田喜久子
行春をカミユの本と惜しみけり 42_長崎 川辺酸模
蟻と蟻ある距離とりて春の蟻 42_長崎 百田直代
・歩みゆく、進みゆく?
五つ六つ茫と浮きたり山桜 43_熊本 筑紫秋蘭
行く春や隠れ処なきプラネット 43_熊本 筑紫秋蘭
徒ならぬ一花や牡丹ひらきける 44_大分 山本桃潤
春愁距離置きて立つことに慣れず 44_大分 山本桃潤
無防備な吾子の寝顔や春の星 46_鹿児島 大西朝子