ネット投句(2019年6月15日)選句と選評
・俳句は言葉で詠んではいけない。
【特選】
牛のごと休んでをりぬかたつぶり 11_埼玉 おほずひろし
蟻の兵うごめく白き花の奥 12_千葉 森住昌弘
薩摩富士海より立ちて明易し 12_千葉 池田祥子
この恋の行方教へよ道をしへ 13_東京 森凜柚
麦星やパンの酵母のつぶやく夜 13_東京 西川遊歩
梅の実の熟れゆく香り竹の籠 13_東京 太田直子
一斉に畳む日傘や野辺送り 13_東京 緑天
仏桑花咲くや孔雀の肉あまし 14_神奈川 江藤鳥歩
休館日もどる日傘をひらきけり 14_神奈川 松井恭子
こもれ日の上にしづかな夏落葉 21_岐阜 夏井通江
・しづかに。どちらが静かか考える。
空中の機織る如く夏燕 22_静岡 池ケ谷章吾
山を伐る青葉の毒を祓ひつつ 22_静岡 池ヶ谷章吾
五月晴れ影新しき一日かな 23_愛知 稲垣雄二
・五月晴れて、としてもよい。
毎日の手入れに余念無き浮巣 26_京都 氷室茉胡
揚羽蝶喘ぎしずめて石の上 26_京都 佐々木まき
・むる
みじろぎて青鷺なにか諦めぬ 27_大阪 古味瑳楓
・何を諦めし
姫紫苑いっせいにゆれ我もゆれ 27_大阪 内山薫
・いつせいに
たよりなき世にたよりなき浮巣かな 27_大阪 安藤久美
・世の
さぼること知らぬ野菜よ茄子の花 28_兵庫 藤岡美惠子
ときめくやたかが茄子の苗植えて 37_香川 曽根崇
・植ゑ。こういうところは自分で。
葉がくれに木守る梅の三つ四つ 37_香川 丸亀葉七子
時の日やぼんやり過ごす日にせんと 42_長崎 百田直代
梅雨に入る触るれば雨の落ちる空 44_大分 山本桃潤
梔子の花にふれたる染みならん 44_大分 竹中南行
【入選】
水貝の旨し宿にてねまる哉 01_北海道 高橋真樹子
・旨き
虹の足桃源郷の在り処かな 01_北海道 高橋真樹子
やさぐれの鳥の鳴き来る夏の夜 01_北海道 芳賀匙子
子の椅子のぽかんと空けり五月尽 04_宮城 長谷川冬虹
平成の名残の薔薇よ花殻よ 04_宮城 長谷川冬虹
茄子の花並み立つ畝のうるはしや 05_秋田 佐藤一郎
・並み立つ、描写不全。
人住んでこそのふるさと蟾蜍 07_福島 渡辺遊太
みちのくの闇の奥なる岩魚の目 07_福島 渡辺遊太
・闇にひそめる?「奥なる」は動きなし。
愚のままに終はるほかなし更衣 07_福島 渡辺遊太
水張つて太古のごとし代を掻く 11_埼玉 おほずひろし
金色の髪ふりたてて栗の花 11_埼玉 おほずひろし
孑孑のでんぐりかへるたびに夢 11_埼玉 園田靖彦
あの頃のわれのともがら蚤虱 11_埼玉 園田靖彦
水を出て鼻ひろげおり梅雨の亀 11_埼玉 佐藤森恵
・をり
花菖蒲ほぐれ初めしものを選る 11_埼玉 上田雅子
・切る?
薔薇園やあらん限りの幸の果て 11_埼玉 牧内麻衣
蟇玉の心のありやなし 12_千葉 若土裕子
・ありやなし、ではダメ。
日と月の光とどめて初茄子 12_千葉 池田祥子
・とどめて、一考。
焼酎の氷ひとりで回しけり 13_東京 安藤文
・回り
紫陽花やしみじみ思ふ子は宝 13_東京 安藤文
夏野原縦横に犬駆け巡り 13_東京 安藤文
・巡る
アルゼンチンタンゴ見てきて梅雨に入りけり 13_東京 岡 恵
・見てきて、が他人事。
蓴菜や御酢に浮かぶも自由哉 13_東京 市村さよみ
・蓴菜の。
いつ見ても赤城は無言桐の花 13_東京 柴田清栄
バンドネオンタンゴを奏で薔薇の闇 13_東京 松宮京生子
・奏づ
好かれたき人に好かれず火取虫 13_東京 森凜柚
・理屈にならないように。
節約の年金生活金魚飼ふ 13_東京 神谷宣行
若き日の旅の日の中滝落つる 13_東京 西川遊歩
冷蔵庫母の作りし物ばかり 13_東京 長尾貴代
夏椿絹の玉なる蕾かな 13_東京 徳武信子
枇杷の実がやつとなつたと鵯つつく 13_東京 櫻井滋
夏空や持ち重りするビアジョッキ 13_東京 齊藤拓
渓流に立つ釣り人へ夏陽射す 14_神奈川 伊藤靖子
梅雨寒や待合室に人溢る 14_神奈川 遠藤 初惠
おさなごの手のひらにのる蛍かな 14_神奈川 遠藤 初惠
鎌倉五山一位の寺に蟻地獄 14_神奈川 金澤道子
・寺の
夏草や日に日に沈む捨て自転車 14_神奈川 山本孝予
梅雨寒や音なく群るる回遊魚 14_神奈川 松井恭子
水遣りの音に飛び出づ夏の蝶 14_神奈川 森川ヨシ子
・出す
白靴や早朝散歩爺と婆 14_神奈川 水篠けいこ
・白靴、ダメ。
蟹の背に蟹重なりて波被る 14_神奈川 水篠けいこ
一の雨二の雨誘ふ額の花 14_神奈川 湯浅菊子
・誘ふ、不要。これが理屈。
夏帽の一列脚の健やかに 14_神奈川 湯浅菊子
・一列の足
郭公の遠のいてゆく団地かな 20_長野 金田伸一
幼子が夏の木の実を呉れにけり 20_長野 金田伸一
・具体的に。
あさあさの膳に摘みくる胡瓜かな 20_長野 金田伸一
・1日に絞る。
沖はつなつ猫だけ暮らす島ありて 20_長野 柚木 紀子
象さんあとすざり日輪月輪夏至 20_長野 柚木 紀子
那智黒は磨かれ実梅しかと青み 20_長野 柚木 紀子
紫陽花苑宝石箱のなかのやう 21_岐阜 夏井通江
梅雨寒や一筆書きにポストマン 21_岐阜 三好政子
猥雑に樹液滴る安居かな 22_静岡 池ヶ谷章吾
ひしゃくの柄伝わり光る夏の水 23_愛知 青沼章二
破顔して焼酎下げて彼奴が来る 23_愛知 青沼章二
ひとつふたつ夾竹桃花コンクリの街 23_愛知 服部紀子
引き波に石の擦れ合ふ夏の浜 27_大阪 亀井保幸
鮎釣の父をとほくに見て帰る 27_大阪 古味瑳楓
夕焼の燃えうつるまで鳰浮巣 27_大阪 古味瑳楓
・うつらんと
ハンカチを広げてプリン・ア・ラ・モード 27_大阪 高角みつこ
・広げよ
大雨が旅の思ひ出青バナナ 27_大阪 高角みつこ
柿若葉小さき虫の歩く影 27_大阪 山中紅萼
地球てふ星は何処へ雨蛙 27_大阪 福田弘子
雨の日はあたしも無口蝸牛 27_大阪 福田弘子
塩梅はその日の気分瓜をもむ 27_大阪 澤田美那子
茄子漬となりて茄子紺きはまれり 27_大阪 澤田美那子
平行といふ涼しさの木賊かな 27_大阪 澤田美那子
・完結してしまうところが世界を狭くしている。
田の神の右足抜けぬ夕立かな 27_大阪 齊藤遼風
・田植かな?
妹の逝きしは幾つ遠花火 27_大阪 齊藤遼風
ハンモック揺れてそのまま青き空 28_兵庫 加藤百合子
・そのまま、ここは不適当。
新聞を追いかけてくる藪蚊かな 28_兵庫 千堂 富子
・追ひ
夏雲や八角灯に住し邪鬼 28_兵庫 千堂 富子
・に巣食ふ? し、ダメ。
髪洗ふ得体の知れぬいとほしさ 28_兵庫 藤岡美惠子
蜜豆に豆のなきよな恋せし日 28_兵庫 藤岡美惠子
・豆のなき蜜豆のよな恋もしき
沢の道蟹驚きてハサミ挙ぐ 28_兵庫 髙見正樹
港内に錨鎖巻く音明易し 28_兵庫 髙見正樹
針飛びのコルトレーンや黴の花 29_奈良 喜田りえこ
・針飛んで。勝手に言葉を作らない。
美し土美し水なり大蚯蚓 29_奈良 喜田りえこ
御手洗の晒布の真しろ奥明日香 29_奈良 田原春
家付きの母の一生あつぱつぱ 37_香川 丸亀葉七子
立ち去りてからも香水ただよへり 37_香川 丸亀葉七子
蛍やさびしくをれば近づき来 37_香川 曽根崇
末席に遅参の扇子そつと出し 38_愛媛 豊田喜久子
・置く?
老鶯の鳴く声涼し円覚寺 42_長崎 川辺酸模
・漠然としている。
虹柱近江の底より立ち昇る 43_熊本 筑紫秋蘭
校庭に蛍溢るる真闇夜 43_熊本 筑紫秋蘭
・真闇夜?
ががんぼや不器用なるがいとおしく 44_大分 山本桃潤
若竹の枝葉に天の重みかな 44_大分 竹中南行
・重みあり。天の重みとは?