ネット投句(2019年5月31日)選句と選評
・取り合わせの句、同じもの似たものを並べないこと。
・連想もアウト。連想は理屈です。
・連想を断ち切るのが俳句。
【特選】
ひやひやと水増してゆく代田かな 11_埼玉 おほずひろし
清拭の湯もたつぷりと菖蒲風呂 13_東京 市村さよみ
・中七で切れるように。お湯もたつぷり
蝸牛ひとつ奈落へころがれり 13_東京 長井亜紀
幼木に初めてひとつ柿の花 14_神奈川 山本孝予
白馬の雪の写れる植田かな 20_長野 金田伸一
泥と藁乾く力の燕の巣 26_京都 佐々木まき
酒熟す伏見の夏は夢の中 28_兵庫 加藤百合子
花ひとつかかげてけなげ胡瓜苗 37_香川 曽根崇
【入選】
マチ子逝く紅き牡丹の散るごとく 04_宮城 長谷川冬虹
ボラードの舫ひ結びや走り梅雨 05_秋田 佐藤一郎
まくなぎを払ひてみれば己が影 07_福島 渡辺遊太
向日葵や出かけるときはスニーカー 11_埼玉 上田雅子
頼もしき色となりたる青田かな 11_埼玉 園田靖彦
・ただごとに近い。
蝶々の風まかせ否抗いて 11_埼玉 長谷川明彦
・へる
花は葉に君に一日のこと聞きて 11_埼玉 牧内麻衣
・上五の季語、もっとソリッドなものを。
ソーダ水恋する僕の前に君 12_千葉 菊地原弘美
・場面、あいまい。
迷走や駄句また駄句の熱帯夜 12_千葉 菊地原弘美
万緑や電車は遅れ取り戻す 12_千葉 若土裕子
・万緑に
太陽のひかり一粒天道虫 12_千葉 森住昌弘
ばさばさと堤の羽音明易き 12_千葉 池田祥子
・堤にこだらるなかれ。鴉の。
五月雨や布団に残る女の香 13_東京 安藤文
睡蓮のひとつひとつの祈りかな 13_東京 岡 恵
・一つに集中を!
九十九折昇る行く手や橡の花 13_東京 外澤桐幹
夏痩せの母の大腿骨摩る 13_東京 荒木大和
赤城山青深々と更衣 13_東京 柴田清栄
薔薇垣やおはようと言ひ通る人 13_東京 神谷宣行
滝打つやわたしがわたし脱ぎ捨てん 13_東京 西川遊歩
・わたしは?
楊梅を握る幼児白髪に 13_東京 太田直子
・時間の経過、わかるように。
ばらばらのががんぼを組み立ててみよ 13_東京 緑天
薔薇の名はチャイコフスキー立夏かな 13_東京 齊藤拓
日の出へと小鳥囀る山の夏 14_神奈川 伊藤靖子
パリの空なおみに圭に風薫る 14_神奈川 越智淳子
霧閉ざすれんげつつじの朱のほのか 14_神奈川 越智淳子
桜貝葉山の渚婆ふたり 14_神奈川 遠藤初惠
祖父の家の跡形も無し花茨 14_神奈川 遠藤初惠
皮脱ぐが間に合わなくて今年竹 14_神奈川 遠藤初惠
・中七、緊密に。
渚なき海見下ろしてバルコニー 14_神奈川 金澤道子
・せり
脳細胞くづれはじめる暑さかな 14_神奈川 金澤道子
一本の木流れをり夏の川 14_神奈川 江藤鳥歩
・ゆく
汗みどろいつかは返すこの体 14_神奈川 三玉一郎
白玉や夢から覚めてゐる途中 14_神奈川 三玉一郎
果てしなき愚痴に合の手新茶かな 14_神奈川 松井恭子
目高の子へバーボングラスプレゼント 14_神奈川 森川ヨシ子
闊歩するパンツスーツや風薫る 14_神奈川 水篠けいこ
薪能月も奢りの夜ならん 14_神奈川 湯浅菊子
水無月へ最先端の先っちょの馬 20_長野 柚木紀子
縁側はあの世に近しあやめ草 21_岐阜 夏井通江
庖丁の手元明るき夏夕べ 21_岐阜 三好政子
・明るし
捨てがたき小さき新じゃが匙添へて 21_岐阜 三好政子
境内に読経流る蟻地獄 22_静岡 池ヶ谷章吾
白髪を互ひに笑ふ豆ご飯 23_愛知 稲垣雄二
点滴台押す子の背中夏に入る 23_愛知 青沼尾燈子
・ごちゃごちゃになった。
揺るぎなき天地くるりとつばくらめ 23_愛知 野口優子
滝あるを知るや風来る森の道 23_愛知 野口優子
忍冬の花断乳をぐづる稚 26_京都 氷室茉胡
書き留めねばすぐ句の消ゆる炎天下 26_京都 氷室茉胡
宇治茶園一坪買うて茶摘みかな 27_大阪 安藤久美
若葉こそ何やらけふの力なれ 27_大阪 古味瑳楓
まだ棒のごとく突っ立ち今年竹 27_大阪 高角みつこ
本持たぬ旅の始めや夏蜜柑 27_大阪 山中紅萼
・本置いて。できるだけ、肯定形で。
励ましてやつと駅まで夏の道 27_大阪 内山薫
宍道湖に一筋の道夏夕陽 27_大阪 福田弘子
・宍道湖へ、あるいは、宍道湖の
バラ園の薔薇は衰へ許されず 27_大阪 木下洋子
来週は父の日だなと父が言ひ 27_大阪 木下洋子
・ふ
うかうかと鰻は入る鰻筒 27_大阪 澤田美那子
・鰻の
柚子の花たれかれとなく香を移す 27_大阪 齊藤遼風
絵唐津に子つばめ遊ぶ父の忌よ 27_大阪 齊藤遼風
この星の呟いてゐる噴井かな 28_兵庫 加藤百合子
伽羅蕗の筋も苦味も気骨かな 28_兵庫 加藤百合子
更衣卓布も花も変えてみる 28_兵庫 千堂富子
・変へて
言ひ訳はうやむやにして新茶汲む 28_兵庫 藤岡美惠子
・して→きき
自転車に忘れられたる草苺 29_奈良 田原 春
存分にめで谷底の朴の花 37_香川 丸亀葉七子
・めづ
引越して朴の花咲く峡遠し 37_香川 丸亀葉七子
・叙述にならないように。
花匂ひ来る朴の木に足の急く 37_香川 丸亀葉七子
・朴の木へ
夕されば田水の匂ふ薄暑かな 37_香川 曽根崇
・常套。
かざし飲むワイングラスの新樹光 38_愛媛 豊田喜久子
咲く花も散り行く花よえごの花 42_長崎 川辺酸模
・散りゆく花も、こぼるる花も
麦秋やトーストぽんと焼きあがる 42_長崎 百田直代
鼻うがいするたび思ふプールかな 42_長崎 百田直代
・うがひ
まだ七十すでに七十五月闇 43_熊本 筑紫秋蘭
親子して百と八十夏の星 44_大分 山本桃潤
仙人のやうな山女に出会ふべく 44_大分 竹中南行
行く春や蝶も綿毛もてんでんに 50_フランス 中島さおり