ネット投句(2019年5月15日)選句と選評
・今回は入選句は多いのですが、特選は少数。
・作った句は必ず見直してください。
・そのさい、句の事情を何も知らない、しかし想像力(イマジネーション)のある第三者の視点で。
・この句から何か伝わるかどうか。
・作者の意図したことより、意図した以上のことが伝わるように。
・ボツになった句はなぜボツになったか考えてください。これをしないといつまでの「下手な鉄砲」です。
・どこかでみたような句は作らないこと。
【特選】
掬はるるとき蛍烏賊ふぶきけり 11_埼玉 森凜柚
身中に巣食ひし癌や明易し 13_東京 長井亜紀
・へる
水中眼鏡丸く吸付く顔ひとつ 13_東京 西川遊歩
卯波立つ主の去りし砂の城 14_神奈川 江藤鳥歩
・立つ、余計。大卯波
重力のかたちうつくしハンモック 14_神奈川 三玉一郎
一枚の葉の守り居る柿の花 14_神奈川 山本孝予
働いたこの手この足菖蒲風呂 14_神奈川 水篠けいこ
即席の大テーブルや五月来る 21_岐阜 三好政子
噴煙の高々とある端午かな 26_京都 氷室茉胡
釈迦の弟子みな痩せてをり堂涼し 26_京都 氷室茉胡
筍の香り満ちたるお食ひ初め 27_大阪 高角みつこ
恐るべき七人の孫柏餅 27_大阪 齊藤遼風
お遍路の会ふも別るも鈴一つ 37_香川 曽根崇
咲き初めしときより罌粟は風の中 38_愛媛 豊田喜久子
【入選】
雪渓や宿る悠久蝦夷の富士 01_北海道 高橋真樹子
阿寒湖の鼓動鎮めて水芭蕉 01_北海道 高橋真樹子
・めて、いいかげん。
真青の空しかと憲法記念の日 04_宮城 長谷川冬虹
子の発ちて夫婦二人の柏餅 04_宮城 長谷川冬虹
うぶすなはダムの底なり遠郭公 05_秋田 佐藤一郎
軽鴨の子や有るか無きかの羽根振つて 07_福島 渡辺遊太
ぐにやぐにやの命犇めく燕の巣 07_福島 渡辺遊太
何もせず見とれてをりぬ白牡丹 11_埼玉 おほずひろし
リハビリの窓いっぱいに樟若葉 11_埼玉 おほずひろし
学校へ裏の近道麦畑 11_埼玉 佐藤森恵
まぶしくて寂しき朝よ新茶汲む 11_埼玉 上田雅子
春惜しむ親より年上の友と 11_埼玉 森凜柚
石鹸に彫られし天使五月来る 11_埼玉 森凜柚
睡蓮やそつと降ろさん子の寝息 11_埼玉 牧内麻衣
江の島は大きな虹の輪の中に 12_千葉 若土裕子
万緑や笑つて泣いてあと十年 12_千葉 森住昌弘
白藤のこぼるる塚の静けさよ 12_千葉 池田祥子
藤猛し空を掴まんとかけ上がり 12_千葉 池田祥子
歳時記の風にめくれて昼寝かな 13_東京 安藤文
・歳時記は。この場合の「の」あいまい。
菖蒲笛囀となり笛となり 13_東京 岡 恵
・菖蒲の葉
復活祭火伏せの勇者ら慎ましき 13_東京 市村さよみ
・慎ましく
武蔵野の風薫りをる大欅 13_東京 柴田清栄
・薫らせる
燕来て軒の主を見舞ひけり 13_東京 松宮京生子
指太く泥をつかみて田植かな 13_東京 神谷宣行
白き腹緑を映す岩魚かな 13_東京 太田直子
白樺の花の先には浅間山 13_東京 太田直子
・向うは
迷ひいでて神田祭の渦のなか 13_東京 長井亜紀
夏来る汗拭ふ父懐かしき 13_東京 長尾貴代
新緑を母に見せんとバスに乗る 13_東京 長尾貴代
・と、不要。そこから考える。
空豆の莢の中なら眠れさう 13_東京 緑天
渋滞の十連休や夏来る 13_東京 櫻井滋
垂直にひまわりの苗夏はじめ 14_神奈川 伊藤靖子
・ひまはり
そら豆は真綿の中にうすみどり 14_神奈川 伊藤靖子
目のあたり牡鹿かよわげ袋角 14_神奈川 越智淳子
選びたる羊歯の前立初節句 14_神奈川 遠藤初惠
江の島を攫ひさうなる卯波かな 14_神奈川 金澤道子
・そうなる、でつまらなくなる。
夏木陰合わせて百寿母とハル 14_神奈川 江藤鳥歩
・ハルは犬か。
体より心が高くハンモック 14_神奈川 三玉一郎
万緑や八十歳の初歌集 14_神奈川 水篠けいこ
真直も曲り捻るも胡瓜の世 14_神奈川 湯浅菊子
・胡瓜かな
残り鴨パンをかすめてVターン 20_長野 金田伸一
日常つて何ライオン麒麟稲光り 20_長野 柚木 紀子
炎熱やフアンフアーレもてフアラオと 20_長野 柚木 紀子
玉葱に泣かされてゐる夕べかな 21_岐阜 夏井通江
スカートの裾わずらはし冷さうめん 21_岐阜 夏井通江
どこか似るいとこ同士や柏餅 21_岐阜 三好政子
走り梅雨ビニール傘に音の粒 22_静岡 池ケ谷章吾
風薫る勝ちて力士の髷豊か 22_静岡 池ケ谷章吾
悲しみをさつさと捨ててなめくぢら 23_愛知 稲垣雄二
季移るを惜しむ朝や浅利汁 23_愛知 青沼尾燈子
葉でけろつ花でけろつけろつ蛙かくれんぼ 23_愛知 野口優子
知らぬ間に歳はとるもの柏餅 26_京都 佐々木まき
数多き柿の花散る木の太し 27_大阪 山中紅萼 俳号変更
千年の釘千回の夏迎ふ 27_大阪 福田弘子
・場面がわからないのが問題。夏迎ふ、堂の夏か。
羅に厚手の脂肪如何にせん 27_大阪 福田弘子
鑑真の故郷の瓊花咲くころか 27_大阪 木下洋子
昼寝へと誘ふ風ある古畳 27_大阪 澤田美那子
・あり、吹く
一皿はバターの香る莢豌豆 27_大阪 澤田美那子
酢に締めて押して鯖鮨竹の皮 28_兵庫 加藤百合子
歳時記を棺にと記す竹の秋 28_兵庫 藤岡美惠子
・にと記す、要るのか。
緑さす馬上の射手や腰静か 29_奈良 田原春
工房に糊の匂へる薄暑かな 37_香川 曽根崇
表札はまだ父のまま蔦若葉 37_香川 曽根崇
木鋏の手応えに剪る夏蜜柑 38_愛媛 豊田喜久子
・手応へ
胡瓜もむ厨も風呂も電子音 38_愛媛 豊田喜久子
口論の妻と和らぐ新茶かな 42_長崎 川辺酸模
菖蒲湯や老ひすくすくと育ちをり 42_長崎 百田直代
野苺を摘んで少女になる野道 42_長崎 百田直代
行く方も愚鈍に候暮の春 43_熊本 筑紫秋蘭
帰省子の甲羅干したるかの巌 44_大分 山本桃潤
まくなぎや民主主義とは斯くありて 44_大分 山本桃潤
まほらばや蜜蜂の箱置く野原 44_大分 山本桃潤
安住の地はどこにでも花茨 44_大分 竹中南行
葉桜やリュックに重き花の本 44_大分 竹中南行
リハビリの母の摘みたるさくらんぼ 44_大分 竹中南行
・母が摘みたり