ネット投句(2019年4月15日)選句と選評
・作った句は必ず見直してください。
・そのときの視点は「ほかの人がわかるか」
【特選】
ふらここや漕ぎ出す君を待ってゐる 11_埼玉 上田雅子
・つ
仕事の日よりも疲れし花見かな 11_埼玉 森凜柚
三本もあれば十分花むしろ 12_千葉 森住昌弘
アネモネやルドンの花は夢うつつ 12_千葉 若土裕子
チューリップ底に宇宙の塵溜まる 13_東京 井上じろ
八十八夜明けてあまねく青山河 13_東京 神谷宣行
他愛なき一句とあそぶ虚子忌かな 20_長野 金田伸一
敵といひ友とたたへて入学す 20_長野 金田伸一
日や永し人が人産むなつかしく 20_長野 柚木 紀子
ピリオドだ種びたしだ大地は五月 20_長野 柚木 紀子
土覚めてにんにくの芽のぞくぞくと 37_香川 曽根崇
・土目覚め
囀のシャワーの中へ出勤す 42_長崎 川辺酸模
杖二本寄りて見あぐるさくらかな 44_大分 山本桃潤
【入選】
大いなる樹木希林の死山笑ふ 03_岩手 川村杳平
・大いなる、一考を。
われらまた縄文の裔蕨出づ 04_宮城 長谷川冬虹
・付きすぎ
類縁の絶えし故郷に酸葉摘む 05_秋田 佐藤一郎
・に、不要。
未知へ飛ぶたんぽぽの絮人もまた 07_福島 渡辺遊太
菜の花や転がり出でし婆ひとり 11_埼玉 おほずひろし
・菜の花を
父祖からの書付さらひ種浸す 11_埼玉 園田靖彦
花咲の爺さながら種を蒔く 11_埼玉 園田靖彦
・当たり前か
春の風メリーポピンズが乗りそうな 11_埼玉 佐藤森恵
・が、不要。「が」を入れるのは散文的配慮。
きな粉かけよ白蜜かけよ草の餅 11_埼玉 上田雅子
春の夜に開く切り花の切られ口 11_埼玉 牧内麻衣
うたうやうに春燈によむ詩集かな 12_千葉 菊地原弘美
花万朶一番欲しきもの自由 12_千葉 森住昌弘
疲れたよ二人で座る朝桜 12_千葉 森住昌弘
淋しさの水底照らす木の芽かな 12_千葉 池田祥子
思ひ出の数だけ花びら流れけり 13_東京 井上じろ
花摘みをやめて土筆を摘みにけり 13_東京 岡 恵
・にあいて?
牡丹餅が中華蕎麦より先に来し 13_東京 岡 恵
春惜しむインクのにじむ名刺かな 13_東京 外澤桐幹
ヴィルジリオ ヴェルレーヌ ヴィヨン 惜しむ春 13_東京 市村さよみ
体重のすとんと落ちて春寒し 13_東京 柴田清栄
病室のベランダ濡らし春の雨 13_東京 柴田清栄
・す
アリクイの腹式呼吸草青む 13_東京 松宮京生子
力すいと抜いて枝垂るる桜かな 13_東京 西川遊歩
燃へ尽きし天守閣跡つくし萌ゆ 13_東京 太田直子
・え
花びらは空駆けまはる小舟かな 13_東京 長井亜紀
・理屈
今は亡き叔父と摘みけり山桜梅 13_東京 長尾貴代
花冷えにデイサービスの母を待つ 13_東京 長尾貴代
はなびらを釣りあげてゐる桜鯛 13_東京 土井緑天
・てゐる、が問題。
鷲羽のやうな樹皮むけ大樹の春 13_東京 徳武信子
・白鷺の羽の樹皮、で十分。
雨風に打たれて過ぎぬ花の時 14_神奈川 伊藤靖子
大勢も足湯しづかや花曇り 14_神奈川 越智淳子
・も、無理。大勢位いるということですね。それをどういうか。
池半ば占めて動かぬ花筏 14_神奈川 越智淳子
・ず
大も小も上々の出来蟻地獄 14_神奈川 金澤道子
杉花粉気の煌めくや鼻うがい 14_神奈川 江藤巌二
・「気の煌めく」がわからない。うがひ
猫だとは気付いてゐない子猫かな 14_神奈川 三玉一郎
・猫とまだ。ただし、常套。
日時計の大まかな刻散る桜 14_神奈川 松井恭子
まつしろゐ今日の富士山春の雪 14_神奈川 森川ヨシ子
・な
リンゴ追分流す隅田の花の宴 14_神奈川 水篠けいこ
・隅田、不要。
三椏の天空支ふ鼎かな 14_神奈川 湯浅菊子
・大げさ。
すいかの芽むつくり立ちて春爛漫 21_岐阜 夏井通江
春うらら歯科医の椅子の恐ろしき 21_岐阜 夏井通江
・春うらら、再考。
鳩眠る春の画廊にフジタの眼 21_岐阜 三好政子
・藤田の絵、ですか。
春の野を掠め飛び去る雲の影 22_静岡 池ケ谷章吾
闘病の孫に差し入る桜餅 23_愛知 青沼尾燈子
・れ
人住まぬ原発の村すみれ咲く 23_愛知 青沼尾燈子
天上の青動かざり白木蓮 23_愛知 野口優子
著莪の咲く奈落に深き水の音 26_京都 佐々木まき
・奈落を急ぐ?
海が息してると言ふ子磯遊 26_京都 氷室茉胡
霾るや蔵王権現足上げて 27_大阪 安藤久美
流れ来て雲もあそぶや磯開き 27_大阪 安藤久美
平成や三十年の花の塵 27_大阪 古味瑳楓
花びらを払ふや何をはかなむや 27_大阪 古味瑳楓
・うて
しば犬のお尻の穴や春の風 27_大阪 内山薫
雨あがり幹くろぐろと夕桜 27_大阪 内山薫
・常套。
色動く曜変天目宵の春 27_大阪 福田弘子
・色ではダメ。
花吹雪今といふ無二の時 27_大阪 福田弘子
蔵王権現青き光を御開帳 27_大阪 澤田美那子
二日居て二日の桜吉野かな 27_大阪 澤田美那子
空に舞ふ一本釣の桜鯛 27_大阪 澤田美那子
・鯛って、一本釣りしますか。
天つ神国つ神打つすみれかな 27_大阪 齊藤遼風
・打つ、とは? 撃つ?
朧朧と時代は移る落花かな 28_兵庫 加藤百合子
・イメージ結ばず。
宇宙てふおおきなしやぼん玉の中 28_兵庫 加藤百合子
・常套。
花冷えや言葉交はさず通り過ぐ 28_兵庫 千堂富子
介護日誌のみの文机春深し 28_兵庫 藤岡美惠子
花いかだ一片はなれ流れ行く 28_兵庫 藤岡美惠子
枕辺の桜一枝母百四 28_兵庫 藤岡美惠子
雪隠の春日を受ける障子かな 29_奈良 喜田りえこ
・春日の障子、あるいは春障子。俳句は水割りしないこと。
遅春の雨に烟るや吉野山 29_奈良 喜田りえこ
心経に桴の鼓動や花万朶 29_奈良 田原春
・心経に、どういうことか。
見のがして薄墨桜早も葉に 37_香川 丸亀葉七子
こんぴら弁慶真っ赤な椿山照らす 37_香川 丸亀葉七子
・つ
子も孫も離れて遠し柏餅 37_香川 曽根崇
若き日の夢のかけらや桜貝 42_長崎 川辺酸模
春光や書肆に積まるる万葉集 42_長崎 百田直代
夜桜や兵叔父人を殺めしと 43_熊本 筑紫秋蘭
春愁も忘れて久しアラ古希か 43_熊本 筑紫秋蘭
百号に赤い椿の花と葉を 44_大分 山本桃潤
勝手より隣の庭の花見かな 50_外国 中島さおり