ネット投句 選句と選評(2019年2月28日)
①ブランコの母と子の話がすれ違うとか、理屈にならないように。
②不要の言葉を入れない。必要な言葉だけで作る。
【特選】
キーン逝く詞花ちりばむる涅槃西風 05_秋田 佐藤一郎
@ちりばめて
燃え残る言葉を捜す末黒かな 07_福島 渡辺遊太
春蘭の金の莟の力満つ 13_東京 西川遊歩
傘寿にてさずかりし孫の名は椿 14_神奈川 伊藤靖子
雪解けの水の色なり錦鯉 14_神奈川 松井恭子
即興の一生だった紅薔薇 20_長野 柚木 紀子
地球儀のカタカナ読めて孫の春 21_岐阜 三好政子
永き日のむなしく帰るうなぎ筒 27_大阪 澤田美那子
@永き日や
たび終えて心しばらくかげろふよ 38_愛媛 岡崎陽市
@終へて
梅咲いてそらよりひろい庭となれ 38_愛媛 岡崎陽市
鍋焼きや老いてかくかく役立たず 44_大分 山本桃潤
【入選】
春泥の混沌の身に野ばと鳴く 01_北海道 芳賀匙子
淡雪や短かき長き八年よ 04_宮城 長谷川冬虹
わたつみに召されしみたま春の雪 04_宮城 長谷川冬虹
遺されし子らの吐息か忘れ雪 04_宮城 長谷川冬虹
佐保姫の手漉きの薄き氷かな 07_福島 渡辺遊太
渡り漁夫海に底など無えといふ 07_福島 渡辺遊太
生きてゐればいつか死ぬる日雛あられ 11_埼玉 上田雅子
主の形なくなれどまだ踏まさるる 11_埼玉 森凜柚
@言葉ととのわず
氷水に青く目覚むる春の蕗 11_埼玉 牧内麻衣
@目覚めて青し
言の葉の花咲満ちる弥生山 12_千葉 菊地原弘美
@ちて
天麩羅や白魚の目玉ちりぢりに 12_千葉 若土裕子
愛されたことなどないよ落椿 12_千葉 森住昌弘
下総は田起し早し梅の花 12_千葉 池田祥子
取り出さる雛は春の光かな 12_千葉 池田祥子
@出だす
涅槃図や泪こまごま描き分けて 13_東京 西川遊歩
長命寺道明寺とて桜餅 13_東京 西川遊歩
ひとことで大炎上や春愁ふ 13_東京 安藤文彦
春風やふふふで終つている手紙 13_東京 岡 恵
春霞一夜で城を築きけり 13_東京 外澤桐幹
花筏破壊しながら屋形船 13_東京 荒木大和
沈黙の春来たりけり原発忌 13_東京 神谷宣行
@「沈黙の春」そのままは問題。
捨てし世をゆきつもどりつ西行忌 13_東京 神谷宣行
@3句とも理屈。
二月尽雨の渋谷駅交差点 13_東京 長井亜紀
@二月尽がダメ。たまたまそうだったというだけでは。
白魚に透きとほる影ありにけり 14_神奈川 金澤道子
たんぽぽや天文部女子募集中 14_神奈川 高橋佳代
逝く姉の部屋へ春風入れる朝 14_神奈川 森川ヨシ子
春の田をゆつくり過ぎる骸かな 14_神奈川 森川ヨシ子
考える人の背に降る春の雪 14_神奈川 水篠けいこ
うららかや婆の爪切る爺の指 14_神奈川 水篠けいこ
皿あらう水やわらかし春灯 14_神奈川 湯浅菊子
@あらふ、やはらかし。春灯、たまたま春の宵だったでは。
春寒やどうだんの芽の伸びそこね 20_長野 金田伸一
春はあけぼの生者とも死者ともなりて 20_長野 柚木 紀子
春草の押し花句帳にのびのびと 22_静岡 池ケ谷章吾
@不要の言葉を安易に入れない。ここでは「草」。必要なものだけでリズムを整える。
墓場駆け廻りて猫の恋成就 26_京都 氷室茉胡
@成就、不要。
帰還者の建てし供養碑冴返る 26_京都 氷室茉胡
浮世絵の赤富士黒富士春動く 26_京都 氷室茉胡
山姥のこころづくしや蕗のたう 27_大阪 古味瑳楓
我ときに妖怪となる春の闇 27_大阪 内山薫
梅園の固き蕾や退職す 27_大阪 福田弘子
豆打つやおのが心の奥深く 28_兵庫 加藤百合子
アルバムの妻に吉報宵の月 28_兵庫 高宮修
音のなきト音記号のわらびかな 28_兵庫 千堂富子
この蓑虫桜の枝を好みけり 28_兵庫 藤岡美惠子
雪吊りのほどかれて松欠伸せん 28_兵庫 藤岡美惠子
これやこの老いの嗜み菊根分け 29_奈良 喜田りえこ
きさらぎの光啄ばむ雀かな 37_香川 曽根崇
河豚よ哭け哭きたいときは声あげて 37_香川 曽根崇
@くどい
つばき餅この世の春が手のひらに 38_愛媛 岡崎陽市
吊るし雛伊豆より伊予のわが家へと 38_愛媛 豊田喜久子
厨ごと何とはなしに水温む 38_愛媛 豊田喜久子
@何となはなしに、不要。
春耕の光へ降りる鷺一羽 42_長崎 川辺酸模
@耕が不要。
山彦の息吹や杉の花盛り 42_長崎 百田直代
下萌や皿にふわあつとオムライス 42_長崎 百田直代
@下萌、再考。