ネット投句 2018年11月30日 選句と選評
【特選】
かんながら鰰の海狂瀾す 05_秋田 佐藤一郎
砕けては風となりゆく枯野かな 07_福島 渡辺遊太
黒土の甘さうなこと葱深む 08_茨城 斉藤慎哉
短日や犬ふり返りふり返り 08_茨城 斉藤慎哉
@短日を
ふるさとにゐてふるさとの遠き冬 14_神奈川 三玉一郎
@ふるさとは遠し冬
そしてまた一月が来る水の音 14_神奈川 三玉一郎
遠く去る記憶のごとき冬干潟 23_愛知 稲垣雄二
@ごとし
この年のいたき心を返り花 27_大阪 古味瑳楓
百年の生如何にせん蒲団干す 27_大阪 福田弘子
恋文の反故ののたうつ焚火かな 37_香川 丸亀葉七子
熊のごと脂肪増やすも冬支度 44_大分 山本桃潤
@増やさん
心とはいつも一人よ大枯野 44_大分 山本桃潤
【入選】
波音は人魚の唄や星月夜 04_宮城 長谷川冬虹
@唄か
葬送の車列過ぎ行く小春かな 05_秋田 佐藤一郎
かの花の乗り捨てし舟朴落葉 07_福島 渡辺遊太
くれなゐの落葉のうえでひと眠り 11_埼玉 おほずひろし
熱燗や闘志なき者去れと君 11_埼玉 園田靖彦
我がひと間訪ねて来たる小春かな 11_埼玉 上田雅子
@わが部屋を
塩竃のしほで炊きたるだいこかな 12_千葉 菊地原弘美
娘はパイに母は煮ものの冬至かな 12_千葉 若土裕子
@に、不要。これを入れる心が散文的。
鮫にして切り身は淡き花の色 12_千葉 若土裕子
@にして、なんてどうにかしなさい。
霜解の野の草さらに青々と 12_千葉 森住昌弘
@霜とけて草はふたたび
母の夜長亡父のそこにゐるらしき 12_千葉 水町ゆの
宇宙への思ひを語るなまこかな 12_千葉 池田祥子
何もかも平気な顔のなまこかな 12_千葉 池田祥子
カーテンの隙間より冬来りけり 13_東京 安藤文彦
冬に入るいつかこの世にさよならを 13_東京 稲垣京子
@さやうなら、を、不要。
長き長き自然薯の箱捨てられず 13_東京 岡 恵
@捨てられず、捨てる場所がないのか、捨てたくないのか、不明。
真似できぬほど首傾ぐ白梟 13_東京 荒木大和
@白梟、からはじめる。
体調の良き日悪き日冬隣り 13_東京 柴田清栄
積りても箒に軽し落葉掃く 13_東京 柴田清栄
木の葉散るこの景いつの幻か 14_神奈川 越智淳子
焚かれけり天寿全うせし牡丹 14_神奈川 金澤道子
ゆたんぽの湯気立つまでの思案ごと 14_神奈川 高橋佳代
@かな
白鳥の厚き胸筋羽ばたけり 14_神奈川 松井恭子
餅ひとつ海苔につつんで昼餉とす 14_神奈川 水篠けいこ
しろうまに雪がきてゐる柿日和 20_長野 金田伸一
初氷はアダムのむねの骨のエバ 20_長野 柚木紀子
冬空の航跡夢の忘れ物 21_岐阜 三好政子
@冬空を
残生や丸々太る冬の蠅 23_愛知 稲垣雄二
寒暁や膝に気合ひを入れて起つ 23_愛知 青沼尾燈子
私を巡る枯野や終わらぬ詩 23_愛知 服部紀子
@旧仮名、終はらぬ
冬空に裸一貫大公孫樹 26_京都 佐々木まき
広大な枯野や奈良に都あり 27_大阪 福田弘子
@ありき
湯ざめして魂ぬけてしまひけり 27_大阪 木下洋子
砂にまみれ腹裂かれをり寄り鯨 27_大阪 澤田美那子
@裂かれたるクジラかな
生臭きこの世を生きて寒卵 27_大阪 齊藤遼風
@生き難き。生臭き、は付きすぎであることを知らなくては。
和三盆の色美しく冬に入る 28_兵庫 加藤百合子
@白美しく
日の差して命なりけり冬の虫 28_兵庫 加藤百合子
綿虫のふわりと消へてしまひけり 28_兵庫 重定克則
@ふはりと
蕎麦雑炊術後の日々を重ねゆく 37_香川 丸亀葉七子
@つつ
悴みて新聞紙に躓けり 37_香川 丸亀葉七子
@きぬ
臥す母に毛布掛け足す夜更けかな 37_香川 曽根崇
果てのなき空とむきあふ小春かな 38_愛媛 岡崎陽市
胸のなかあかるんでくる炬燵かな 38_愛媛 岡崎陽市
眦でわれにもの言ふマスクかな 42_長崎 川辺酸模
着ぶくれて厠通ひの煩さよ 42_長崎 川辺酸模