ネット投句(2018年11月15日)選句と選評
【特選】
いつまでも咲いてつつじの返り花 13_東京 松宮京生子
深炒りの珈琲豆と冬ごもり 14_神奈川 金澤道子
短日ありく月日の鼠にかじられつ 20_長野 柚木紀子
尺八は枯野の音を鳴らしけり 21_岐阜 夏井通江
@出しにけり?
はうとして銀杏黄葉の並木かな 28_兵庫 加藤百合子
その薄き皮にどこまで熟るる柿 28_兵庫 藤岡美惠子
鵙鳴くや百万石の加賀の空 33_岡山 嘉 齋
ほんたうはしづかな地球虫のこゑ 38_愛媛 岡崎陽市
千歳飴ひきずり戻る神の庭 38_愛媛 豊田喜久子
【入選】
侘びながら掃く掃かれる落葉かな 01_北海道 芳賀匙子
一葉づつ柏黄葉の虚心かな 01_北海道 芳賀匙子
太初の海赤道直下背泳ぎす 04_宮城 長谷川冬虹
珊瑚の浜海鼠の横で大昼寝 04_宮城 長谷川冬虹
わが一世梨の一顆に及ばざる 07_福島 渡辺遊太
小春日やイグアナのやうに亀泳ぐ 08_茨城 斉藤慎哉
鯨吼ゆシリウスの光浴びせよと 08_茨城 斉藤慎哉
初雪の耳を擽りゐしが止む 10_群馬 白石明男
満ちて咲く半倒木の枇杷の花 10_群馬 白石明男
百人の句会たけなは秋たけなは 11_埼玉 上田雅子
竜の玉髭にかくれてをりにけり 11_埼玉 上田雅子
冬麗の海を覗かん望遠鏡 12_千葉 菊地原弘美
小春日や生きとし生けるものたちに 12_千葉 若土裕子
またしても人の名忘る冬薔薇 12_千葉 池田祥子
小春日や墓を洗ひて花植ゑて 12_千葉 池田祥子
マイルスのジャズしみじみと夜長かな 13_東京 安藤文彦
しみじみと思ふことあり落葉掃く 13_東京 稲垣京子
棒切れを投げて榧の実落としけり 13_東京 岡 恵
脱力や湯舟に近き帰り花 13_東京 外澤桐幹
芬々と松茸飯の炊き上がる 13_東京 柴田清栄
同胞の癌の見舞ひに熊手買ひ 13_東京 松宮京生子
車椅子の祖母つきそひて七五三 13_東京 松宮京生子
消灯のがん病棟の夜長かな 13_東京 西川遊歩
風邪籠り彼の世の人がおとなへり 13_東京 太田直子
敷石につまづく日暮れ石蕗の花 13_東京 太田直子
かわらけを飛ばして京の秋惜しむ 13_東京 櫻井滋
初霜や無人の街のドラム缶 13_東京 櫻井滋
くるくるとくるくると剥く渋柿を 14_神奈川 伊藤靖子
カツカツと高きヒールや銀杏散る 14_神奈川 金澤道子
しげしげと眺めひよんの実捨てにけり 14_神奈川 金澤道子
冬銀河あの珈琲をもう一度 14_神奈川 三玉一郎
きりたんぽこんなに作り二人きり 14_神奈川 三玉一郎
悪い事考へてゐる蒲団かな 14_神奈川 三玉一郎
冬の夜の飛び出す絵本開くとき 14_神奈川 山本孝予
寄鍋やいとこきょうだい皆老ひて 14_神奈川 山本孝予
渋滞のフロントガラスに降る落葉 14_神奈川 水篠けいこ
お歳暮のカタログどさり冬に入る 14_神奈川 水篠けいこ
大根を抜いて地上に休ませる 14_神奈川 湯浅菊子
飛んで来しどうだん紅葉昼の夢 20_長野 金田伸一
海に雪山に雪従兄弟ら従姉妹ら 20_長野 柚木紀子
はつゆきてふ自在な場自在な時 20_長野 柚木紀子
冬支度楠の挽屑香の強し 21_岐阜 三好政子
立ち話雪虫しほに別れけり 21_岐阜 三好政子
鉄橋も校舎も一つ枯野かな 22_静岡 池ケ谷章吾
花束のごとく大根持ち帰る 23_愛知 稲垣雄二
今朝冬や玉子を一つきしめんに 23_愛知 青沼尾燈子
人間になりたくはない海鼠かな 23_愛知 青沼尾燈子
残りたる白菊のほかみな枯るる 26_京都 佐々木まき
母の味継ぎし妹茸飯 26_京都 氷室茉胡
小春日となりたる妻の誕生日 26_京都 氷室茉胡
子規庵の糸瓜あをあを冬に入る 27_大阪 木下洋子
東京も意外に旧し三の酉 27_大阪 澤田美那子
冬ざれや須恵器ごろりと現るる 27_大阪 澤田美那子
只事と妻のひとこと冬に入る 27_大阪 齊藤遼風
良き師ありよき弟子のあり波郷の忌 27_大阪 齊藤遼風
二上山は母の乳房か小六月 27_大阪 齊藤遼風
深秋や今宵言葉の海の中 28_兵庫 加藤百合子
没の句に師の教へありかいつぶり 28_兵庫 加藤百合子
のぼりくる朝の日射しや照紅葉 28_兵庫 重定克則
光吸ひ光となりぬ柿すだれ 28_兵庫 藤岡美惠子
サックスの高き音色や銀杏散る 29_奈良 真知子眞知
日々富士を神と仰ぎて干菜風呂 33_岡山 嘉 齋
石垣の高さ古さよ鵙日和 33_岡山 嘉 齋
手術台冷たシリアの牢もまた 37_香川 丸亀葉七子
誰の目にも触れぬ天辺松手入 37_香川 丸亀葉七子
菊の香や喪服をたたむ長き黙 37_香川 曽根崇
坪庭を出入りこまめに秋の蝶 37_香川 曽根崇
身のうちの火を守りつつ冬に入る 38_愛媛 岡崎陽市
一生がゆらめいてゐるたき火かな 38_愛媛 岡崎陽市
潜るたび濡れては光るかいつむり 38_愛媛 豊田喜久子
冬薔薇剪るを一瞬ためらひぬ 38_愛媛 豊田喜久子
あたたかやきみの隣のおでん酒 42_長崎 川辺酸模
師の姿遥かに見ゆる霜の道 44_大分 山本桃潤