祇園会ズーム句会(2020年7月17日)
長谷川櫂 選
第一句座
【特選】
思ひ出の箱の中から芦刈山 美那子
もう一年我が家を守れ古粽 雄二
大夕焼まぼろしの鉾立ちそろふ 久美
鬼どもの涼んでゐるや京の闇 久美
射干の花一輪を祭りかな 悦子
とびきりの大輪なりき牡丹鱧 洋子
べつぴんの鱧の花咲く椀の中 光枝
今か今かと鉾待ちし夏なつかしき 沙羅
素戔嗚尊や令和二年の大昼寝 りえこ
長刀鉾長刀ゆらし大路来よ 沙羅
鉾のなき鉾の祭りも都ぶり 忠雄
【入選】
蔵開けて今日より鉾のお風入れ 忠雄
疫を切る長刀鉾の太刀いづこ 真知子
休み鉾今こそ力蓄へん 久美
鉾倉をあけよ今年の風入れん 嘉子
素戔嗚の昼寝覚まさんよういやさ 久美
水打つて鉾町の闇鎮めたり 雄二
須佐之男も宵寝するらん蚊遣香 美那子
コンチキチン鳴らぬ京都の暑さかな 真知子
見送りの翅涼しけれ蟷螂山 淳
力溜めよ今年こぞりて休み鉾 雄二
天空に月を預けて鉾休む 美那子
蟷螂山蟷螂どこへ飛びゆきし 真知子
山鉾の渡らぬ夏の短かけれ 忠雄
まぼろしの長刀鉾来る大路かな 洋子
汀さんの祇園歳時記雲の峰 光枝
昼間から鱧の落しでこんちきちん 美那子
疫鬼去れここは鉾道神の道 嘉子
この年はひとりで歩む鉾の道 光枝
コロナ禍の今こそ祇園祭かな 洋子
鉾は来ず手持ち無沙汰の大路かな 真知子
応仁の乱にあらねど休み鉾 光枝
この年は心の中を鉾進む 雄二
鉾無くて今宵の月のさまよへる 悦子
第二句座
【特選】
川床で飲む名も鴨川や冷し酒 りえこ
鴨川を啜るここちや心太 忠雄
御霊会や京は静かに夏の底 美那子
沈黙す稚児あふぐべき大団扇 沙羅
祭鱧食べずに一つ年取るか 雄二
鉾たてぬといふといへども祭かな 沙羅
目つむれば鉾誇らかに山涼し 美那子
鉾幻山幻の大路かな 美智子
鉾蔵に眠れるままや木と縄と 茉胡
賀茂の水打つ一杓に鬼は散る 久美
包丁の一閃ありて花の鱧 忠雄
夕風に吊られしままの浴衣かな 真知子
【入選】
月鉾の月の埃は払はれず 雄二
かりそめの祭提灯灯も侘し まき
空耳や去年の鉾の賑はひも まき
荒梅雨の底とよもせやコンチキチン 嘉子
羽休め無聊をかこつ蟷螂山 美智子
荒梅雨やあばれ観音閉じこめて 悦子
夢に聞く祇園囃子や籠枕 忠雄
来る年の祇園囃子を聞きに来よ 真知子
風流の鉦や太鼓やよーいやさ りえこ
鉾建てや金沢にゐて東山 淳