第一句座
•藤英樹選
【特選】
迸る富士の伏流大岡忌 わたなべかよ
橋掛り春の闇より掛りたる わたなべかよ
海女沈む地割れの続く海底へ 関根千方
春の水きらきらと詩をこぼしけり イーブン美奈子
海原に目を瞠りけり鯥五郎 わたなべかよ
戦争を背負つて死にゆく桜かな イーブン美奈子
【入選】
富士裾野芽吹きゆたかや大岡忌 仲田寛子
菫咲く会いたくなればすぐ傍に 関根千方
富士ひろく伸びて大岡信の忌 仲田寛子
花は葉にわれは正気にもどりけり 葛西美津子
少女らの頬に春風たはむれて 魚返みりん
いつの間に後期高齢葱坊主 仲田寛子
大岡忌かの日の芭蕉七部集 藤原智子
•長谷川櫂選
【特選】
教へ子に遊歩ありけり大岡忌 藤英樹
瞑想の金のまなぶた蟇 葛西美津子
蛇口から水がうたふや大岡忌 神谷宣行
花曇大岡信の忌なりけり きだりえこ
【入選】
咲きさうな花を吸はんと雀かな 木下洋子
大岡忌かの日の芭蕉七部集 藤原智子
大岡忌太平洋の波の音 藤原智子
第二句座 (席題:のどけし、囀り)
•藤英樹選
【特選】
桜花壇空に浮かびて長閑かなり 長谷川櫂
面売りの長閑な顔を並べたる 長谷川櫂
青年よ起きよ覚めよとさへずれり 園田靖彦
囀を西行と聴くや奥千本 神谷宣行
のどけしや町にあふるる人の顔 藤原智子
のどけしや言葉はどこへ老夫婦 園田靖彦
【入選】
囀やひときは高き声加へ イーブン美奈子
夢殿の夢より出でて囀れり 萬燈ゆき
天女ひるがえる水煙さへづれり 金澤道子
遺品整理終へ空つぽののどけしや 神谷宣行
外来の声もまじりて囀れる 関根千方
囀の木より一羽の飛び立ちぬ わたなべかよ
囀りは雲にむかつてひろがりつ 吉田順子
•長谷川櫂選
【特選】
囀やひときは高き声加へ イーブン美奈子
耕運機一人で動くのどけしや 澤田美那子
四人部屋のどけき枕一つづつ 葛西美津子
【入選】
抜きんでて声の澄みたるさへずりよ 園田靖彦
囀りの故郷を出でて五十年 萬燈ゆき
のどけしや桜まつりのあとの土手 藤原智子
せせらぎは水の囀り長閑かな 関根千方
のどけしや岸に蛸壺並べ干す 木下洋子
囀に混じりて青き鳥一羽 葛西美津子
囀りをたがひにかはす二羽の鳥 吉田順子
葉桜にもたれる箒のどけしや 仲田寛子