【特選】
冬木の芽だけが知つてる明日かな 14_神奈川 三玉一郎
餅花や喧嘩ばかりの三姉妹 14_神奈川 水篠けいこ
担がれて死人が踊る初芝居 14_神奈川 那珂侑子
お隣は若い家族や薺打つ 14_神奈川 那珂侑子
元日の平凡をこそ愛しけり 14_神奈川 片山ひろし
東京に寒といふ字の響きけり 14_神奈川 片山ひろし
大雪原誰も踏まぬ道真っ直ぐに 15_新潟 高橋慧
・誰も→まだ
搾り出す玉の一句を寒の水 15_新潟 安藤文
白昼の無音恐ろし雪激し 21_岐阜 三好政子
・大豪雪
これよりの月日おそろし初暦 21_岐阜 梅田恵美子
闇に鳴り凍てし鈴の音初参り 26_京都 前田重明
・闇に凍てたり神の鈴。原句ごちゃごちゃ。
雪兎一匹ほどの今朝の雪 27_大阪 澤田美那子
花びら餅うれしきことはひそやかに 27_大阪 澤田美那子
花びら餅子のひげづらもほころびぬ 28_兵庫 藤岡美惠子
牛のごとゆるやかに年新たなリ 28_兵庫 加藤百合子
臘梅の香ののぼりゆく御空あり 29_奈良 喜田りえこ
古志金沢ズーム句会(2021年1月17日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
石膏の歯形を削る寒夜かな 酒井きよみ
白山の峰の白さや蕪酢 梅田恵美子
大蕪さつくと白き水を切る 山本桃潤
早番の凍つる足音遠ざかる 酒井きよみ
子らがどんと突く天地や初稽古 佐々木まき
二三人隠れてゐたる炬燵かな 田村史生
美しき鬼を抱きて山眠る 玉置陽子
一月や眠れぬ山の獣思ふ 中野徹
アネモネのまだ眠たげな莟かな 長谷川櫂
羽二重と名付けし加賀の凍豆腐 花井淳
【入選】
ひとつゐて語りかけたき寒雀 趙栄順
独楽のごと跳ねて少年独楽を打つ 趙栄順
スコーンに狼の口春隣 玉置陽子
花びら餅ほのかに春の透けてをり 稲垣雄二
雪掻くや蒼き閃光ほとばしる 宮田勝
父と子の凧は一つや空高く 佐々木まき
暁光の突き抜けて来る氷柱かな 清水薫
影あをみ大拙の庭雪深し 密田妖子
大雪を搔くや地の色草の色 花井淳
金閣の金の鳳凰雪に舞ふ 氷室茉胡
外に出よと檄の届きぬ雪つぶて 宮田勝
悴まず着ぶくれもせず詩心あれ 田村史生
白山の森に千年寒の水 清水薫
良き運と信じ始めし七日かな 中野徹
寒蜆夜のしじまのひとり言 梅田恵美子
一献や新郎にして年男 安藤久美
りんりんと蕾は空へ寒紅梅 梅田恵美子
滝凍る白き炎をあげながら 趙栄順
おでん屋の湯気に十色の香りかな 清水薫
つがひ鴨かはるがはるに目を覚ます 近藤沙羅
打ち寄せてこの国洗へ波の花 松川まさみ
はくれんの天人五衰はじまりぬ 長谷川櫂
・長谷川櫂選
【特選】
白山の白く輝く御慶かな 山本桃潤
箔を打つ音しづかなり雪へ雪 篠原隆子
打ち寄せてこの国洗へ波の花 松川まさみ
拾得の夢のなかより初箒 篠原隆子
雪を着て闇より浮かぶ柳かな 密田妖子
【入選】
石膏の歯形を削る寒夜かな 酒井きよみ
草やめだか一匹孵りたる 篠原隆子
花びら餅ほのかに春の透けてをり 稲垣雄二
寒稽古湯のもうもうと沸きゐたり 篠原隆子
大蕪さつくと白し水を切る 山本桃潤
少しづつ福持ち寄らん初句会 田村史生
白山の森に万年寒の水 清水薫
一献や新郎にして年男 安藤久美
大皿ははや春の景蟹を食ふ 稲垣雄二
りんりんと蕾を空へ寒紅梅 梅田恵美子
寒雷や能登ゆすぶり加賀あおだかす 花井淳
滝凍る白き炎をあげながら 趙栄順
老人と猫の居場所や日向ぼこ 佐々木まき
第二句座(席題=手袋、冬芽)
・鬼川こまち選
【特選】
手袋を外して妻の手の固さ 山本桃潤
今日ぐんと力つけたる冬芽かな 松川まさみ
手袋や手持無沙汰の年は過ぎ 中野徹
今日は富士近くに見ゆる冬樹の芽 間宮伸子
濤音は太鼓のごとし冬木の芽 篠原隆子
【入選】
青空の風の中なる冬芽かな 長谷川櫂
棄てられぬ皮の手袋作業用 密田妖子
潮満ちて潟かがやける冬芽かな 篠原隆子
冬木の芽山は毎日柔らかに 山本桃潤
朝の日のまだ届かざる冬木の芽 安藤久美
あかあかと薔薇の冬芽の幼気な 佐々木まき
揺れながら光は空へ冬木の芽 趙栄順
信濃いま山の力の冬芽かな 長谷川櫂
手袋を脱ぎむづかしき話かな 松川まさみ
一本の一直線の冬木の芽 趙栄順
・長谷川櫂選
【特選】
潮引いて潟かがやける冬芽かな 篠原隆子
黄昏のバス待つ赤き手袋よ 高橋慧
最果の夕陽こまやか冬木の芽 鬼川こまち
【入選】
手袋を外し妻の手やはらかき 山本桃潤
この道をまどはず行けと冬木の芽 清水薫
今日ぐんと力つけたる冬芽かな 松川まさみ
冬木の芽ほころびてきし花瓶かな 梅田恵美子
冬木の芽全山を埋め尽くしをり 稲垣雄二
日の光雫とこぼす冬芽かな 佐々木まき
あかあかと薔薇の冬芽の幼気な 佐々木まき
揺れながら光となりぬ冬木の芽 趙栄順
手袋を脱ぎむづかしき話かな 松川まさみ
古志鎌倉ズーム句会(2021年1月10日)
第一句座
•藤英樹選
【特選】
ねこ舌の三代揃ふ粥柱 升谷正博
ぽっぺんぺこぽん地球の悲鳴かな 升谷正博
死のやうなしづけさもまたお正月 森永尚子
生え揃ふ真白き乳歯初笑 曽根 崇
この朝を湯気ゆたかなれ大福茶 森永尚子
嫁となり母となりゆく正月よ 田中益美
輪郭の外無限なる福笑ひ 西村麒麟
【入選】
カトレアの花となりつつ莟かな 長谷川櫂
年々に骨がちとなる河豚汁 川村玲子
にらみ鯛尾鷲の潮にのりて来よ 喜田りえこ
底冷の底の底なる靴の音 葛西美津子
歌留多とる姫の黒髪滑らせて わたなべかよ
寒紅の濃いくれなゐがマスクへと 仲田寛子
氷柱打つ朝日まばゆき門口に 長井はるみ
あたらしき雪を冠りて初比叡 木下洋子
•長谷川櫂選
【特選】
閻王の炎のかほへ除夜詣 関根千方
二つ目も大きな餅や雑煮椀 西村麒麟
青空のゆるびはじめや凧 藤原智子
【入選】
ねこ舌の三代揃ふ粥柱 升谷正博
声立てて妻と二人や初笑ひ 西村麒麟
七草籠大和島根の山河かな 澤田美那子
にらみ鯛尾鷲の潮にのりて来よ 喜田りえこ
大粒や葉もあをあをの冬苺 葛西美津子
餅番の手持ちぶさたや二つきり 長井はるみ
この朝を湯気ゆたかなれ大福茶 森永尚子
老いたればいのち算用なづな粥 園田靖彦
底冷の底の底くる靴の音 葛西美津子
桜湯の花に占ふ今年かな 葛西美津子
鷽替へてぎよろ目の鷽が手の中に イーブン美奈子
第二句座(席題=冬将軍、餅花)
•藤英樹選
【特選】
冬将軍ひとなき街をまっしぐら おほずひろし
餅花や母待つ家に帰りたし 喜田りえこ
あるたけのもちばな飾れ疫払い 仲田寛子
鎌倉はひつそりとして冬将軍 田中益美
【入選】
わいわいと来て吊るしゆく餅の花 葛西美津子
揺れてゐるだけでゆたかやもち花は 澤田美那子
餅花や闇にうち寄す波の音 川村玲子
餅花や戯れ猫の伸び上がり 西川遊歩
いつしかにどかと陣張り冬将軍 金澤道子
餅の花鯛や小槌が囃しけり 葛西美津子
餅花や頬赤らめて母の酔ふ 升谷正博
•長谷川櫂選
【特選】
揺れてゐるだけでゆたかやもち花は 澤田美那子
餅花をわけてなつかし人の顔 川村玲子
餅花の揺るるを旅の思ひ出に 西村麒麟
餅花や闇うち返す波の音 川村玲子
餅花を覗きに来たる狐かな 藤英樹
餅花の揺れて双子の生まれけり わたなべかよ
【入選】
紅白の案配もよし餅の花 長井はるみ
餅花やひとあし先に待つ座敷 長井はるみ
わいわいと来て吊るしけり餅の花 葛西美津子
いざ給へ冬将軍の懐へ イーブン美奈子
古びたる農の暦よ餅の花 藤原智子
餅花や音におどろく大時計 森永尚子
冬帝の有無を言はさぬ空の青 吉田順子
冬帝の清しきまでの冷たさよ 関根千方
冬将軍大股で来てわが頭上 園田靖彦
鄙ぶりや餅花だけの一間なる 森永尚子
餅花や錦市場に寄つて行こ 木下洋子
くら闇に餅花揺るるめでたさよ 曽根崇
神棚に餅花一枝揺れゐたり 喜田りえこ
猛り狂ふ波をつらねて冬将軍 升谷正博
あるたけのもちばな飾れ疫払ひ 仲田寛子
竈の火いつも真つ赤ぞ冬将軍 仲田寛子
餅の花鯛や小槌や囃しけり 葛西美津子
餅花や頬赤らめて母の酔ふ 升谷正博
餅花の揺るる小部屋に宵寝かな おほずひろし
鎌倉はひつそりとして餅の花 田中益美
古志広島ズーム句会(2021年1月3日)
第一句座
・矢野京子選
【特選】
初暦かしこみかしこみ表紙取る 石塚純子
開戦日桜錨に憧れき 米山瑠衣
初鏡去年の顔は忘れけり ストーン睦美
歳晩や夫よ花道参ろうぞ ももたなおよ
瀬戸内のみかんのやうな初日かな 大場梅子
【入選】
獅子舞ふや獅子の白息太々と 飛岡光枝
犬のことばかりや友の年賀状 ストーン睦美
赤牛をそこここ阿蘇の初景色 神戸秀子
声宿る雪にしたがひ雪下ろし 高橋真樹子
千年を生きたる歌と春を待つ 斉藤真知子
金沢の雪一塊や蕪鮓 長谷川櫂
夢殿を夢より覚ます煤払ひ 菅谷和子
ラグビーのスクラム動くしじまかな 飛岡光枝
羽子板の姫打ち出さん初鼓 大平佳余子
恨み言絡めて大根おろし餅 ストーン睦美
どこまでが本気嘘ん気雪合戦 高橋真樹子
初句会みんなで富士へ登る意気 岡村美紗子
初山河牛の歩みを一歩より 城山邦紀
・長谷川櫂選
【特選】
寒紅を秘めていづこの浜の貝 神戸秀子
雑煮椀鯊の尾頭はみ出しぬ 原京子
よく笑ふ花びら餅の娘たち 大場梅子
氷瀑の中を一滴したたれり 城山邦紀
読み人のひと声に舞ふ歌留多かな 斉藤真知子
初鏡去年の顔は忘れけり ストーン睦美
にこにこと初日出で来よ大八州 石塚純子
オーロラにオリオンみゆる大旦 上松美智子
ペンギンの嘴につららや水の星 米山瑠衣
夢殿を夢より覚ます煤払ひ 菅谷和子
初硯かぐはしき墨なめらかに 菅谷和子
佐保姫はまどろみゐたり花びら餅 神戸秀子
やや濃ゆし磐長姫の花びら餅 神戸秀子
荒海の鰤をひと切れ雑煮椀 斉藤真知子
【入選】
獅子舞ふや獅子の白息太々と 飛岡光枝
終りなき始まりのうた初句会 矢野京子
しづかなる時を編みこみ毛糸編む 夏井通江
犬のことばかりや友の年賀状 ストーン睦美
初暦かしこみかしこみ表紙取る 石塚純子
開戦日桜錨に憧れき 米山瑠衣
寒卵富士の裾野の放し飼ひ 飛岡光枝
手をとほす春着の袖に母の紋 矢野京子
赤牛をそこここ阿蘇の初景色 神戸秀子
新暦贔屓力士に貼り替へて 原京子
一本の新巻鮭のたのもしく 飛岡光枝
昼酒に道を逸れたり絵双六 矢野京子
広島のドームこころに初句会 神戸秀子
おほいなる宝船あり空をゆく 長井亜紀
年玉を渡す子の丈仰ぎつつ ストーン睦美
人と会ふ約束もなし初鏡 斉藤真知子
ラグビーのスクラム動くしじまかな 飛岡光枝
家居してこれぞ正しきお正月 矢野京子
はるばると夫と十年雑煮かな 長井亜紀
寝正月時は金とやこれ如何 ももたなおよ
ウオーキングコースに社初詣 石塚純子
新しき顔つくりけり初鏡 上松美智子
末つ子はいつも腹ぺこ開戦日 米山瑠衣
夫の声大きく元気根深汁 夏井通江
餅ふくる引きも切らずに感染者 ストーン睦美
蓬莱の島にいちりん梅ひらく 大場梅子
初山河牛の歩みを一歩より 城山邦紀
第二句座(席題:月冴ゆる、どんど焼き)
・矢野京子選
【特選】
どんど焼き焼くには惜しき君の文 菅谷和子
どんど焼き二十日の月を焦がしけり 長谷川櫂
とんど焼き平凡な日の美しくあれ 夏井通江
【入選】
どんど果て山の獣や声近く 高橋真樹子
暗き波打寄する彼方月冴ゆる 伊藤靖子
磯どんど海幸彦は煤だらけ ももたなおよ
左義長や身に焚き込めん火の命 米山瑠衣
大どんど万のマスクを投げ入れよ 神戸秀子
男来てまづ尻炙るどんど焼き 石塚純子
武蔵野のはずれこがすやどんど焼き 大平佳余子
・長谷川櫂選
【特選】
左義長や大磯の浜とどろかす 大場梅子
積み上げてわが一生のどんど燃ゆ 城山邦紀
頬染めて眠る子どもやどんど焼 長井亜紀
【入選】
どんど焼きこの一年を穢すまじ 石塚純子
どんど焼き焼くには惜しき君の文 菅谷和子
どんど焼き蜜柑も餅もこんがりと 上松美智子
とんど焼く火群は天へ駆け上る 矢野京子
どんど焼願かけ札は塵と舞ひ 米山瑠衣
胸の子のまなこ痛がるどんどかな 神戸秀子
月冴ゆるダム湖の底に村ありき 米山瑠衣
犬小屋に身じろぎの音月冴ゆる 石塚純子
降る雪にあがる火の粉やどんど焼き 菅谷和子
磯どんど海幸彦は煤だらけ ももたなおよ
左義長や身に焚き込めん火の命 米山瑠衣
少しずつ忘るる母とどんど焼き 高橋真樹子
丈高く積みしむかしよどんど焼き 林弘美
神おはすどんどの櫓青々と 長井亜紀
天辺で達磨の笑ふどんど焼き 大平佳余子
眉凛々し少年たちのどんどかな 大場梅子
武蔵野のはずれこがすやどんど焼き 大平佳余子
ネット投句、年間賞Ⅳは山本桃潤さん
【年間賞】
思想こそ国の柱よ竜の玉 大分 山本桃潤
【次点】
書初の大書は墨の枯るるまで 神奈川 片山ひろし
はや誰か参りし後のけさの春 兵庫 千堂富子
【候補】
水面の黙より氷り始めけり 神奈川 三玉一郎
木枯らしや揺れる屋台で酌み交はす 神奈川 土屋春樹
ちやんちやんこふはりとはおり水仕事 岐阜 夏井通江
大年やそろりそろりと参ろうぞ 香川 元屋奈那子
人の目に腸さらす寒さかな 長崎 川辺酸模
初茜大屋根小屋根わかちあふ 奈良 喜田りえこ
ネット投句(2020年12月31日)選句と選評
・新年明けましておめでとうござます。
【特選】
微動だにせぬ閑かさや大嚔 07_福島 渡辺遊太
だんだんに遺言めきて日記果つ 11_埼玉 園田靖彦
数ページむしりとりたる古日記 11_埼玉 園田靖彦
ぬめぬめと滑る昆布を結びけり 11_埼玉 上田雅子
宇宙ごみ闇に漂ふ寒さかな 12_千葉 池田祥子
・闇を
ぎこちなく六尺離れて年の礼 13_東京 横山直典
・離れ
東京が頭を垂れる除夜の鐘 13_東京 岡田定
怪物のひととせやつと歩み去る 13_東京 西川遊歩
・一年
冬の水しづかに冬を映しけり 14_神奈川 三玉一郎
書初の大書は墨の枯るるまで 14_神奈川 片山ひろし
人の息大地の息や寒造 17_石川 花井淳
しわしわの命も命初笑ひ 23_愛知 稲垣雄二
すつぽんと大根抜くごと年新た 23_愛知 稲垣雄二
蓮枯れて名残の骨の幾許ぞ 26_京都 佐々木まき
授かりし男女の双子竜の玉 26_京都 氷室茉胡
鏡餅単純にして静かなる 27_大阪 澤田美那子
静けさに神宿るらん鏡餅 27_大阪 澤田美那子
はや誰か参りし後のけさの春 28_兵庫 千堂富子
初茜大屋根小屋根わかちあふ 29_奈良 喜田りえこ
碧落や潜んでをるは冬将軍 37_香川 丸亀葉七子
・碧落に
人類の大転換や注連飾る 44_大分 土谷眞理子
・人類は大転換へ。動きを。
【入選】
故郷の旧町名に正月来 01_北海道 高橋真樹子
・へ
ががいもの種髪に見惚れ十二月 01_北海道 芳賀匙子
やどりぎのぼんぼりほのか初御空 01_北海道 芳賀匙子
・ほのか、ダメ。
自意識だ?犬にでもやれ枯野行く 01_北海道 柳一斉
宴果てて港に降れる雪を見に 01_北海道 柳一斉
雪折や任にあらざる新総理 04_宮城 長谷川冬虹
煤逃げて山幸句集三読す 04_宮城 長谷川冬虹
・句集山幸
繭玉やくるくる回る女の子 05_秋田 佐藤一郎
・繭玉と?
初雪や面影橋を僧ひとり 05_秋田 佐藤一郎
・ひとりゆく。坊さんでなくてよろし。
冬菫雪の中より目覚めけり 11_埼玉 上田雅子
華やぎも無きまま屠蘇を祝ひけり 11_埼玉 上田雅子
冬川に水輪ときおり何棲むや 11_埼玉 藤倉桂
・ときをり。自分でなされたし。
コロナ禍や大根炊き上ぐ飴色に 11_埼玉 藤倉桂
・飴の色
聞きなれし声に振り向く除夜詣 12_千葉 若土裕子
初夢の仄とうれしき名残かな 12_千葉 若土裕子
疫年のとどのつまりや除夜の鐘 12_千葉 谷口正人
片づきしことなき今年除夜の鐘 12_千葉 谷口正人
・こと何もなし
軽トラに青竹匂ふ年用意 12_千葉 池田祥子
北に向かふ蝶の危ふし冬の海 12_千葉 麻生十三
耳遠き犬とながむる冬の虹 13_東京 岡田栄美
雪の町かすかに夕日ありにけり 13_東京 岡惠
葛湯吹く花の匂ひと言はれしが 13_東京 岡惠
庭先に年酒冷やす亭主かな 13_東京 市村さよみ
・年酒を。庭先に、あいまい。庭に出し?
味薄き今年のごまめまなこ澄む 13_東京 市村さよみ
今日よりは今年よりはと年の暮れ 13_東京 森徳典
新植のブナの木眠る山眠る 13_東京 森徳典
ここらみなわが庭柚子の風呂に入る 13_東京 神谷宣行
年行くや羽ばたきさうな金閣寺 13_東京 西川遊歩
クリスマステネシーワルツ独りうたう 13_東京 長尾貴代
・ふ
伊勢海老を網から外す手際かな 13_東京 楠原正光
ビル街にスケート場の灯りかな 13_東京 楠原正光
・ビル街の、灯りけり
日記買ふまず命日と誕生日 13_東京 堀越としの
遺しゆく日々いとほしや除夜の鐘 13_東京 堀越としの
リハビリに花を咲かせんお屠蘇くむ 13_東京 櫻井滋
老い二人命百まで屠蘇祝ふ 13_東京 櫻井滋
ブラインド一枚ずつ拭く年の暮れ 14_神奈川 伊藤靖子
・づつ。自分で。
青森の雪の町より来し林檎 14_神奈川 伊藤靖子
年の湯や母しづかにて子もしづか 14_神奈川 越智淳子
冬夕焼早め早めの厨ごと 14_神奈川 遠藤初惠
処方薬まず受けとりに年用意 14_神奈川 遠藤初惠
・まづ。自分で。
ユーミンの歌にさくさく年用意 14_神奈川 原田みる
枯草を抜けば豊けき大地の香 14_神奈川 原田みる
・豊かな。ふつうに。
舟一隻茫々として冬に入る 14_神奈川 三浦イシ子
・たるや
まづ緊急外来番号年用意 14_神奈川 松井恭子
天地のすみに菜園注連飾る 14_神奈川 松井恭子
付句にて繋りし年惜みけり 14_神奈川 松井恭子
綿虫や誰か来そうで誰も来ず 14_神奈川 水篠けいこ
ゴム草履冷たき朝の厠かな 14_神奈川 水篠けいこ
胸ひろげ帰帆のごとく白鳥来 14_神奈川 中丸佳音
白光に白菜ゆだね静かなり 14_神奈川 湯浅菊子
鴛鴦のどれが夫婦か花鳥園 14_神奈川 那珂侑子
破魔矢受く誰を射るではなけれども 14_神奈川 片山ひろし
初富士を夫婦で仰ぐ露天風呂 14_神奈川 片山ひろし
朝霜や魚板一打にて動く 17_石川 花井淳
一束として大根の白きかな 17_石川 岩本展乎
・にして
人の死を山と数へし年越へん 17_石川 松川まさみ
尾白鷲人間界の病み覗く 19_山梨 小泉雅恵
・病深く
梟のブックエンドにわが句集 20_長野 金田伸一
・梟や
荘厳にオルガン抜ける寒気かな 20_長野 大島一馬
・荘厳の、とほる
順に山やま眠るつもり「生得の位」 20_長野 柚木紀子
やすらかな心となりぬ毛糸編み 21_岐阜 夏井通江
・む
冬雲の遊ぶらし照り翳る部屋 21_岐阜 三好政子
・照り翳る部屋冬雲の遊ぶらし
後ろざまに身を投げて打つ除夜の鐘 21_岐阜 三好政子
・後ろへと
野に畑に人いなくなる初景色 22_静岡 池ヶ谷章吾
・誰もをらざる
初席の撥ねてこの店鴨蒸籠 23_愛知 臼杵政治
扉開け去年と今年を入れ替へる 23_愛知 服部紀子
薪足して言葉少なく冬籠り 23_愛知 野口優子
搗き立てのあんころ餅や小晦日 23_愛知 野口優子
冬木立山の子細のあらはなる 26_京都 佐々木まき
年惜しむ母と面会出来ぬまま 26_京都 氷室茉胡
かたくなに開かぬ抽斗年の暮 27_大阪 安藤久美
柚子風呂や借りものの身を労はらん 27_大阪 安藤久美
蓬莱へ船乗り継がむ年の暮れ 27_大阪 古味瑳楓
冬日向残してゆづるベンチかな 27_大阪 高角みつこ
初雪のはやも闇夜を横降りに 27_大阪 高角みつこ
心細しと文が届きぬクリスマス 27_大阪 内山薫
・手紙届きぬ
新しき年の力や豆の餅 27_大阪 木下洋子
・常套
無頼にはなれぬ父居る炬燵かな 27_大阪 齊藤遼風
雪積むややさしきものの形して 28_兵庫 加藤百合子
ゆく年やコロナの傷の満身に 28_兵庫 天野ミチ
・を
初夢や覚むればテレビ鳴っており 28_兵庫 髙見正樹
・つ。自分で。
暁闇の厨の灯し大晦日 29_奈良 喜田りえこ
・灯る
鰹節揃へ安心年の暮 29_奈良 田原春
招きくるる息子家族やクリスマス 29_奈良 田原春
疫よ去れこの寒梅を盾とせん 33_岡山 齋藤嘉子
・疫病へ梅一輪を
もう少し生きてゐたしや福寿草 37_香川 曽根崇
天狗岳の風来て柿の熟るるなり 38_愛媛 古志溢子
雪見酒夫唯今別世界 42_長崎 ももたなおよ
煤逃げと大きテレビに入りゆく 42_長崎 ももたなおよ
ひやひやと刺さる視線や大嚔 42_長崎 川辺酸模
煤逃げの男ら集ふコンペかな 42_長崎 川辺酸模
与願印の御手重からん煤払 44_大分 竹中南行
初めてや夫と二人の年越よ 44_大分 土谷眞理子
・は
古志仙台ズーム句会(2020年12月27日)
第一句座
・長谷川冬虹選
【特選】
行く先を決めかねてゐる冬の蜂 佐伯律子
冬の水吸ふて黒々寒蜆 佐伯律子
赤べこの頷いてゐる年始 那珂侑子
何もせぬことが今年の年用意 辻奈央子
煤逃げて今年納めの句会かな 平尾 福
小春日の鳩になりたる子供かな 武藤主明
【入選】
枯蓮や金釘流の恋の文 服部尚子
大海を泳ぎきつたる真鱈かな 佐伯律子
雪の夜やおもちやの兵隊動き出す 及川由美子
凍蝶や重たき翅をたたみけり 谷村和華子
払ひたる煤も今年を闘へり 辻奈央子
赤ん坊笑へば我も初笑 長谷川櫂
煮含めて吾八十の年用意 鈴木伊豆山
仕事終へ夜が聖夜に切り替はる 森 凛柚
コンビニで買ひしケーキも聖菓かな 森 凛柚
・長谷川櫂選
【特選】
ゆつくりと戻すぜんまい年の暮 阿部けいこ
返信もこれまた酔筆年の暮 伊藤 寛
木も花もひたと沈黙初氷 石川桃瑪
青空の地球にぽつと冬菫 川辺酸模
枯蓮や泥のぬくきに眠りけり 上 俊一
残生に花よあれかし初御空 川辺酸模
老い二人命まぶしむ柚子湯かな 川辺酸模
【入選】
雪催ひ笠を目深に石狐 武藤主明
赤き実を封じ込めたる氷柱かな 長谷川冬虹
松葉蟹前後左右に歩きけり 平尾 福
松島の潮たたふる牡蠣啜る 平尾 福
マスク取り入れ歯外して雪見酒 川村杳平
新しき日課となりぬマスク洗ふ 那珂侑子
凩や振り向きながら去りし猫 金谷 哲
からつ風原発帰還ほど遠く 甲田雅子
餅に海苔醤油のかをる嗚呼日本 石原夏生
赤べこの頷いてゐる年始 那珂侑子
凍み豆腐月の光に吊るしけり 甲田雅子
蝦夷の鮭美男なるぞと贈り来つ 甲田雅子
何もせぬことが今年の年用意 辻奈央子
凍蝶や重たき翅をたたみけり 谷村和華子
塩引を跨ぐこの猫罰あたり 服部尚子
燃料よし保存食よし冬籠り 及川由美子
煮含めて吾八十の年用意 鈴木伊豆山
豊麗線かくれてうれしマスクかな 那珂侑子
第二句座(席題:年忘れ 薺 木菟)
・長谷川冬虹選
【特選】
木菟の子のすでに知恵ある眼かな 森 凛柚
掘り上げて雪の底より薺かな 武藤主明
厨より祖父の声して薺打つ 石川桃瑪
唱へ言無言で唱へ薺打つ 佐藤和子
七草のなづなを笑ふ鈴菜かな 平尾 福
【入選】
せりなづなまた一年を初めけり 長谷川櫂
メモ書きの句作の山や年忘れ 阿部けいこ
孫たちに打つてみせたる薺かな 伊藤 寛
ほうほうと闇に呼ばはる木菟よ 上 俊一
ひつそりと世を捨てしごと年忘れ 辻奈央子
白川郷屋根に賜る薺かな 鈴木伊豆山
木星と土星出会ひぬ年忘れ 上 俊一
それぞれの笑顔を思ふ年忘れ 谷村和華子
・長谷川櫂選
【特選】
孫たちに打つてみせたる薺かな 伊藤 寛
みちのくの水で肥えたる薺かな 辻奈央子
七草のなづなを笑ふ鈴菜かな 平尾 福
きよらかな粥にきらめく薺かな 及川由美子
【入選】
みみづくの鳴くたび闇は深まりぬ 辻奈央子
木菟や眠りはぐれし床のなか 川辺酸模
木兎やほらふき男猟師とは 上村幸三
メモ書きの句作の山や年忘れ 阿部けいこ
木菟の子のすでに知恵ある眼かな 森 凛柚
忘れたきことは忘れず年忘れ 上村幸三
次の世はぺんぺん草か酒呷る 川村杳平
掘り上げて雪の底より薺かな 武藤主明
少年の秘密の森や木菟鳴く 及川由美子
年忘れ傘寿の夫へ大吟醸 佐藤和子
みみづくの首をのばして世に鳴けり 甲田雅子
言いわけのまま酔いつぶれ年忘れ 上村幸三
厨より祖父の声して薺打つ 石川桃瑪
ズーム句会南北縦断年忘れ 長谷川冬虹
ひつそりと世を捨てしごと年忘れ 辻奈央子
何もかも白紙にしたし年忘れ 那珂侑子
恒例の父の説法年忘れ 佐伯律子
年忘れするを忘れてゐたりけり 平尾 福
独酌に年忘れする悪太郎 青沼尾燈子
木菟やまばたくことを忘れけり 谷村和華子
唱へ言無言で唱へ薺打つ 佐藤和子
使者として闇の国より木菟来たり 石川桃瑪
白川郷屋根に賜る薺かな 鈴木伊豆山
木星と土星出会ひぬ年忘れ 上 俊一
囃されて薺打ちたる年男 長谷川冬虹
古志金沢ズーム句会(2020年12月20日)
第一句座
・鬼川こまち選
【特選】
時雨雲切れて天狼なほ遠く 密田妖子
鰤捌くヒラリヒラリと刃を返し 酒井きよみ
鰤千尾韋駄天となり氷見が浦 篠原隆子
さすらひの神の仮寝か牡蠣の殻 長谷川櫂
白山は大白鳥よかがやけり 安藤久美
【入選】
曾祖父の机に聞くや冬怒涛 山本桃潤
兎当番敷藁替ふる年用意 酒井きよみ
着ぶくれて心の隙間ふさぎけり 中野徹
歳晩のかまぼこ工場湯気まみれ 酒井きよみ
切干の干からびて知る値打かな 中野徹
白山の眠りの奥に湧く水よ 長谷川櫂
走りたゐビニール袋の落葉かな 山本桃潤
触れてみん熊の爪あと残る? 梅田恵美子
煮凝りや働きづめの母の味 佐々木まき
恋の鶴雪のすがたに消えゆけり 篠原隆子
白山の寝息たちまち氷けり 齋藤嘉子
一羽二羽群れて白鳥灯りかな 趙栄順
冬満月ざんぶと心洗はれて 玉置陽子
東洋のまなざし深きマスクかな 長谷川櫂
飾売り実はひとつだにこぼすまじ 安藤久美
・長谷川櫂選
【特選】
綿虫の消えては増ゆるしじまかな 玉置陽子
白山は大白鳥よかがやけり 安藤久美
孵したる百のめだかと冬籠 鬼川こまち
【入選】
歳晩のかまぼこ工場湯気まみれ 酒井きよみ
離るとき静かなちから木の葉ちる 篠原隆子
点と降り線と降る雪いちめんに 宮田勝
朝市の声はなやかや能登時雨 趙栄順
鰤捌くヒラリヒラリと刃を返し 酒井きよみ
箔を打つ音の聞こゆる霜夜かな 稲垣雄二
煮凝りや働きづめの母の味 佐々木まき
山眠る積もる木の葉を香らせて 梅田恵美子
のどぐろののどくろぐろや返り花 稲垣雄二
まどろみて雪の声聞く蒲団かな 梅田恵美子
枯蓮や龍のねむれる天龍寺 安藤久美
なまなまと光るぬかるみ雪催 松川まさみ
せりせりと雪水踏んで聖歌隊 鬼川こまち
飾売り実はひとつだにこぼさじと 安藤久美
酔仙の詩句読み下す襖かな 宮田勝
雪の田に一羽降り立つ鴉かな 高橋慧
かの峠越えて塩鰤買はれゆく 酒井きよみ
第二句座(席題=懐手、虎落笛)
・鬼川こまち選
【特選】
懐手解きてはるかをめざしけり 齋藤嘉子
懐手ときてたちまち尉と婆 玉置陽子
懐手解きたつぷりと筆に墨 齋藤嘉子
良き思案あるかのごとく懐手 玉置陽子
淡海よりやって来たるか虎落笛 近藤沙羅
【入選】
生きてゐることは滑稽ふところ手 趙栄順
懐手心の傷を抱きつつ 花井淳
懐手解くべし沖に鰤の涛 篠原隆子
懐手して憂ふか昭和の棄てしもの 篠原隆子
黒竹の闇より黒し虎落笛 玉置陽子
もの言わぬことも大事や懐手 中野徹
虎落笛憶良の歌を吹き出でる 稲垣雄二
懐手をんなだんまり決めこみぬ 松川まさみ
・長谷川櫂選
【特選】
今詩の生まれんとする懐手 稲垣雄二
もの言わぬことも大事や懐手 中野徹
懐手解きたつぷりと筆に墨 齋藤嘉子
【入選】
懐手解くべし沖に鰤の涛 篠原隆子
コロナ禍をひととせおそれ虎落笛 宮田勝
虎落笛能登先端に乾物屋 花井淳
妻の手にいつしか触れず懐手 趙栄順
乾びたる誰が矢立や虎落笛 密田妖子
良き思案あるかのごとく懐手 玉置陽子
搗きあがるまでまわりみな懐手 鬼川こまち
ネット投句(2020年12月15日)特選と選評
高齢化時代の俳句の鉄則
1)孫に溺るるなかれ
2)老いを嘆くなかれ
3)思ひ出に浸るなかれ
【特選】
すきま風縦横無尽の家に住む 13_東京 長尾貴代
疫病や真っ赤に染まる冬の暁 13_東京 畠山奈於
・つ
風倒の櫻を見舞ふ冬木中 14_神奈川 中丸佳音
殺戮の果のしづけさ鷹一つ 14_神奈川 三玉一郎
木枯らしや揺れる屋台で酌み交はす 14_神奈川 土屋春樹
ちやんちやんこふはりとはおり水仕事 21_岐阜 夏井通江
スウェターよりまだ出でこぬか母の首 27_大阪 内山薫
大年やそろりそろりと参ろうぞ 37_香川 元屋奈那子
人の目に腸さらす寒さかな 42_長崎 川辺酸模
熱燗や今日の身を置く高瀬舟 44_大分 竹中南行
ネット投句(2020年11年30日)特選と選評
・もう一度基礎固めを。
【特選】
手付かずの一日おそろし古日記 11_埼玉 園田靖彦
古伊万里の和蘭陀はるか返り花 12_千葉 池田祥子
二人死にひとり誕生神の留守 13_東京 西川遊歩
わらつとの納豆売りや雪の朝 14_神奈川 伊藤靖子
極月や関所の如き検温器 14_神奈川 原田みる
・ごとく。この違いは?
水面の黙より氷り始めけり 14_神奈川 三玉一郎
カンカンと炭新しき炉端かな 28_兵庫 加藤百合子
時雨忌やこれより道を分つ君 29_奈良 喜田りえこ
思想こそ国の柱よ竜の玉 44_大分 山本桃潤
じやぶじやぶと発句を洗へ寒の水 44_大分 山本桃潤
歌仙とは詩の旅なり冬銀河 44_大分 土谷眞理子